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アルパカ通信 幻冬舎部

2024.03.29 公開 ツイート

門井慶喜『ゆうびんの父』/黒木亮『マネーモンスター』- 郵便と金融、ビジネスの裏側を垣間見れる小説2作! アルパカ内田/コグマ部長

一日一冊読んでいるという“本読み”​​​​​​のアルパカ内田さんが、幻冬舎の刊行作品の中から「今売りたい本」を選び、そして“POP職人”としての腕を振るって、手描きPOPも作ります。

そして、アルパカ内田さんへの「オススメ返し」として、幻冬舎営業部の人気者・コグマ部長からも、一冊ご紹介。

*   *   *

元カリスマ書店員でPOP職人のブックジャーナリストが売りたい本
第30回 門井慶喜『ゆうびんの父

郵便制度の祖と呼ばれ、現在では一円切手の
肖像にもなっている前島密。だが彼は士農工商
の身分制度の影響が色濃く残る時代にあって、
代々の幕臣でも薩長土肥の藩士出身でもなく農
家の生まれだった。生後すぐに父を亡くし、後ろ
盾が何もない。誰より勉強をしても、旅をしてい
くら見聞を広めても、すぐには世に出ることがで
きなかった。そんな苦悩を乗り越え、前島はい
かにして道を切り開いたのか。

こんにちは。朝届いても郵便(ゆうびん)。アルパカ内田です。

『銀河鉄道の父』で直木賞を受賞した門井慶喜は、様々な分野の社史のコレクターとしても知られており、近現代史の人物評伝を書かせたら当代随一であろう。綿密な取材に基づき、興味深いエピソードの数々から歴史に名を残した偉人の真の姿を再現する。肉声が聞こえ、体温までもが伝わってくるのだ。

本書の主役は一円切手の肖像画ともなっている超有名人・前島密だ。しかし知名度の割には、苦難あふれる生い立ちをはじめ、驚異のスピードで日本の郵便事業を確立させ、近代国家設立の礎を築いた神業的な功績は意外なほど知られていない。

まずは探求心が半端ではなかった。生まれ持った才気はもちろん、日本全国津々浦々の旅によって広めた見聞があったからこそ、新たな時代を切り開くことができたのだ。さらに越後出身の幕臣でありながら、薩長勢力が牛耳る新政府でも活躍できたのは、激動の時代の変化へのしなやかな対応力がものを言ったのであろう。

そして何よりも曲がりくねった人生の確かな道標となったのは、母の尊き教えだった。遠く離れた場所で手紙のやりとりを通じて無限の愛をそそいでくれた「母」の絶大な存在があってこそ、前島密は郵便の「父」に成り得たのである。幾多の困難を乗り越えて国家事業を成し遂げた「プロジェクトX」のようなこの物語は、底知れぬ家族愛もまた読む者の胸にストレートに突き刺さる。時を超えた名作誕生に心から拍手を送りたい。

アルパカ内田さんの手描きPOP。ご自由に使っていただけます。その際、こちらにご連絡いただけると幸いです

幻冬舎営業部 コグマ部長からオススメ返し
黒木亮『マネーモンスター

日本人とアメリカ人のグループが運営する
ウォール街のカラ売り専業ファンドが、資産
の過大計上や契約書の改ざんなどで暴利を
貪る企業に、持ち前の財務分析力で作成し
た告発レポートを武器に次々と宣戦布告!!
最後に笑うのはいったい誰か―。

一方、こちらは金融の世界でのスリリングな攻防に息をのむ1冊。

「カラ売り」とは株主から借りた株式を売り、当該株式の株価をシビアな財務レポートの発表などで下落させたのち株式を買い戻し、現物を元の持ち主に返して差益を得る投資手法。本作はその専業ファンドを運営する男たちが主人公の金融エンタテインメント小説だ。

3話あるが、圧巻は「地銀の狼」。元来は優良地銀であるあかつき銀行の支店で、行員の自殺が発生。同支店では行員の鬱病や退職が相次いでいた。しかも、新興の住宅メーカーと組んだ高リスクの不動産融資も多く、支店長の指示のもと違法行為も横行していた。情報をつかんだファンド側は丹念な調査を重ね、数々の詐欺行為を白日のもとに晒す。一気に株価は下落するが……。

儲けたい客に巧みに付け入るモンスターたち。常に被害に遭うのは知識がない者や高齢者。一度獲物を手にしたらすべてを吸いつくす様子はまさにアリジゴクだ。本書では巧妙な騙しのテクニックがいくつも明らかにされ、読者はいつの間にか十分な金融リテラシーが身に付くという最高のおまけもある。

現在、書店店頭で売れている投資関連書籍との並売も期待できる。東証の高値更新に沸くのもいいが、まずはこの小説で現実を知ってほしい。

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アルパカ通信 幻冬舎部

元カリスマ書店員で、POP職人でもある、ブックジャーナリストのアルパカ内田さんが、幻冬舎の新刊の中から、「ぜひ売りたい!」作品をピックアップ。
書評とともに、自作の手描きPOPも公開。

幻冬舎営業部のコグマ部長からの「オススメ返し」もお楽しみください!

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アルパカ内田 ブックジャーナリスト

内田剛(うちだたけし)。ブックジャーナリスト。約30年の書店勤務を経て2020年2月よりフリーランスに。NPO法人本屋大賞実行委員理事で創立メンバーのひとり。文芸書をメインに各種媒体でのレビュー、学校や図書館でのPOP講習会などを行なっている。これまでに作成したPOPは5000枚以上で著書に『POP王の本!』あり。無類のアルパカ好き。
Twitter @office_alpaka

コグマ部長

太田和美(おおたかずみ)。幻冬舎営業本部で販売促進を担当。本はミステリからノンフィクションまでノンジャンルで読みまくる。アルパカ内田(内田剛)さんとは同学年。巨人ファン。
Twitter @kogumabuchou

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