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オオカミ少女に気をつけろ!

2020.09.17 更新 ツイート

死因はウイルスか、持病か、それとも…?泉美木蘭

インフルエンザ死者数の出し方

インフルエンザには、ウイルスによって引き起こされる肺炎や脳症など、インフルエンザが直接の死因となった「直接死」と、インフルエンザに感染したことによって抵抗力が落ち、別の病原体に二次感染して肺炎や敗血症を起こしたり、もともと持っていた呼吸器疾患や心疾患などの持病が悪化して死亡したりした「間接死」という二つの概念がある。

 
(写真:iStock.com/takasuu)

死因がインフルエンザなのか、二次感染による肺炎なのか、死亡診断書の書き方は医師の裁量に任されてもいるため、正確な「インフルエンザによる死者」の統計をとることは難しい。そこで、インフルエンザが流行したことによって死亡したと思われる人数を、統計上の計算によって導き出し、「インフルエンザの死者は、直接死がおよそ3,000人、間接死を合わせると年間およそ10,000人」と推計されている。

新型コロナウイルスの場合の死者数の出し方

一方、現在、日本で発表されている新型コロナウイルスの死者は、現在のところ直接死と間接死は区別されておらず、さらに「PCR検査陽性」ならば、死因によらず、すべて「新型コロナウイルスによる死者」として厚生労働省に報告することになっている。そのため、本当に直接死なのか間接死なのか、あるいは明らかにほかの要因で死亡したのか、その区別も外側からはよくわからないという状態になっている。

当初は、PCR検査で陽性だとしても、医師の判断で、他の病気が死因とされている死者については区別して、統計に入れていなかった都道府県もあったのだが、2020年6月18日に厚生労働省から各自治体に通達があり、「新型コロナウイルス感染症の陽性者であって、入院中や療養中に亡くなった方については、厳密な死因を問わず、『死亡者数』として全数を公表する」ということになった。

整理される前までの、新型コロナ「死者」の自治体による定義の違い(出典:読売新聞2020.6.14
厚労省から各自治体への通達 2020.6.18

厚生労働省は、すべての死者の死亡票を精査して最終的な死因を選択し、「人口動態調査」として統計をとって公表するが、これには一定の時間がかかる。そのため現段階では、できるだけ速やかに新型コロナに関連していると思われる死亡者数を把握するという目的で「陽性者ならすべて報告する」ということになっているのだ。

死因が癌なのに「新型コロナ感染者が死亡」となる不思議

この通達にもとづいて、例えば埼玉県では、癌や心不全など別の死因があり、統計からは除外していた死者を「新型コロナ死者」として13人追加。この基準は、現在までつづいている。

看取って死亡診断書を書いた医師が「死因は癌だ」と判断しているのに、「新型コロナ陽性」のほうが優先されて発表されるのはヘンな状態だし、これでは、例えば「新型コロナ陽性だけど、ちょっとした鼻風邪症状で気にもならない程度だった。だがその日、記録的な猛暑になり、重度の熱中症になって死亡した」というケースであっても「新型コロナ死者」とされることになってしまう。

しかも、新型コロナは「指定感染症」として指定されているのもあって、「これで、死亡した感染者は〇〇人になりました」というふうにマスコミによって広く発表される。おかげで、8月30日にはNHKほか各マスコミが「岡山県で新型コロナ感染者1人死亡、感染者死亡は県内初」というタイトルで報じたものの、その内容は、

岡山市は新型コロナウイルスの感染者1人が、8月29日に死亡したと発表しました。岡山県内で新型コロナウイルスの感染者が死亡するのは初めてです。市によりますと、死亡した人はもともと別の疾患で入院していて、死因は新型コロナウイルスではないとしています。

と、ほとんどズッコケそうな説明になっているという、おかしな状況が生まれてもいる。このケースでは、岡山市が「死因はコロナではない」ときちんと説明しているからツッコミも入れられるが、このような説明のない発表もある。それらの報道は、死者の実態とは異なった「死のウイルス」という世界観を膨らませ、じわじわと人々の心に作用して、委縮させる原因になってきたのではないだろうか。

アメリカの新型コロナウイルス、死者の内訳

9月14日現在、アメリカではおよそ19万4,000人の新型コロナ死者が発表されているのだが、アメリカ疫病対策予防管理センター(CDC)が8月までの死者についてその死因を精査したところ、「新型コロナウイルスが唯一の死因であった死者」は、全体の6%で、ほかの死者については、平均で2.6件の別の疾患(高血圧、糖尿病、腎不全など)があったという。

この発表によって、アメリカでは一部に「94%はコロナじゃなかったんだ、コロナが流行しているなんてウソだった」という極端な発想に走ってしまう人々が現れて混乱したようだが、このデータは、アメリカにおける新型コロナによる直接死は6%程度で、あとは間接死の可能性が高く(もちろん、あくまでも持病が死因の人が含まれている可能性もある)、アメリカにはもともとそれほど新型コロナに弱い体を抱えていた人が多く、そう言えばすごく肥満体の人が多いよな、という記憶も浮かんできて、日本とは様子の違う結果になったのだろうと解釈することができる。

