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移住サバイバル

2019.11.03 更新 ツイート

海の幸トレイルランニング(前編)

助成金頼みのイベントはやりたくなかった山本圭一

この街の存在、この街の暮らしを知ってほしい

三陸沿岸部の漁師町に移住し、漁業にたずさわり、震災後の様々な困りごとに直面する日々の中で、ひとつの想いが生まれた。

こんな場所が、こんな暮らしが、世の中にはあるんだということを多くの人に知ってもらいたい。

そこで僕が取り組んだのは、トレイルランニングという野山を走るスポーツイベントの開催だった。地元の外から人を呼び、この街を実際にその目で見てもらおうと思ったのだ。

きっかけは、50歳代の知人が、SNSでトレラン(トレイルランニング)にハマっていると投稿しているのをたまたま見たことだった。ほかにも複数の知人がトレランにのめり込んでいるのを知り、時間とお金に余裕のある層がハマっているスポーツなら、集客が容易ではないかと思ったのだ。この世代は主にフェイスブックを利用しているようなので、情報拡散もしやすいだろう。トレランのイベントにしたのは、どちらかというと、そんな打算的な理由からだった。

ローカルイベントでありがちな、「無料で味噌汁を配ります」的な方法で、ただ地元の人を集めるだけのものでは意味がない。この街のことを知らない人々に集まってもらう。それも、それなりの参加費を払ってでも遠方から出向きたいと思わせるようなイベントでなければならないと考えた。

 

思い立ったらすぐに行動したい性分なので、2012年の末に構想を練り、2013年の6月には第1回目となる大会を開催することになった。

そして、この大会を通じて様々な人と関わり合うことで、僕の移住サバイバルはひとつの視座を得ることになる。

大会名は「海の幸トレイルランニング」

前夜祭では地元でとれる海の幸をふんだんに食べてもらい、大会当日は三陸沿岸部の里山を30㎞程度走る、2日間にわたるイベント。その名も「海の幸トレイルランニング」。

2013年当時は、まだ津波被害の傷跡も大きく、震災からの復旧作業が続いていた。アクセスや駐車場、宿泊場所などの確保にはかなり難儀し、参加者やボランティアスタッフ、役場や地元の方々には、本当にご迷惑をおかけした。だが、2018年の第7回大会で幕を閉じるまで参加者は毎年増え続け、トレラン業界でも印象に残る大会になった。

トレイルランニングの雑誌「RUN+TRAIL」でも紹介された

助成金頼みの自己満足イベントへの疑問

少し話はそれるが、ローカルイベントについてはどうしても言っておきたいことがある。

いま地方では、大なり小なり、多数のイベントが開催されている。僕の住んでいる地域でも、毎月何かしらのイベントがあると言っていい。

特に被災地では、支援ボランティアが中心となって、震災そのものを集客の柱とするような復興イベントが多数開催されてきた。そうでない地域でも、道の駅や公共施設等で、地元産品をPRするようなイベントが多数開催されている。

僕はこの状況を見て、2つの疑問を持つことになる。

1つは身内だけで盛り上がっていること。2つ目は助成金、つまり税金を使って開催していること。

イベントには大きく分けて、参加対象者が全国の独立採算系のものと、地元在住者が対象の助成金頼み系のものの2種類がある。僕が主に関わってきたのは、後者の比較的小規模のものだ。このようなイベントは、関わるスタッフはもちろん、参加者も地元住人であることがほとんどで、はっきり言って、いつも同じ人たちが同じことをやっているようにしか見えない。

こう言うと、地元の人が手作りでやっているイベントに文句をつけるのか! と言われそうだ。もちろん僕は、このような、言ってみればのんびりした世界観を否定するつもりはない。

ただ僕は、広がりのない一部の人だけの自己満足みたいなイベントに、数十万円とはいえ、助成金、つまり税金が使われることに疑問を感じるのである。税金を使うところは他にもっとあるでしょ、と。

独立採算なら何をやっても文句はない。自分たちのリスクで自分たちのやりたいことをやる。それでいい。

しかし多くのローカルイベントは、助成金に頼ることが前提で、そもそも経費を自分たちで捻出できるような建付けになっていない。中には、昔からやっているから辞めるわけにはいかないというような、怠惰なイベントも多数ある。そういうものにかぎって助成金申請が簡単に通り、役所職員が休日出勤をして、惰性で続けられている。

