1. Home
  2. 生き方
  3. 移住サバイバル
  4. 妻が家を出ていった?!

移住サバイバル

2019.07.12 更新

田舎で生きていく必須スキル(前編)

妻が家を出ていった?!山本圭一

2011年、アルバイト漁師になったばかりの頃

噂話は次から次へと

田舎で暮らしていると、ああ、やっぱり田舎だなぁと思うことがある。

こんなことがあった。
 
あまり話したこともない人から、「奥さん出ていったんだって?」と突然言われた。驚いた僕が、怒りを抑えながら理由を尋ねると、誰々がそう言っていたと言う。実はその数日、妻は帰省していて、家の前に妻の車がなかった(妻は車で帰ったので)。田舎では車は一人一台、多くの人があの車は誰々のだと認識している。妻の車がしばらく見えないことを不思議に思った人が、誰かに話したのだろう。そこで勝手なストーリーが、しかも悪い方向のストーリーがつくられ、広がっていった。
 
またこんなこともあった。

 

僕がある時期、急に痩せたことがあった。主催するイベントや仕事が重なり、かなりのストレスがかかったからなのだが(僕は元々ストレスがかかると痩せる体質なのだ)、それを見た人が妻に、「あんたがご飯を食べさせていないからだっちゃ」と言ったという。それ以来、妻からは「痩せないでくれ」と言われている。
 
最近ではこんなことも。

去年、それまでの漁業中心の生活を辞め、プロテインの会社を立ち上げた。今年に入ってからは犬を飼い始め、車を買い換えたりもしたので、やや身の回りが騒がしくなった。その様子を見ていた人が、「ずいぶん儲かってんだっちゃ、漁師なんかもうやらなくていいな」と言ってきた。

それまで毎日のように浜で作業をしていた姿が消えたので、僕が漁師を辞めたことは、みんな分かっていたと思う。が、それを犬を飼ったり車を買い換えたりしたことと結びつける、ましてや儲かっているからだと決めつけるのは、妬みでしかない。何より僕は今でも、ほそぼそとではあるが、漁師を続けている。僕は漁師の仕事が好きだからだ。
 
挙句の果てに、妻が少し太ったように見えたと勘違いした人が、妊娠したと言いふらした。まあそれだけならいいのだが(実はそれだってよくないが)、違いますよと説明すると、早く子供をつくれとか、なぜ子供が授からないのだとか、完全なパワハラが展開される。

なぜ田舎の人はネガティブな噂話が好きなのか

田舎ならではの、事実と異なる噂話。いったいこれは、どのように広まるのか。僕はこれを移住して以来、ずっと観察してきたのだが、概ね次のように言える。
 
[妻が家を出ていったという噂話の場合]
1 誰かが妻の車が最近見えないと言った

2 誰かが、よくあんな暮らしをしていると言った(当時、家がなく自分で建てた掘立小屋で暮らしていた)

3 1と2を聞いた誰かが話をごちゃまぜにして、妻が家を出たというネガティブな物語をつくった

4 誰かが積極的に広めた
 
事実と異なる噂話のなかでも特に好まれるのは、ネガティブな話だ。田舎ではお茶飲み話や井戸端会議的なものが日々、自然発生的に行われている。そこではこういった誤った情報がよく話題にのぼり、さらに悪い方向に尾ひれがついて、井戸端会議から井戸端会議へと広まっていく。
 
若者の田舎離れは仕事がないのが理由だと、よく言われる。だが、僕はそれだけではないと考えている。若者は、こんな田舎の風潮、鬱屈した人間関係に嫌気がさして出ていくのだ。都会から嫁いできた女性には、特に風当たりが強いようだ。例えば、ちょっとお洒落な服を着ていただけで、金遣いが荒いなどと言われる。これも妬みだ。

田舎の人はネガティブな噂話が好きだと思わされる場面に、何度も遭遇した。だが、TwitterなどのSNSを見れば、話を悪い方に解釈して面白おかしく広める人は、田舎だけに多いのでないことがわかる。人間の集団の中には、こういうことを好む嫌な人物が、そもそも一定数混入しているのかもしれない。また怖いことに、噂話を書き上げた最初の人物がなかなか特定できないのも、田舎とSNSで共通している。
 
人間という生き物の基本的な思考パターンは、妬みや不安などのネガティブなものなのかもしれない。だから人は、ネガティブな話ほど広めたがる。とくに自分の置かれた立場に不満のある人ほど、他人を妬む。「付き合うのは、いつも楽しそうにしている人や成功者。その方が物事がスムーズに進む」というのが僕の人生哲学だが、これは、僕自身の体験と人間観察からたどりついた、このような事実に基づいている。

