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アルパカ通信 幻冬舎部

2023.11.27 公開 ツイート

神津凛子『わたしを永遠に眠らせて』/脇屋友詞『厨房の哲学者』- 壮絶な人生を描いた小説とノンフィクション! アルパカ内田/コグマ部長

一日一冊読んでいるという“本読み”​​​​​​のアルパカ内田さんが、幻冬舎の刊行作品の中から「今売りたい本」を選び、そして“POP職人”としての腕を振るって、手描きPOPも作ります。

そして、アルパカ内田さんへの「オススメ返し」として、幻冬舎営業部の人気者・コグマ部長からも、一冊ご紹介。

*   *   *

元カリスマ書店員でPOP職人のブックジャーナリストが売りたい本
第26回 神津凛子『わたしを永遠に眠らせて

再婚で善財家に嫁いだ秋夜は、義母からの苛め
で心が壊れかけていた。そんな時、近隣に住む
小学生・優真と出会い、交流が始まった。優真
も家庭に問題を抱え、二人は互いの拠り所にな
る。「ただ平穏に暮らしたい」。だが願いは叶わな
い。秋夜はついに家を出るが、義祖父の訃報で
引き戻されてしまう。同じ頃、優真の親友にも悪
意が迫っていた……。終わらない絶望に、秋夜
はある疑念を持ち始め―。

こんにちは。泳いで眠ればスイミングウ。アルパカ内田です。

デビュー作『スイート・マイホーム』で、「イヤミス」を超越した「オゾミス」というキャッチコピーがつけられるほど世間を震撼させた神津凛子の新作も、また戦慄の展開に全身が凍りつく。悪夢にうなされそうなほどの騒めきに満ちているのだ。

物語の主人公はひとりの女性。夫を事故で喪った直後に流産するという悲劇のヒロインの再婚先は因習だらけの狭小な世界だった。「嫁だから」という呪文に「家」という束縛は、まさに絵に描いたような生き地獄。理不尽な支配から生み出された狂気が恐るべき惨劇を引き起こす。

彼女の大きなトラウマは我が子を守れなかったことだ。その後悔の念から近所に住む少年に救いの手を差し伸べようとする。愛されない子どもが安らげる場所を与えたい。そんな純粋な想いの壁となり、生きづらさの根源となるのは、いつだって極まる貧困と弱者への虐待。この社会が抱える切実な問題も露わになるのだ。

悪意に満ちた人間模様が繰り広げられる家を見つめる「柿の木」の視線も不気味である。「柿」の花言葉には「優しさ」や「恵み」のほかに、本書のタイトル「わたしを永遠に眠らせて」があるのも意味深だ。場面ごとに変化する「柿の木」の表情にも注目してもらいたい。

熟した柿が地面に落ちて再び芽吹くように、鬱屈した闇から抜け出すことはできるのか。悲鳴から絶叫へ。壮絶な修羅場の先に見えたラストの光景は、読者の脳裏に鋭い爪痕となっていつまでも残るだろう。

アルパカ内田さんの手描きPOP。ご自由に使っていただけます。その際、こちらにご連絡いただけると幸いです

幻冬舎営業部 コグマ部長からオススメ返し
脇屋友詞『厨房の哲学者

重要なのは、何かを選ぶこと。選ばなければ、
人生は始まらない。選ばざるを得なかった
仕事に黙々と熱狂する。運命に従え。道は
開ける。もがき苦しんだ50年の軌跡。
中国料理とは何か? その壮大な謎に答える!
中華の巨匠・脇屋シェフ、圧倒的自伝。

一方こちらは、料理人・脇屋友詞の自伝。今や日本の中華料理界のトップに君臨する脇屋だが、その料理人生活は中学卒業と同時に始まった。卒業時、進学ではなく就職したのは学校で自分だけだった。いきなり放り込まれたのは赤坂の名店「山王飯店」。当時は今よりもさらに厳しい徒弟制度があり、先輩が作って残った料理をこっそり食べて味を舌に覚えさせた。

最初の仕事は中華鍋を洗うこと。来る日も来る日も洗うだけ。高校に進んだ友達は遊んだり、恋愛を楽しんだりしている。当然、辞めようと何度も思った。やがて先輩の中国人料理人に

認められ、少しずつ仕事を任されるように。それでもまだ迷うときもあったが、ある日こんな言葉と出会う。

「この道より我を生かす道なし。この道を歩く」

本作を読むと、脇屋は必ずしも天賦の才に恵まれたシェフではないことがわかる。強いて言うなら、努力を続けられる天才だ。もちろん成功ばかりのシェフ人生ではない。手にした栄光の陰にはもっと多くの挫折があった。でも、脇屋はひたすら地道な努力を続ける。その姿こそが孤高の哲学者のようである。

本作は料理人のみに通じるノンフィクションではない。夢を見るだけなら誰でもできる。大切なのは努力を続けられるかどうかだ。脇屋は50年、そんな努力を続けている。

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アルパカ通信 幻冬舎部

元カリスマ書店員で、POP職人でもある、ブックジャーナリストのアルパカ内田さんが、幻冬舎の新刊の中から、「ぜひ売りたい!」作品をピックアップ。
書評とともに、自作の手描きPOPも公開。

幻冬舎営業部のコグマ部長からの「オススメ返し」もお楽しみください!

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アルパカ内田 ブックジャーナリスト

内田剛(うちだたけし)。ブックジャーナリスト。約30年の書店勤務を経て2020年2月よりフリーランスに。NPO法人本屋大賞実行委員理事で創立メンバーのひとり。文芸書をメインに各種媒体でのレビュー、学校や図書館でのPOP講習会などを行なっている。これまでに作成したPOPは5000枚以上で著書に『POP王の本!』あり。無類のアルパカ好き。
Twitter @office_alpaka

コグマ部長

太田和美(おおたかずみ)。幻冬舎営業本部で販売促進を担当。本はミステリからノンフィクションまでノンジャンルで読みまくる。アルパカ内田(内田剛)さんとは同学年。巨人ファン。
Twitter @kogumabuchou

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