かなり辛辣に書いてしまったが、これは事実である。ただ、移住した地で、自分らしくサバイバルしていくのが僕の人生の目的なので、僕は自分でこのような問題を解決したいと思っているわけではない。下手に蜂の巣をつついてしまえば、地方独特の謎の圧力がかかって、自分の暮らしが脅かされかねない。

おかしいと思うことがあっても、手は出さずに距離を置くことが、移住サバイバルにつながる。問題点を指摘する人が問題を起こした張本人として扱われる。日本には、そういう「波風を立てるものは悪」という文化があることを忘れてはならない。

外からお金を払って参加した人に楽しんでもらえるイベントにしたかった

赤字になったら自分でかぶると覚悟

話をトレランイベントに戻そう。

助成金頼みの惰性で続けられているようなイベントを見てきて、海の幸トレイルランニングはそういうものにはしない、あくまで独立採算で、外の人を呼ぶことに注力しようと決意した。

赤字になったら、全部自分で持とうと腹を括った。自分ですべてのことを決定でき、忖度ばかりで計画が進まないというようなこともなかったので、気分的に楽だった(もちろん山あり谷あり、難問はたくさんあったが)。

地元の役所の方からは、一人で抱え込むのは作業的にも金銭的にも大変だろうと、いつも言われていた。これはもちろん、心配で見ていられないという優しさから言ってくれたことだと思っている。責任は全部自分持ちというやり方は前時代的に思われたのだろう。だが、責任の所在が見えない企画は、関係者の責任感や当事者意識が希薄になるのでうまくいかないと、経験的に分かっていた。だから最初から最後まで一人親方で突っ走った。

移住サバイバルにおいては、すべて自己責任、すべて自己決定できる状況に身を置くことを推奨する。助成金を使っての移住(住居を提供してもらうとか、仕事を斡旋してもらうとか)は、人間関係のしがらみや軋轢でストレスが溜まるので勧めない。移住はそういったしがらみから逃れるチャンスなのに、移住先であらたなしがらみを背負ったのでは元も子もない。

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関連書籍

山本ケイイチ『仕事ができる人はなぜ筋トレをするのか』

いま体を鍛えるビジネスマンが急増中。経営者や金融マン、クリエイターなど、常に成果を求められる人ほど、トレーニングに時間とお金を投資している。筋肉を鍛え維持することは、もはや英語やITにも匹敵するビジネススキルなのだ。本書では「直感力・集中力が高まる」「精神がタフになる」など、筋トレがメンタル面に大きな変化をもたらすメカニズムを解説。続けるための工夫、効果を高める食事・睡眠、ジムの活用法など、独自のノウハウも満載した画期的トレーニング論。

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移住サバイバル

東日本大震災を機に宮城県石巻市に移住した山本圭一さん。家なし、知り合いなし、文字通りゼロから始まったサバイバル生活の記録。

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山本圭一

()プロテイン工房代表。中学生時代に独学で筋トレを始め、高校で本格的な筋トレと禅に取り組む。 高校卒業後はトレーニングを極めるべく自衛隊に入隊。初級偵察教育では隊長賞を受賞。 その後フィットネス業界に転身し、パーソナルトレーナーとして独立。独自のトレーニングメソッドがビジネスマンや経営者に支持され、予約のとれないトレーナーになる。2008  5 月に『仕事ができる人はなぜ筋トレをするのか』を出版。13 万部を超えるベストセラーに(その他著書多数)。 また企業フィットネスのアドバイスやジム経営、フィットネス通販事業なども手掛ける。2011 年からは、鍛錬家を名乗り活動を開始。 トレーニングを「心を磨く」行為として捉え、体づくりと社会貢献についてセミナーなども行う(個人活動として勧善道場を主催)。同年、東日本大震災の直後から、宮城県石巻市雄勝町にて炊き出しや学習支援を行ったことをきっかけに移住。漁業をしながら新しい街づくりに奔走する。地域PRのために主催してきた「三陸・雄勝 海の幸トレイルランニング」(20112018)を業界でも有数の大会に成長させた。2018年に小ロット対応のプロテインOEMメーカー「プロテイン工房」を設立し、フィットネス消費よる社会貢献の拡充を目指す。

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