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オオカミ少女に気をつけろ!

2019.01.13 公開 ツイート

SNSにはまっていった私のイタい体験記(2) 泉美木蘭

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ツイッターに登録したのは、いまから10年ほど前、2009年の冬だったと思う。離婚直後で寒すぎる冬だったことと、精神的に糸の切れた凧のように浮遊した状態だったこと、そして携帯電話をiPhoneに変えたばかりで夜中じゅういじっていたことなど、ドはまりする条件が重なっていた。

(写真:iStock.com/gpointstudio)

フォロワー増やした“吉田豪商法”

最初はとりあえずサブカル界隈の著名人のつぶやきを覗いて楽しんだり、ミクシィから移ってきた数人の友達とフォローしあって、一発ギャグのようなものを投稿して遊ぶだけだったが、発展性もなく、すぐつまらなくなった。他人のツイッターを見るとやたらフォロワー数が多くてなんだか楽しそうだ。ツイッターはミクシィ以上に個人識別が薄れた仕組みになっていて、フォローもフォロワーもあくまでも「数字」としてカウント表示されている分、その数字が人によって莫大だったり僅少だったりするのが妙に目についた。

「この人には1000人以上のフォロワーがいるのに、私には5人しかいない」

フォロワーの数しか見ていないのは自分自身なのだが、なんだか淋しい気がした。そんなある時、プロインタビュアーの吉田豪さん(https://twitter.com/WORLDJAPAN)が、毎日エゴサーチ(自分の名前を検索して自分に関する書き込みをチェックすること)をして、次々とツイートを拾っては回転レシーブのように返信しているのを見た。吉田さんは「自分検索がライフワーク」と公言しており、どうやらそのエゴサーチに引っかかって返信をもらいたいという目的で、あえて「吉田豪」に関するネタを投稿して遊んでいる人々もいるようだった。

「吉田さんって何万人もフォロワーがいてすごいなあ。アイドルのツイッターもほぼ24時間態勢で隈なくチェックしているみたいだし、加えてあれだけ大量の自分検索にも目を通すなんて並の芸当じゃないわ。面白そうだから、私もエゴサーチに引っかかってみたい」

当時はまだ面識はなかったが、同じ文芸誌に連載を持っていたし、私は離婚の顛末を小説に書いてゴタゴタになったあとだったから、吉田さんほどの情報通ならきっと気がついてくれるんじゃないか。そう期待して、ためしにツイートしてみた。
 

《私のツイッターは吉田豪さんのつぶやきで埋め尽くされている》
 

ものすごくどうでもよすぎる工夫の欠片もない内容だが、思いっきり『私を見て!』というメッセージだ。すると、吉田さんから即座に返信があり、小説を読んでくれていたとのことでフォロワーになってくれた。これがやたらと嬉しく思えた。

「うおおお、吉田豪きたー! 私には6人のフォロワーしかいないけど、そのうち1人は吉田豪だから、ほぼ1000人の価値!」

そしてツイッター画面を更新して、驚いた。たちまちのうちに私のフォロワーの数が数十人単位で増えたのだ。吉田さんとのやりとりを見た人々が次々と私のツイッターのフォロワーになったのである。

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オオカミ少女に気をつけろ!

嘘、デマ、フェイク、陰謀論、巧妙なステマに情報規制……。混乱と不自由さが増すネット界に、泉美木蘭がバンザイ突撃。右往左往しながら“ほんとうらしきもの”を探す真っ向ルポ。

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泉美木蘭

昭和52年三重県生まれ、作家、ライター。日々、愛しさと切なさと後ろめたさに苛まれている不道徳者。社交的と思わせて人見知り。日頃はシャッターをおろして新聞受けから世間を覗いている。趣味は合気道、ラテンDJ、三浦大知。

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