一日一冊読んでいるという“本読み”のアルパカ内田さんが、幻冬舎の刊行作品の中から「今売りたい本」を選んでレビュー。さらに“POP職人”としての腕を振るって、手描きPOPも作るコーナー。
今月のオススメはこちらです!
また、幻冬舎営業部の人気者・コグマ部長が新刊の中からセレクトする、アルパカ内田さんへの「オススメ返し」もあわせてお楽しみください!
【元カリスマ書店員でPOP職人のブックジャーナリスト
アルパカ内田さんが今、売りたい本】
第56回 吉田修一『タイム・アフター・タイム』
皆さん、こんにちは。修一作品なら毎日でもOKなアルパカ内田です。
なんと純粋で狂おしい恋愛模様なのだろう。物語はゲリラ豪雨の東京郊外で始まる。ドラマチックな再会から、あの夏の記憶が呼び起こされた。複雑に絡まる運命の赤い糸。身体の底から湧きあがってくる懐かしき思い出。美しい南の島で見た、空と海とが一体となった青い絶景は、とりわけ印象深い。
主人公の十字架を負った男女による、突然の嵐のような恋。高まる鼓動、生々しい吐息、とまどう感情。言葉にはならない切実な熱情をありのままに表現している。まっすぐに誰かを想う気持ちはいつも衝動。理性よりも圧倒的に本能が勝るのだ。ここには体感すべき豊かな文学世界がある。
脳裏に焼きついていたセピア色の光景が、いつしか鮮やかに彩られ、置き忘れていた大切な思い出が、次々と眼前に甦ってくる。素晴らしいラストシーンは涙でかすんで、読み進めるのが困難なほど。自分の居場所を探し求めた二つの魂の遍歴。その行方に心を奪われ、一筋縄ではいかない青春の日々に激しく胸を揺さぶられるのだ。
この物語を読んだ誰もが「特別な」感情を抱くに違いないが、それはありきたりの「共感」とは異なるはずだ。嫉妬、憧憬、後悔、蹉跌、諦念……偶然と必然が織りなす感情の渦に溺れそうになるかもしれない。過去があるから今がある。理想と現実の狭間をたゆたい、人それぞれの幸せのカタチを問いかける『タイム・アフター・タイム』は、誰のものでもない、僕ら自身の物語なのだ。

アルパカ通信 幻冬舎部

元カリスマ書店員で、POP職人でもある、ブックジャーナリストのアルパカ内田さんが、幻冬舎の新刊の中から、「ぜひ売りたい!」作品をピックアップ。
書評とともに、自作の手描きPOPも公開。
幻冬舎営業部のコグマ部長からの「オススメ返し」もお楽しみください!
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