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オオカミ少女に気をつけろ! ~欲望と世論とフェイクニュース

2019.06.01 更新

詐欺やデマに引っかかりやすい人の共通点泉美木蘭

(写真:iStock.com/AaronAmat)

警視庁の特殊詐欺被害に関する調査広報資料によれば、「オレオレ詐欺」を見破った人のうち70.3%は、犯人から電話がかかってきて、ニセのトラブルを話し始める前に詐欺だと気が付いたという。その理由は、「声が違う」が圧倒的だ。

では、その声が、息子や孫にそっくりだったら? 事実、騙された人の62.7%は、その理由を「声がそっくりだったから」と答えている。たまたま声が似ていたという不運が重なった時、条件は一変してしまうのだ。

声だけではない。2018年頃から「ふるさと納税」の偽サイトが多数発見されるようになり、寄付金を振り込んだのに返礼品が届かないなど、騙される人が相次ぎ大問題になっている。

 
これは本物のサイト。大和牛しゃぶしゃぶを返礼品とした奈良県香芝市の「ふるさと納税」。
本物サイトから画像などを無断転載した偽サイト。「【ふるさと納税】大和牛しゃぶしゃぶ」とある。

偽サイトは、よく見れば「ふるさと納税」なのに「税込」「販売価格」「SALE!」などおかしな点が散見されるのだが、本物のサイトから画像や文言を無断転用して制作されているのもあって、そう簡単に見分けがつかない。ネットショッピングに慣れた世代ほど受け入れやすく、騙されやすい詐欺とも言えるだろう。

では、詐欺はどのような隙をついて人の心に入り込むのか? 実際の詐欺被害の実態から、「騙されやすい人」の特徴を分析してみたい。

1.「自分は絶対に騙されない」と自信を持っている

「オレオレ詐欺」被害者の調査では、なんと97%が「詐欺の手口を知っていた」と答えており、さらに95.2%が「(どちらかと言えば)自分は被害にあわないと思っていた」と答えている。

メディアを通して実際の詐欺の電話音声が公開され、その手口や特徴がすっかり浸透しているが、どこか他人事としか捉えておらず、「自分はこんな単純な詐欺には引っかからないさ」と馬鹿にしたり、根拠のない自信を持ってはいないだろうか? それが隙なのだ。

いつでも誰もが騙される可能性があるのが現実である。騙された人には、「たまたま不運に見舞われた」部分もあり、いつか自分にも起こりうる自然災害、くらいに思っていたほうがよいかもしれない。

2. “しっかり者”と周囲からの評判もいい

自信を持っていることと関連するが、周りから「絶対あの人は大丈夫」と思われるタイプの人も要注意だ。

実は、筆者の身近に、還付金詐欺に騙されてATMから数十万円を振り込んでしまった70代の女性がいる。仕事を持って自活しており、言いたいことははっきり主張する姉御肌、プライドがあり、お金の勘定にも優れているタイプだ。周囲の人からは一目置かれており、つねづね「あなたはしっかり者ね」「凄いわ、感心する」と褒め上げられていた。

私も、本当に快活でしっかりした人だなと感じており、また、おべっかを使う下心もあって、「ああいう詐欺には引っかかりそうにないですよね」と言ったことがある。特別に傲慢な人ではなかったが、「もし電話があったら、撃退してやるわ!」と明るく笑顔で言っていた。だから、騙されたと聞いた時は「まさか!?」と私までが仰天したものだ。

本人の中に自信満々な隙もあったのだと思うが、周りの人間にとってみれば「騙されないように気を付けて下さいね」などと忠告するのは失礼に当たるかも、と感じさせる人でもあった。しかし、しっかり者で快活であることと、詐欺に騙されないことは、イコールではないのだ。

3.いざトラブると「誰にも相談できない…」と思い詰めがち

「オレオレ詐欺」の被害者の75.1%は、息子や孫から「トラブルに巻き込まれた」という電話があったことを誰にも相談することなく、現金やキャッシュカードを犯人に渡してしまったという。

内向的な人は、「金を使い込んだ」「ヤクザの車にぶつけた」など恐ろしい物語に揺さぶられると、恐怖と不安に陥って思考が停止したり、誰にも相談できないと思い詰めてしまうことがある。孤独という閉塞感に追い込まれたところに、「今日の〇時まで」などと時間を区切られて焦らされると、客観性や冷静な判断を奪われてしまい、詐欺師の誘導に乗ってしまうのだ。

詐欺電話がかかってきて、「家族に相談した」というケースでは、多くがその家族によって未然に阻止されている。自分で詐欺だと気づいた人でも、単独で見抜いた人ばかりでなく、58.6%が同居の家族に、53.5%が別居の家族に相談しているという特徴がある。同居、別居に関わらず、一人で思い詰めずにコミュニケーションがとれる状態にあることはとても重要なのだ。

4. 自分がなにをしたいのかがわかっていない意志薄弱タイプ

私が大学生の時に騙されかけた「マルチ商法」(詳細は前回記事)では、喫茶店の奥の席にまんまと連れ込まれて2人の詐欺師に囲まれ、どんどん成功話を持ち掛けられて契約する直前まで話を進められた。ひどい世間知らずだったのもあるが、なにより「意志薄弱」だったことが、騙された大きな原因だと告白しておく。