最初はひっそり目立たず暮らすという知恵

根も葉もない噂話が、事実であるかのように独り歩きする環境の中で暮らせば、誰でも、人目を気にする暮らし方をせざるを得ない。特に都会から来た移住者は、情報源をもっぱらテレビに頼る地元住人からすれば、得体の知れない、不安をかき立てる存在だ。その存在が地元に溶け込むまで、ひっそりと目立たず暮らすのも、サバイバル的な過ごし方だと思う。
 
ちなみに田舎では、2世代前の先祖が移住してきた人であっても、「よそ者」と言われることがある。その背景には、人口が増えず、人の出入りが停滞し、新陳代謝が起きていないことがある。これは、役所や大企業など、縄張り争いに必死な人たちの世界で、よく見られる傾向でもある。彼らが気にするのは、出身大学や所属、派閥だ。日本のあちこちで見られる多様性に対する不寛容は、状況に合わせて柔軟に対応する能力を低下させ、社会の発展性を損なう一因だと僕は思っている。
 
話を戻そう。僕は32歳で移住したので、ある程度の人生経験もあり、まあそんな人たちもいるんだねと流すことができた。だが、もし10代20代の若さだったら、自分にはおそらく移住は無理だったと思う。

もちろんこれは僕の性格の問題で、若くして移住しても、うまくやっている人はちゃんといる。それに、どこに住んでも、どこで働いても、いい人はいるし、嫌な人はいる。環境のせいにばかりしていては、いつまでも安住の地は見つからない。

自分をコントロールして、表面上はうまくやり過ごす。そのための工夫や努力も、移住サバイバルにおいては必須のスキルだ。

(後編に続く)

関連キーワード

関連書籍

山本ケイイチ『仕事ができる人はなぜ筋トレをするのか』

いま体を鍛えるビジネスマンが急増中。経営者や金融マン、クリエイターなど、常に成果を求められる人ほど、トレーニングに時間とお金を投資している。筋肉を鍛え維持することは、もはや英語やITにも匹敵するビジネススキルなのだ。本書では「直感力・集中力が高まる」「精神がタフになる」など、筋トレがメンタル面に大きな変化をもたらすメカニズムを解説。続けるための工夫、効果を高める食事・睡眠、ジムの活用法など、独自のノウハウも満載した画期的トレーニング論。

{ この記事をシェアする }

移住サバイバル

東日本大震災を機に宮城県石巻市に移住した山本圭一さん。家なし、知り合いなし、文字通りゼロから始まったサバイバル生活の記録。

バックナンバー

山本圭一

()プロテイン工房代表。中学生時代に独学で筋トレを始め、高校で本格的な筋トレと禅に取り組む。 高校卒業後はトレーニングを極めるべく自衛隊に入隊。初級偵察教育では隊長賞を受賞。 その後フィットネス業界に転身し、パーソナルトレーナーとして独立。独自のトレーニングメソッドがビジネスマンや経営者に支持され、予約のとれないトレーナーになる。2008  5 月に『仕事ができる人はなぜ筋トレをするのか』を出版。13 万部を超えるベストセラーに(その他著書多数)。 また企業フィットネスのアドバイスやジム経営、フィットネス通販事業なども手掛ける。2011 年からは、鍛錬家を名乗り活動を開始。 トレーニングを「心を磨く」行為として捉え、体づくりと社会貢献についてセミナーなども行う(個人活動として勧善道場を主催)。同年、東日本大震災の直後から、宮城県石巻市雄勝町にて炊き出しや学習支援を行ったことをきっかけに移住。漁業をしながら新しい街づくりに奔走する。地域PRのために主催してきた「三陸・雄勝 海の幸トレイルランニング」(20112018)を業界でも有数の大会に成長させた。2018年に小ロット対応のプロテインOEMメーカー「プロテイン工房」を設立し、フィットネス消費よる社会貢献の拡充を目指す。

この記事を読んだ人へのおすすめ

幻冬舎plusでできること

  • 日々更新する多彩な連載が読める!

    日々更新する
    多彩な連載が読める!

  • 専用アプリなしで電子書籍が読める!

    専用アプリなしで
    電子書籍が読める!

  • おトクなポイントが貯まる・使える!

    おトクなポイントが
    貯まる・使える!

  • 会員限定イベントに参加できる!

    会員限定イベントに
    参加できる!

  • プレゼント抽選に応募できる!

    プレゼント抽選に
    応募できる!

無料!
会員登録はこちらから
無料会員特典について詳しくはこちら
PAGETOP