
[使用機材]Fujifilm X100V,SonyRx02,SonyRX100M6
七月初旬、一年二カ月ぶりに大好きな沖縄を訪れた。いつもは宮古島方面を訪れるのだが(当欄第27回、28回ご参照)、今回は別の離島へ向かった。
その目的は、某舎(某社ではない、舎である)の新作(シーズン2)の取材。そして多忙だった半年間の疲れを癒すためだ。
当欄では、私が足繁く通うお店の名前を基本的に伏せている。インターネット上に情報が溢れる中、拙文中のヒントを素通りした上に、〈検索〉すらしない向きが多いからだ(嫌味なおじさんでゴメンね)。
今回は、島そのものを伏せ字扱いとさせていただく。理由は、大量の観光客を受け入れるインフラがほとんどないから。また、那覇から車とフェリーを乗り継いで約三時間もかかるため、短い日程で沖縄を旅行するには不便極まりないためだ。

閑話休題。
今回は一四年ぶり二度目の訪問。前回は小学生だった倅に沖縄の夏を体験させるべく訪れた。そして再訪した直後の感想は、〈全く変わっていない〉。
珊瑚の石垣が連なる家並み、ガジュマルの生い茂る村道、圧倒的に優しい島民。なにより、ビーチが破壊されていなかった。二〇年以上前から沖縄に通っているが、この島には私が愛した〈沖縄の原風景〉が色濃く残っていた。



現在、沖縄の多くの離島では白い壁のホテル、カフェ、マリンアクティビティが揃ったリゾートが乱立している。しかしこの島に〈小洒落た商業施設〉は皆無だ。青い海と白いビーチ、インスタ映えするスイーツ、カラフルなドリンクを求める人には絶対に向かない(クサしているわけではありません)。
宿泊施設は基本的に民宿のみで(一部のビーチでキャンプ可能)、食堂や居酒屋、スナックも他に比べ極端に少ない。車で二〇分もあれば島を一周できる本当に小さな島で、コンビニもない(島民向けの購買所や萬屋はあるよ)。






すっかり前置きが長くなった。
ここからは短い旅の記録だ(たったの三泊)。新作に向けた取材で最強の援軍となったのは、長年付き合いのある東京在住の飲食店社長。島の出身者であり、道中なにかあれば連絡を、という心強い言葉をいただいた。
そして、社長に島の居酒屋を教えてもらった。初日に店を訪れたところ、隣席のネーネーたちと意気投合。さらにニーニーも加わり、酒盛りがスタートした。最近の行政事情や祭事の話題に及び、島出身者の動向を聞くなど、来訪者にとってはたまらない宴席となった。ご一緒したネーネーの一人が先の社長と小中の同級生とわかると、宴はさらに盛り上がった。


ああ、やっぱり地元の方々と酒を飲むのは楽しいなあ(他の島でも必ずやる)、などと思っていると、二軒目へという話に。島にはタクシーが存在しないため、シラフの知り合いに依頼して数キロ離れたビーチ沿いのスナックへ移動した。宴の最後はカチャーシー(沖縄の踊りね)となった(これが本当に楽しい)。
なぜこんなに旅の者に優しいのか尋ねると、ニーニーが即答した。
〈イチャリバチョーデーだからよぉ〉
ウチナーグチを直訳すると、こうなる。
〈縁があって一度会ったなら、それは兄弟同然だ〉……泥酔寸前だった私は泣きそうになった。そう、これだから旅はやめられないのだ。
宴のほかにも、民宿でご一緒したご婦人の話も印象的だった。現在那覇在住のネーネーは、島の出身。年に数回来島し、先祖の墓をいくつも回り、供養していると明かしてくれた。離島独特の風習をつぶさに聞いた。島の購買所では、オバアとしばしユンタク(世間話)。全て新作の糧になったのは言うまでもない。

どうしても島の名を教えてという方々には、拙著『ガラパゴス』(小学館文庫、NHKエンタープライズ=DVD)をお買い上げいただきたい(本編中に離島の名前が登場する=燃える商魂)。

勝手に!裏ゲーテ 街場の旨いメシとBar

食い意地と物欲は右に出るものがいない作家・相場英雄が教える、とっておきの街場メシ&気取らないのに光るBar。高いカネを出さずとも世の中に旨いものはある!
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