一日一冊読んでいるという“本読み”のアルパカ内田さんが、幻冬舎の刊行作品の中から「今売りたい本」を選び、そして“POP職人”としての腕を振るって、手描きPOPも作ります。
そして、アルパカ内田さんへの「オススメ返し」として、幻冬舎営業部の人気者・コグマ部長からも、一冊ご紹介。
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元カリスマ書店員でPOP職人のブックジャーナリストが売りたい本
第36回 辻堂ゆめ『ダブルマザー』
皆さんこんにちは。ダブルよりもバブルにアワてるアルパカ内田です。
いま最も才能とセンスを感じさせる作家・辻堂ゆめ。その新作もまた抜きんでたアイディアに満ちており、「衝撃」を軽々と超えた規格外の一冊。読んだ誰もが完膚なきまでに打ちのめされるだろう。
駅のホームから飛び降りて自殺したひとりの女性。名乗り出た二人の母親。なんと亡くなった彼女は、まったく異なった家と名前で二重生活をしていたのだ。この設定だけでも度肝を抜かれるが、母親たちがそれぞれの「愛」を注ぎながら「娘」を追いかける過程が、実にスリリングで引きつけられる。
「二組」の母娘を描いたこの物語を読み解くには、「三角=トライアングル」がポイントとなると感じた。詳細は本書で確認いただきたいが、娘たちと「親友」を交えた三角関係。そして彼女たちが向かった「山」も三角の象徴である。ホームでの転落死から、垂直方向に目を向けて天界を目指す山への道行き。これを頭に刻みつけて読み進めてほしい。
別の自分になるための整形手術、突然の失踪。疑惑は次々と現れて膨らみ続ける。産み育てた娘は「幻想」だったのか? もう一人の娘は生きているのか? とすれば一体どこにいるのか? 徐々に炙り出されるのは、これまで知らなかった娘たちの素顔だ。
違和感だらけのミステリアスな展開は三度読み必至。本書はただ格別な魅力を放つエンターテインメント作品であるばかりではない。恐るべきアプローチで真の「家族」のあり方を問う価値ある物語なのだ。
アルパカ通信 幻冬舎部
元カリスマ書店員で、POP職人でもある、ブックジャーナリストのアルパカ内田さんが、幻冬舎の新刊の中から、「ぜひ売りたい!」作品をピックアップ。
書評とともに、自作の手描きPOPも公開。
幻冬舎営業部のコグマ部長からの「オススメ返し」もお楽しみください!
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