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勝手に!裏ゲーテ 街場の旨いメシとBar

2023.08.18 公開 ツイート

#41

原風景とイチャリバチョーデーに感涙〈沖縄編その1〉 相場英雄

[使用機材]Fujifilm X100V,SonyRx02,SonyRX100M6

七月初旬、一年二カ月ぶりに大好きな沖縄を訪れた。いつもは宮古島方面を訪れるのだが(当欄第27回28回ご参照)、今回は別の離島へ向かった。

その目的は、某舎(某社ではない、舎である)の新作(シーズン2)の取材。そして多忙だった半年間の疲れを癒すためだ。

当欄では、私が足繁く通うお店の名前を基本的に伏せている。インターネット上に情報が溢れる中、拙文中のヒントを素通りした上に、〈検索〉すらしない向きが多いからだ(嫌味なおじさんでゴメンね)。

今回は、島そのものを伏せ字扱いとさせていただく。理由は、大量の観光客を受け入れるインフラがほとんどないから。また、那覇から車とフェリーを乗り継いで約三時間もかかるため、短い日程で沖縄を旅行するには不便極まりないためだ。

 
島に向かうフェリーのデッキにて。島のオトウはいつだってクールなのだ。

閑話休題。

今回は一四年ぶり二度目の訪問。前回は小学生だった倅に沖縄の夏を体験させるべく訪れた。そして再訪した直後の感想は、〈全く変わっていない〉。

珊瑚の石垣が連なる家並み、ガジュマルの生い茂る村道、圧倒的に優しい島民。なにより、ビーチが破壊されていなかった。二〇年以上前から沖縄に通っているが、この島には私が愛した〈沖縄の原風景〉が色濃く残っていた。

港近くのビーチに到着。沖縄入り直後のお約束ショット。​​​
島に滞在中、毎日通ったビーチ。完全貸し切り、つまりプライベートビーチ。
通い続けたビーチ。透明度が半端ない。

現在、沖縄の多くの離島では白い壁のホテル、カフェ、マリンアクティビティが揃ったリゾートが乱立している。しかしこの島に〈小洒落た商業施設〉は皆無だ。青い海と白いビーチ、インスタ映えするスイーツ、カラフルなドリンクを求める人には絶対に向かない(クサしているわけではありません)。

宿泊施設は基本的に民宿のみで(一部のビーチでキャンプ可能)、食堂や居酒屋、スナックも他に比べ極端に少ない。車で二〇分もあれば島を一周できる本当に小さな島で、コンビニもない(島民向けの購買所や萬屋はあるよ)。

民宿近くを毎朝散歩。澄み切った青空とサトウキビ畑を吹き抜ける風に身を任せる幸せ
島一番のビーチ近くの集落。珊瑚の垣根、赤瓦。これぞ沖縄の原風景。
起伏に富んだエリア。もちろんビーチは完全貸し切り。
無人のビーチより奇岩を愛でる。長時間いても全然飽きない。
いつものビーチにて。干潮時(膝下くらいの水位)。見よ、これが最高ランクの透明度だ。
いつものビーチ。岸からほんの数メートルの地点にて。珊瑚がちゃんと生きているビーチは超貴重なのだ。

すっかり前置きが長くなった。

ここからは短い旅の記録だ(たったの三泊)。新作に向けた取材で最強の援軍となったのは、長年付き合いのある東京在住の飲食店社長。島の出身者であり、道中なにかあれば連絡を、という心強い言葉をいただいた。

そして、社長に島の居酒屋を教えてもらった。初日に店を訪れたところ、隣席のネーネーたちと意気投合。さらにニーニーも加わり、酒盛りがスタートした。最近の行政事情や祭事の話題に及び、島出身者の動向を聞くなど、来訪者にとってはたまらない宴席となった。ご一緒したネーネーの一人が先の社長と小中の同級生とわかると、宴はさらに盛り上がった。

離島の宴はエンドレス。泡盛のボトルが何本消えたのか。
島の銘酒(泡盛)。芳醇な香り、すっきりした喉越し。ええ、飲みすぎました。

ああ、やっぱり地元の方々と酒を飲むのは楽しいなあ(他の島でも必ずやる)、などと思っていると、二軒目へという話に。島にはタクシーが存在しないため、シラフの知り合いに依頼して数キロ離れたビーチ沿いのスナックへ移動した。宴の最後はカチャーシー(沖縄の踊りね)となった(これが本当に楽しい)。

なぜこんなに旅の者に優しいのか尋ねると、ニーニーが即答した。

〈イチャリバチョーデーだからよぉ〉

ウチナーグチを直訳すると、こうなる。

〈縁があって一度会ったなら、それは兄弟同然だ〉……泥酔寸前だった私は泣きそうになった。そう、これだから旅はやめられないのだ。

宴のほかにも、民宿でご一緒したご婦人の話も印象的だった。現在那覇在住のネーネーは、島の出身。年に数回来島し、先祖の墓をいくつも回り、供養していると明かしてくれた。離島独特の風習をつぶさに聞いた。島の購買所では、オバアとしばしユンタク(世間話)。全て新作の糧になったのは言うまでもない。

村内のいたるところにガジュマル。下を通ると、守られている気がする。今度はいつ島に帰ろうか。

どうしても島の名を教えてという方々には、拙著『ガラパゴス』(小学館文庫NHKエンタープライズ=DVD)をお買い上げいただきたい(本編中に離島の名前が登場する=燃える商魂)。

2009年のビーチ。美しさは今も健在、微塵も壊れていない。右端は小学生当時の倅。

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食い意地と物欲は右に出るものがいない作家・相場英雄が教える、とっておきの街場メシ&気取らないのに光るBar。高いカネを出さずとも世の中に旨いものはある!

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相場英雄

1967年新潟県生まれ。元時事通信社記者。主な著書に『震える牛』(小学館文庫)、『血の轍』、『KID』(ともに幻冬舎文庫)、『トップリーグ』  『トップリーグ2/アフターアワーズ』(ともにハルキ文庫)。近著は『アンダークラス』(小学館)、『Exit(イグジット)』日経BP、『レッドネック』(角川春樹事務所)、『血の雫』(幻冬舎文庫)、『マンモスの抜け殻』(文藝春秋)、覇王の轍』(小学館)、『心眼』(実業之日本社)、『サドンデス』(幻冬舎、9/13発売)。

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