
〈使用機材〉FujifilmX100V,NikonD810,LeicaQ
新潟の片田舎から上京して三七年が経過した。
現在の住まいは歌舞伎町にほど近い新宿区の住宅街で、同区に居住して約三〇年になる。残り七年は、お隣の中野区の安アパートで独身時代を過ごした。
中野は都心に近いが、下町風情が色濃く残る街で、今も頻繁に足を向ける。拙著『震える牛』(小学館文庫)の主人公、田川信一警部補が中野に住んでいるのは、私が同区を愛しているからに他ならない(燃える商魂=未読の人は買ってね)。
焼き鳥、ラーメン、カレーと名店ひしめく中野で、私が足繁く通う一件のバーがある。例によって店名は明かさない。
中野駅の北口エリアは迷路のように小路が連なり、初めて行く人は必ず迷ってしまう。今回ご紹介するバーは、北口のランドマーク、中野サンモール近くにあり、迷路中の迷路のようなエリアで営業中だ。
なぜ私が頻繁に店を訪れるかといえば、中野で熱きスペインの風を感じることができるから。おいおい、ついに頭がおかしくなったか……そんな声が聞こえてきそうだが、私はいたって正気だ。
こちらは、スペインの本格的なタパス(小皿料理)が堪能できるのだ。もちろん、スペインワインの品揃えも豊富で、なかでもアンダルシア地方の特産、シェリーがいただける。恥ずかしながら、私はスペイン未訪問。いつか行ってみたいと思いつつ、ついついこの店のドアを開けてしまうのだ。



ワインがいただける居酒屋機能のほか、日中は美味しいコーヒーも楽しめる。そう、ラテンの国にあるBAR(バル)だ。
少し濃い目、ラテン色満載の店主が、いつも歓待してくれる。一度スペインの話を店主に振ると、これがもう止まらない。ワインや食材の買い付けで頻繁にスペインを訪れるという店主は、各地の名産品や人情にも詳しく、話を聞いているだけで旅をしている気分が味わえるという寸法だ(いや、大袈裟じゃないから)。



過日、スペインを長期間旅行したばかりという友人(美女)とともに店へ。友人の美貌に驚いた店主は、彼女が彼の地を愛していると告げた途端に話が止まらなくなった。
濃い目の接客が苦手という人にはオススメできないが、好きな人は絶対ハマってしまうこと請け合いの接客。


店にはテラス席もある。休日の昼下がりにテラスでキンキンに冷えた白ワインを、などという非常に危険なことも実行可能なので、注意されたい。


そうそう、この店にはとっておきの名物がある。スペイン巡りのあと、ポルトガルの港町で店主が目にし、そしてアレンジしたという〈チャルメラ〉というスープパスタだ。魚介の出汁、エビなどの具材を使い、生姜とキャベツを入れたシンプルな汁物。シメのラーメンが好きな御仁ならば、絶対に試していただきたい一皿だ。

ああ、また昼下がりのテラス席に行きたいなあ。お供してくださる美女、絶賛募集中(下心しかない)。
勝手に!裏ゲーテ 街場の旨いメシとBar

食い意地と物欲は右に出るものがいない作家・相場英雄が教える、とっておきの街場メシ&気取らないのに光るBar。高いカネを出さずとも世の中に旨いものはある!
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