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日本野球よ、それは間違っている!

2020.02.08 更新 ツイート

ソフトバンク・王会長の姿に「完全V4」の決意を見た広岡達朗

今年もプロ野球のキャンプが始まって、いよいよ球春到来である。例年より暖冬のせいか、フリーバッティングに力が入り、エース級が初日からブルペンに入るチームが多かった。

昨年、3度目の原辰徳監督を迎えて5年ぶりにリーグ優勝した巨人のキャンプ風景をテレビの生中継で見たが、原は相変わらず評論家などの“お客さん”と笑顔で対応し、コーチや選手にも、日本シリーズでソフトバンクに完敗した悔しさと日本一奪還への気概が感じられなかった。

そんななかで目を引いたのは、新二軍監督・阿部慎之助の姿だった。率先して特守のノックを続け、あるときは打者の両足を左右いっぱいに開かせ、自らトスしてノーステップで続けて打たせていた。投手寄りにトスを上げるので、前で打たなければならない。この姿勢の連続スイングは過酷なもので、最後は倒れ込んだ選手がしばらく立ち上がれなかった。この時期は選手を限界まで鍛えて、教えた技術を体で覚えさせなければいけない。これがキャンプの練習というものだ。

広島復活のキーパーソンは高ヘッドコーチ

広島のキャンプでは、佐々岡真司・新監督が緊張した表情でフリーバッティングを見守っていた。佐々岡の監督抜擢を不安視する声もあるが、たしかに投手出身の監督は攻撃や守備を含めた野球全般の知識に乏しい。そもそも投手は、自信家で自分が相手を抑え込むことしか考えていないものである。

私が現役で、王・長嶋が全盛時代に入団した堀内恒夫は高卒新人で開幕13連勝した剛腕だったが、「おい、ホリ。後ろには俺たちがついているんだから、打たせて取ればいいんだぞ」と声をかけても、全力投球で歩かせることが少なくなかった。

カープの佐々岡も通算138勝の好投手で、昨年まで投手コーチをしていたが、全軍の指揮官となれば話は別だ。巨人やDeNAなどの強敵を相手にペナント奪還をめざすなら、経験豊富なヘッドコーチの力を借りるしかない。

広島の高信二(こう・しんじ)ヘッドコーチ(52)は内野手出身で、昨年までは緒方孝市・前監督を補佐してきたが、1年後輩の緒方の相談相手でよかった。ところが今季は投手出身の監督に対して攻守全般で助言しなければならないのだから、カープ復活のキーパーソンである。

同じことは高津臣吾が指揮を執るヤクルトにもいえる。高津は二軍監督の経験があるが、新監督の命運は宮出隆自(みやで・りゅうじ)ヘッドコーチの腕次第かもしれない。

練習重視のキャンプはソフトバンクと西武だけ

2月1日に始まったキャンプ日程を見ると、面白い傾向が表れている。オリンピックで開幕が例年より1週間早いせいかもしれないが、ほとんどのチームが8日か9日に紅白戦や他チームとの練習試合を始め、16日から本格的なオープン戦を展開する。

これに対し、ソフトバンクが22日まで、西武は19日まで紅白戦も入れずに練習を続けるのだ。

今年のキャンプはソフトバンクと西武、オリックス、巨人、広島が宮崎県でキャンプインし、そのほかの7球団は初めから沖縄県に居続けている。このうち巨人は14日、広島は11日に沖縄に移動するが、ソフトバンクと西武、オリックスの3球団は最後まで宮崎を動かない。

私が注目したのは、1か月にわたるキャンプ日程の中身である。たとえば日本一奪還をめざす巨人は第1クールの4日に最初の紅白戦を行い、第2クールの8日と9日も紅白戦。つまり宮崎キャンプは実働11日のうち実質的な練習は8日間だけ。14日に那覇に移ってからは最終日の25日までほとんどが練習試合かオープン戦で、終日練習は2日間ほどだ。

他球団も似たような日程だが、ソフトバンクと西武は先述のように練習ざんまい。昨年3年連続日本一を飾ったものの、ペナントレースでは西武に2年連続でリーグ優勝を許したソフトバンクはキャンプイン前の1月30日、福岡市の筥崎宮(はこざきぐう)で必勝祈願を行い、王貞治・球団会長が「オリンピックの年を大いに皆さんと盛り上げたい。そのためにはホークスが野球界を盛り上げないといけない。今年こそ完全優勝をめざして、みんなで力を合わせて頑張りたい」と決意を語った。

西武も2年連続でリーグ優勝していながら、CS(クライマックスシリーズ)で宿敵・ソフトバンクに連敗しているだけに、今シーズンにかけるリベンジの思いは強い。パ・リーグの覇権を競う両チームの気概が、練習本位のキャンプ日程に表れていると私は思う。

キャンプの基本は体力と技術の基礎訓練

そもそも春のキャンプは、長丁場のペナントレースを最善のコンディションで乗り切るために体力と技術を磨くものだ。そのために1か月の前半に基礎訓練をしっかりやったうえで選手個々の能力を高め、チームの課題と目標に向かって戦力強化を図らなければならない。その段階を踏まずに2週目から紅白戦や練習試合、オープン戦をやるのでは、基礎練習が中途半端になる。

選手たちは「オフの間に自主トレで体を作っている」というだろうが、マイペースの自主トレと、徹底的に体を作るキャンプではレベルも内容も違う。

そして未熟な若い選手には言葉で教えるだけでなく、体に覚え込ませなければならない。そのためには時間も体力も必要なのだ。

5月に80歳を迎える王がキャンプ初日からバットを片手にグラウンドに立ち、若い選手を指導する姿に「完全V4」をめざすソフトバンクの決意と本気度がにじみ出ていた。

 

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広岡達朗

1932年、広島県呉市生まれ。早稲田大学教育学部卒業。学生野球全盛時代に早大の名ショートとして活躍。54年に巨人に入団、1年目から正遊撃手を務め、打率.314で新人王とベストナインに輝いた。引退後は評論家活動を経て、広島とヤクルトでコーチを務めた。監督としてヤクルトと西武で日本シリーズに優勝し、セ・パ両リーグで日本一を達成。指導者としての手腕が高く評価された。92年に野球殿堂入り。『動じない。』(王貞治氏・藤平信一氏との共著、幻冬舎)、『巨人への遺言』『中村天風 悲運に心悩ますな』『日本野球よ、それは間違っている!』(すべて幻冬舎)など著書多数。新刊『言わなきゃいけないプロ野球の大問題 巨人はなぜ勝てなくなったのか?』(幻冬舎)が発売中。

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