一日一冊読んでいるという“本読み”のアルパカ内田さんが、幻冬舎の刊行作品の中から「今売りたい本」を選び、そして“POP職人”としての腕を振るって、手描きPOPも作ります。
そして、アルパカ内田さんへの「オススメ返し」として、幻冬舎営業部の人気者・コグマ部長からも、一冊ご紹介。
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元カリスマ書店員でPOP職人のブックジャーナリストが売りたい本
第26回 神津凛子『わたしを永遠に眠らせて』
こんにちは。泳いで眠ればスイミングウ。アルパカ内田です。
デビュー作『スイート・マイホーム』で、「イヤミス」を超越した「オゾミス」というキャッチコピーがつけられるほど世間を震撼させた神津凛子の新作も、また戦慄の展開に全身が凍りつく。悪夢にうなされそうなほどの騒めきに満ちているのだ。
物語の主人公はひとりの女性。夫を事故で喪った直後に流産するという悲劇のヒロインの再婚先は因習だらけの狭小な世界だった。「嫁だから」という呪文に「家」という束縛は、まさに絵に描いたような生き地獄。理不尽な支配から生み出された狂気が恐るべき惨劇を引き起こす。
彼女の大きなトラウマは我が子を守れなかったことだ。その後悔の念から近所に住む少年に救いの手を差し伸べようとする。愛されない子どもが安らげる場所を与えたい。そんな純粋な想いの壁となり、生きづらさの根源となるのは、いつだって極まる貧困と弱者への虐待。この社会が抱える切実な問題も露わになるのだ。
悪意に満ちた人間模様が繰り広げられる家を見つめる「柿の木」の視線も不気味である。「柿」の花言葉には「優しさ」や「恵み」のほかに、本書のタイトル「わたしを永遠に眠らせて」があるのも意味深だ。場面ごとに変化する「柿の木」の表情にも注目してもらいたい。
熟した柿が地面に落ちて再び芽吹くように、鬱屈した闇から抜け出すことはできるのか。悲鳴から絶叫へ。壮絶な修羅場の先に見えたラストの光景は、読者の脳裏に鋭い爪痕となっていつまでも残るだろう。
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アルパカ通信 幻冬舎部
元カリスマ書店員で、POP職人でもある、ブックジャーナリストのアルパカ内田さんが、幻冬舎の新刊の中から、「ぜひ売りたい!」作品をピックアップ。
書評とともに、自作の手描きPOPも公開。
幻冬舎営業部のコグマ部長からの「オススメ返し」もお楽しみください!
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