一日一冊読んでいるという“本読み”のアルパカ内田さんが、幻冬舎の刊行作品の中から「今売りたい本」を選んでレビュー。さらに“POP職人”としての腕を振るって、手描きPOPも作るコーナー。
今月のオススメはこちらです!
また、幻冬舎営業部の人気者・コグマ部長が新刊の中からセレクトする、アルパカ内田さんへの「オススメ返し」もあわせてお楽しみください!
【元カリスマ書店員でPOP職人のブックジャーナリスト
アルパカ内田さんが今、売りたい本】
第57回 染井為人『硝子のマンション』
皆さん、こんにちは。硝子より旅がらすに憧れるアルパカ内田です。
なんと鮮烈な印象を放つ物語なのだろう。騒めきが止まらぬこの作品の登場は事件だ。読者をグイグイ引きつける筆力はもちろんのこと、表と裏の顔を持った登場人物たちの心理描写が実に巧妙。心の奥底まで凝視するようなアプローチで、感情の揺れ動きを大胆かつ繊細に捉える。
舞台はごく当たり前の日常風景が広がる築30年のマンションで、絵に描いたような「平和な」場所だ。完璧にプライバシーが守られた集合住宅。だからこそ、余計に他人の部屋は気になる。ベランダの異臭、不倫の気配、不可解な騒音……不幸の欠片を見つけた人の表情は、活き活きと変化する。歪んだ近所付き合い、過剰に盛られた噂話が、現実の生活を容赦なく呑みこみ、顔の見えない現代社会の病理をシビアに暴きだす。
「こんなはずじゃなかった」、そう思った瞬間にはすでに手遅れだ。互いに求め合って暮らし始めたはずの男女の関係。その運命の糸はなぜ複雑に絡み合ってしまうのか。それぞれに誰にも言えない秘密を抱えた住人たち。理想と現実の狭間に戸惑い続け、嘘と真実が混濁し、些細な違和感から狂気が芽生え、ついには後戻りできない殺意へと到達する。
綱渡りのような極限状態の恐怖から思考が停止し、理性が崩壊する瞬間を目の当たりにするスリル。目先の欲望に目がくらみ、悪に染まった者たちの愚かな背中、そして息づまる展開に戦慄が走る。決して他人事ではない。危険極まりないトラウマ必至の一冊である。

アルパカ通信 幻冬舎部

元カリスマ書店員で、POP職人でもある、ブックジャーナリストのアルパカ内田さんが、幻冬舎の新刊の中から、「ぜひ売りたい!」作品をピックアップ。
書評とともに、自作の手描きPOPも公開。
幻冬舎営業部のコグマ部長からの「オススメ返し」もお楽しみください!
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