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アルパカ通信 幻冬舎部

2023.04.28 公開 ツイート

真下みこと『わたしの結び目』/志駕 晃『そしてあなたも騙される』-若い女性の心の闇に迫るミステリー2作! アルパカ内田/コグマ部長

一日一冊読んでいるという“本読み”​​​​​​のアルパカ内田さんが、幻冬舎の刊行作品の中から「今売りたい本」を選び、そして“POP職人”としての腕を振るって、手描きPOPも作ります。

そして、アルパカ内田さんへの「オススメ返し」として、幻冬舎営業部の人気者・コグマ部長からも、一冊ご紹介。

*   *   *

元カリスマ書店員でPOP職人のブックジャーナリストが売りたい本
第19回 真下みこと『わたしの結び目

転校生の里香は、クラスで孤立する彩名と仲良くなるが、徐々に彼女の束縛がエスカレートする。彩名の親友が事故死したことを知った里香が死の真相を探るうち、「あの子を殺したのはわたしなんだ」と彩名が告白。それを境に、里香に不穏な出来事が続く。「あの子の時と同じだ」と噂するクラスメイトたち。なぜ彩名は里香を追い詰めるのだろうか―。

こんにちは。読みました。まことに見事な物語に大満足のアルパカ内田です。

なんとも鮮烈な印象を放つ一冊だ。中学二年生という微妙な年頃の揺れ動く心模様が赤裸々に再現されている。淡い光の中にあった深い闇。心の奥底で眠っていたセピア色の記憶が鮮やかな色を帯びて蘇ってくる。

少女たちの苛烈な心の葛藤を描いた物語であるが、実は年齢も性別も関係ない。目には見えない人間関係に多くの人が悩まされたであろう。重苦しい学校の空気を知るすべての者に大いなる普遍性が感じられるはずだ。

転校生の素朴な不安。菊の花がメッセージとなった教室に隠された秘密。孤独の寂しさや喪失の哀しみを埋めるための友情が、いつしか歪んでバランスを失ってしまう。思春期の小さな背中には重たすぎる十字架が物語の随所から見えてくる本書は、理不尽でミステリアスな社会の象徴でもあるといえよう。

初めてリボンを、ネクタイを結んだ日はいつのことだろうか。そして誰からその結び方を教わったのかも思い出してほしい。胸元の「結び目」は人との絆そのものであり、さらにその変化こそが成長の証ともいえるかもしれない。過去と現在を固く結びつけたこの作品は多くの読者と繋がるに違いない。

爽やかなだけが青春じゃない。誰もがたくさんの苦しみや痛みを背負って生きている。際どくもあれば危うくもある。残酷な現実を経験した者ほど射しこむ光は美しく見える。ガラス細工のように繊細で真綿のように温かい。まったく偽りのないピュアな血潮がここにある。

アルパカ内田さんの手描きPOP。ご自由に使っていただけます。その際、こちらにご連絡いただけると幸いです

 

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アルパカ通信 幻冬舎部

元カリスマ書店員で、POP職人でもある、ブックジャーナリストのアルパカ内田さんが、幻冬舎の新刊の中から、「ぜひ売りたい!」作品をピックアップ。
書評とともに、自作の手描きPOPも公開。

幻冬舎営業部のコグマ部長からの「オススメ返し」もお楽しみください!

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アルパカ内田 ブックジャーナリスト

内田剛(うちだたけし)。ブックジャーナリスト。約30年の書店勤務を経て2020年2月よりフリーランスに。NPO法人本屋大賞実行委員理事で創立メンバーのひとり。文芸書をメインに各種媒体でのレビュー、学校や図書館でのPOP講習会などを行なっている。これまでに作成したPOPは5000枚以上で著書に『POP王の本!』あり。無類のアルパカ好き。
Twitter @office_alpaka

コグマ部長

太田和美(おおたかずみ)。幻冬舎営業本部で販売促進を担当。本はミステリからノンフィクションまでノンジャンルで読みまくる。アルパカ内田(内田剛)さんとは同学年。巨人ファン。
Twitter @kogumabuchou

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