しかも、CDCによれば、2月12日~4月24日までに確認されたアメリカにおける新型コロナ死者の平均年齢は、白人で81歳、黒人やヒスパニックで71~72歳だったという。2017年時点でのアメリカの平均寿命は78.5歳、その内、白人は78.5歳、黒人は74.8歳、ヒスパニックは81.8歳だ。

白人に関しては、新型コロナ死者の平均年齢が、平均寿命を2歳以上も上回っていて、ほぼ寿命がきていたと考えてもよい高齢者が多かったのだろうと思われるし、黒人やヒスパニックに関しては、貧困が原因で、白人層よりも食生活や健康状態を良質に保てない環境に置かれがちで、国民皆保険もないアメリカにおいては、無保険のまま、適切な治療も受けられない境遇の人が多かったのだろうと想像できる。

スウェーデンの新型コロナウイルス、死者の内訳

死因や死者の平均年齢についての分析はスウェーデンでも行われている。

スウェーデン公衆衛生庁が公表している死者統計のデータには、もともと「死因に関わらず、検査で陽性であった人数を含む」という注意書きがついているのだが、スウェーデンの医学雑誌『Lkartidningen』によると、死者の死亡診断書を精査したところ、スウェーデンの平均寿命は82.4歳だが、新型コロナ死者の半数が88歳以上だったという。

さらに、死因を調べると、新型コロナが唯一の原因だった直接死は15%で、70%以上は持病が悪化したことによる間接死、さらに残りの15%についてはもともと患っていた心臓病が主な死因だったという。

また別の研究機関による分析によれば、ICU入院者のうち7割は1つ以上の基礎疾患を抱えており、内訳は高血圧(37%)、糖尿病(25%)、新型コロナ肺炎流行以前からの慢性肺疾患(24%)、慢性呼吸器疾患(14%)、慢性心血管系疾患(11%)などと続く。

スウェーデンは、あくまでも憲法を重視して、国民の移動の自由や営業活動の自由を守り、子どもたちには教育を受けさせることを守るために、厳しい都市封鎖や自粛要請は行わず、集団免疫策をとった。そのため、「あんなゆるい対策だから5,000人も死者を出したんだ」とバッシングされてきたが、死者の年齢や、死因の分析を見ると、そう単純に叩けるものではなかったと感じられるのではないだろうか。

一方、日本では、コロナ以前には「憲法守れ!」と叫んでいた人々が大勢いたのに、突然「もっと厳しく自由を制限するべきだ」と考える人が急増した。あの「憲法守れ」ブームは一体なんだったんだろうという問いが、空回りするのであった。

死因、平均年齢、寿命を分析して冷静に考えたい

アメリカの例、スウェーデンの例を紹介してきたが、日本でも実際の死因や、死者の平均年齢、基礎疾患、そもそもの寿命などを総合的に考えて、もっと冷静に新型コロナという感染症の実態を受け入れられるようになると良いと思う。

(写真:iStock.com/Piptrekswat)

もちろん死者にも遺族にもプライバシーがあるのだから、どのような基礎疾患があったのか、正確な年齢は何歳なのかということまで個別に公表する必要はないと思う。ただ、自治体なり厚労省なりが、データを精査した上で、国民に向けてもう少し実態に即した説明をする必要はあるだろう。

「感染したら急変して死ぬかもしれない」とか「若者が動き回って感染を広げることによって、高齢者を死亡させることにつながっている」というようなイメージばかりが先行して、社会活動が抑え込まれ、経済的な死に引きずり込まれている人がすでに大勢現れている。

2020年7月末の東京都の発表によれば、6月末までに「新型コロナ陽性」で死亡した人の平均年齢は79.3歳。90歳代と80歳代では感染者の30~34%が死亡したが、50歳以下は0.5%にとどまっていたという。また、死者の70%以上は男性だったという報告もある。日本の平均寿命は、女性で87.4歳、男性で81.4歳だ。

死者のなかには100歳以上の人も報告されているし、平均寿命付近の人がかなりいるということならば、そのすべてを「新型コロナによる悲惨な犠牲者」というような印象を持って伝えたり、そのように受け取ったりするよりも、「天寿をまっとうされた方々」として受け入れるほうが自然ではないかと思うし、そのような気持ちの余裕を持てる社会にもどって欲しいと私は思っている。みなさんはいかがだろうか。

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オオカミ少女に気をつけろ!

嘘、デマ、フェイク、陰謀論、巧妙なステマに情報規制……。混乱と不自由さが増すネット界に、泉美木蘭がバンザイ突撃。右往左往しながら“ほんとうらしきもの”を探す真っ向ルポ。

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泉美木蘭

昭和52年三重県生まれ、作家、ライター。日々、愛しさと切なさと後ろめたさに苛まれている不道徳者。社交的と思わせて人見知り。日頃はシャッターをおろして新聞受けから世間を覗いている。趣味は合気道、ラテンDJ、三浦大知。

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