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移住サバイバル

2019.06.03 更新

本当のサバイバルの始まり(前編)

電気なし、水道なし、仕事はアルバイト漁師山本圭一

「個人食料自給率」をどう上げるか

夜中の作業風景

東京に戻るか、この三陸沿岸部に残るか。僕は選択を迫られた。経緯は前回お話ししたが、漁師の会社を立ち上げるということでこの町に残ったのに、会社が事実上機能しなくなってしまったからだ。仕事はない。もはやここに僕を必要とする人はいない。

しかし、その頃、僕には、ある考えが生まれていた。

 

都会で働けば、人並みにお金を稼げるかもしれない。お金があれば、今日の1食にありつける。だが、それは、自ら手に入れるのでなく、調達を誰かの手にゆだねた立場だ。食料を間接的にしか得ることができない立場というのは、非常に危ういものではないだろうか。

東日本大震災以降、僕はそのことに強い不安を感じていた。人は食べられれば死ぬことはない。でもどんなにお金があっても、買う食べ物がなければ生きていくことはできない。

この町に残って漁師をやれば、自分の食べる分くらいは自分の手で得られる。金銭的な収入が都会にいたときの半分以下になったとしても、食料を自力で手に入れられるのであれば生きていけるのではないか。僕はそれを「個人食料自給率」と言っている。

食料を自分でとるか、お金で買うか。もちろんこの町に残っても、現実的には、この両方が必要だ。だが、自ら食料を得られるポジションにいることは、生物としての根本的な生存可能性を高める。逆にお金があっても自ら食料を得られない人は、生存可能性が下がる。

では個人食料自給率を上げるためにはどうしたらいいか。

ここは漁師町だから、漁師になるのが一番手っ取り早いか? しかし実は、これがハードルが高いのだ。一般的に海で魚を獲ったり(釣りは別)、養殖を行うには、資格(漁業権)が要る。漁業権を取得するには、地元在住で、年間で所定の日数を満たす漁業従事実績が必要、かつ地元の合意がなければならない。一番難しいのは、地元の合意である。

僕は漁業権を持ってまで漁師になるつもりはなかったので、アルバイト漁師(雇われ漁師)のようなポジションが可能かを模索した。すると、過疎・高齢化した地域なので、アルバイト漁師は引く手数多(あまた)だった。そこで、たまたまご縁のあった漁師さんのところで厄介になることになった。

けれど、何の経験もない自分にバイト代を払ってもらうのは申し訳ない。そもそも震災から1年程度しか経っていない時期に、そんな余裕もないだろう。そう思って僕は、最初の1年くらいは修行の意味でお金は要りませんと言った。

同じ時期、運のいいことに、地元の知人から「復興支援員」にならないかと誘われた。一定期間、国から給料をもらいながら、被災地の復興をサポートするという制度だ。当時は、サポートの内容について、あれをやれとか、これはダメといった縛りがなかった。僕は「復興支援員」として幾ばくかの生活費をいただきながら、地域の複数の漁師の元で、アルバイト漁師として働くことになった(その後、役所の方向性が変わり、漁師は復興支援員制度の対象外になった)。

アルバイト漁師を通じて、僕は都会ではできない経験と価値観を得ることができた。これについては、別の回であらためて書きたいと思う。

ここまでお読みいただいてお分かりのように、この時点で僕は、被災地のボランティアや、復興ベンチャーの立ち上げといった社会的な活動からドロップアウトし、僕個人が生きていくことへとシフトした。ここからが移住サバイバルの本当のスタートとなる。

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関連書籍

山本ケイイチ『仕事ができる人はなぜ筋トレをするのか』

いま体を鍛えるビジネスマンが急増中。経営者や金融マン、クリエイターなど、常に成果を求められる人ほど、トレーニングに時間とお金を投資している。筋肉を鍛え維持することは、もはや英語やITにも匹敵するビジネススキルなのだ。本書では「直感力・集中力が高まる」「精神がタフになる」など、筋トレがメンタル面に大きな変化をもたらすメカニズムを解説。続けるための工夫、効果を高める食事・睡眠、ジムの活用法など、独自のノウハウも満載した画期的トレーニング論。

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移住サバイバル

東日本大震災を機に宮城県石巻市に移住した山本圭一さん。家なし、知り合いなし、文字通りゼロから始まったサバイバル生活の記録。

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山本圭一

()プロテイン工房代表。中学生時代に独学で筋トレを始め、高校で本格的な筋トレと禅に取り組む。 高校卒業後はトレーニングを極めるべく自衛隊に入隊。初級偵察教育では隊長賞を受賞。 その後フィットネス業界に転身し、パーソナルトレーナーとして独立。独自のトレーニングメソッドがビジネスマンや経営者に支持され、予約のとれないトレーナーになる。2008  5 月に『仕事ができる人はなぜ筋トレをするのか』を出版。13 万部を超えるベストセラーに(その他著書多数)。 また企業フィットネスのアドバイスやジム経営、フィットネス通販事業なども手掛ける。2011 年からは、鍛錬家を名乗り活動を開始。 トレーニングを「心を磨く」行為として捉え、体づくりと社会貢献についてセミナーなども行う(個人活動として勧善道場を主催)。同年、東日本大震災の直後から、宮城県石巻市雄勝町にて炊き出しや学習支援を行ったことをきっかけに移住。漁業をしながら新しい街づくりに奔走する。地域PRのために主催してきた「三陸・雄勝 海の幸トレイルランニング」(20112018)を業界でも有数の大会に成長させた。2018年に小ロット対応のプロテインOEMメーカー「プロテイン工房」を設立し、フィットネス消費よる社会貢献の拡充を目指す。

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