一日一冊読んでいるという“本読み”のアルパカ内田さんが、幻冬舎の刊行作品の中から「今売りたい本」を選び、そして“POP職人”としての腕を振るって、手描きPOPも作ります。
そして、アルパカ内田さんへの「オススメ返し」として、幻冬舎営業部の人気者・コグマ部長からも、一冊ご紹介。
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元カリスマ書店員でPOP職人のブックジャーナリストが売りたい本
第29回 ヤマモトショウ『そしてレコードはまわる』
こんにちは。オフの時は音楽(オンを愉しむ)に限るアルパカ内田です。
降り注ぐ音、心に響く詩。冒頭からラストに至るまでとことん音楽愛に満ちた物語である。新しいけれども懐かしい。読めば誰もが体験してきた音楽の記憶がよみがえることだろう。そしてこの世のどんな不協和音も絶妙なハーモニーに変える音楽の力の凄さを再認識できるはずだ。
主人公は夢を持ってレコード会社に飛び込んだひとりの女性。仕事と真摯に対峙する成長譚の始まりだが、もちろん現実は一筋縄ではいかない。成功の光が眩しいほど舞台裏の闇は深くなる。生き残るために儲けなければならない企業の思惑。盗作疑惑に揺らぐアーティストの矜持。眩暈をおぼえるような変化の激しい業界には、当事者たちにしか分からない厄介な事情も溢れていた。
個性的なキャラクターの魅力、鮮やかに謎を解く展開の切れ味だけでなく、森鷗外『高瀬舟』も絡んで、物語世界に奥深い陰影とアクセントを与える。さらには舞台設定の妙にも唸るしかない。東京、沼津、京都……ぜひ土地の空気を存分に浴びながら物語世界に没入してもらいたい。
それぞれの人生が刻まれた溝を繊細な針が感じとって黒い円盤が音楽を奏でる。耳をすましてその「音」を聴けば、レコードとともにまわっているのは、僕らが生きている「場所」であり「時代」であると気づかされるだろう。
作品に仕込まれた絶妙な人間ドラマから、豊かな哲学と清々しい息吹が伝わる一冊だ。
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アルパカ通信 幻冬舎部
元カリスマ書店員で、POP職人でもある、ブックジャーナリストのアルパカ内田さんが、幻冬舎の新刊の中から、「ぜひ売りたい!」作品をピックアップ。
書評とともに、自作の手描きPOPも公開。
幻冬舎営業部のコグマ部長からの「オススメ返し」もお楽しみください!
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