平和ボケの症状でもあるが、子どもの頃から「大学を出たら地元の信用金庫につとめて、旦那さんを見つけて寿退社だ」と言われるような時代にただ漫然と流されていたきらいがあり、これという明確な目的を持たないまま大学生になっていた。

「自分はこうしたい」「目標がある」という主体性が薄いので、強引に勧誘された時に「私にはやるべきことがあるから」ときっぱり押し戻すことができない。ふにゃふにゃと流されるままに、自分の意思を持たず、相手の話をいつまでも聞いてしまうのだ。

いま思えば、暴力的に監禁されていたわけでもなく、恐怖にも不安にも苛まれてはいなかったから、断って喫茶店を後にする自由もあった。なのに、ただ「へえ」と話を聞いていたのは自分自身だったという事実を認識し、きちんと恥じなければならないと思う。自分がなにをしたいのかが自分でわかっていないという漫然とした状態は、危険と隣り合わせなのだ。

5. 物理的に、けっこう「ひとり」

そもそも現代は、核家族化が進んで親子別居が多く、すぐにコミュニケーションのとれる人、相談できる人が減っており、人が「ひとり」になりやすいという社会環境にある。これは、詐欺師にとって有利にはたらいてしまう。「オレオレ詐欺」が急増し、広く知られ始めたのは2003年頃だが、これは高齢者の独居が増加しはじめた時期でもあるのだ。その後、独居老人数に比例して、被害件数も右肩上がりである。

さらに今は、家族といても自室でパソコンに向かっていたり、大勢の中にいてもスマホの中にのめり込んでいたり、「常にひとり」の状況が作り出されている。そこに忍び寄るのが、ワンクリック詐欺やフィッシング、架空請求詐欺などだ。BBソフトサービスのセキュリティソフト「Internet SagiWall™」で検知したデータを基にした「インターネット詐欺リポート(2016年8月度調査)」によれば、ネット上で何らかの詐欺被害にあった人の約7割がスマホを使っていたことが判明している。

6. “後ろめたさ”が勝る状況は危険

「インターネット詐欺リポート」には、興味深い調査結果がある。ネット詐欺にあった際、「家族や知人に相談した」のはわずか4%、「第三者機関に相談した」という人も6%にすぎないのだ。

被害にあっても「問い合わせも相談もしなかった(37%)」、次に多いのが「メールでサイトの運営者に問い合わせた(18%)」。誰にも相談しなかった理由は、「色々聞かれるのが面倒(47.8%)」「家族や知人に知られたくない(20.9%)」となっている。

これは、多くのインターネット詐欺が、アダルトサイトや出会い系サイトなどを覗き見ている最中に起きることに起因しているだろう。プライベートの塊であるスマホを手にして、こっそりとエッチな動画を見ようとしたら、突然「ご入会ありがとうございます」という画面が出て、IPアドレスなどが表示され、高額の料金請求を突きつけられる。この後ろめたすぎる場面で、まず人に相談しようと考える人は少ない。自力でなんとか解決しようとして、メールで詐欺サイトにコンタクトをとってしまうことにより、さらなる被害に巻き込まれるわけだ。

「オレオレ詐欺」でも、息子がとんでもないトラブルを起こしてしまったと思い込まされた時、家族に「あの子からこんな電話があった」と言える人と、体裁を重んじるあまり、密かにひとりで解決しようとする人とでは、結果が違う。

 

ここまでの分析を、自信過剰がち、持ち上げられて気分よくなりがち、孤独になりがち、自分がなにをしたいのか言えず、無自覚がち、騙されたとわかってもダンマリしがち……こう言い換えてみる。すると、ネット上でデマに扇動されたり、フェイクニュースの拡散協力をしてしまう人々のふるまいとの共通点が浮かび上がる。詐欺の手口を情報として仕入れることも大事だが、自分のなかに巣くっている心の隙や恥の部分を認識する勇気も必要かもしれない。

 

(参考資料)

内閣府「平成30年度青少年のインターネット利用環境実態調査」

警視庁捜査第二課広報資料「オレオレ詐欺被害者等調査の概要について」

BBソフトサービス「インターネット詐欺リポート(2016年8月度)」

NHKニュース「オレオレ詐欺続発」(2003年)

内閣府「平成30年版高齢社会白書」

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オオカミ少女に気をつけろ! ~欲望と世論とフェイクニュース

嘘、デマ、フェイク、陰謀論、巧妙なステマに情報規制……。混乱と不自由さが増すネット界に、泉美木蘭がバンザイ突撃。右往左往しながら“ほんとうらしきもの”を探す真っ向ルポ。

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泉美木蘭

昭和52年三重県生まれ、作家、ライター。日々、愛しさと切なさと後ろめたさに苛まれている不道徳者。社交的と思わせて人見知り。日頃はシャッターをおろして新聞受けから世間を覗いている。趣味は合気道、ラテンDJ、三浦大知。

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