1. Home
  2. 読書
  3. アルパカ通信 幻冬舎部
  4. 八重野統摩『同じ星の下に』/梶よう子『雨...

アルパカ通信 幻冬舎部

2023.10.27 公開 ツイート

八重野統摩『同じ星の下に』/梶よう子『雨露』- 涙なしでは読めない小説2作! アルパカ内田/コグマ部長

一日一冊読んでいるという“本読み”​​​​​​のアルパカ内田さんが、幻冬舎の刊行作品の中から「今売りたい本」を選び、そして“POP職人”としての腕を振るって、手描きPOPも作ります。

そして、アルパカ内田さんへの「オススメ返し」として、幻冬舎営業部の人気者・コグマ部長からも、一冊ご紹介。

*   *   *

元カリスマ書店員でPOP職人のブックジャーナリストが売りたい本
第25回 八重野統摩『同じ星の下に

中学2年の少女・沙耶は、両親が明日の夜、
海で自分の殺害を計画していることを知ってい
た。ところが下校途中、「児童相談所の職員」を
名乗る渡辺の車に乗せられ、そのまま誘拐・監
禁される。監禁下のやりとりで男にやさしさを感
じ、ふと彼女は、じつは男が「本当の父親」では
ないかと疑い始める。一方、男は身代金2000万
円の営利誘拐であるとの犯行声明を北海道警
察に送り、粛々と計画を進める。渡辺とは一体、
誰で、何が目的なのか?

こんにちは。読書の秋、欲しいものは干し芋のアルパカ内田です。

世の中には「泣ける本」があふれている。泣くことはデトックス効果もあって読者ニーズを捉えているのだが、個人的には読書の前から効能を強要されているようで、気分が落ち着かなくなる。しかし、本書は正真正銘の「感涙本」だ。これほどまでに骨の髄まで震わせる物語は稀有だろう。

舞台は凍てつく寒さの真冬の北海道。主人公は14歳の少女だ。学校からも両親からも見放され孤独な日々を送っていたが、ある時、「児童相談所の職員」を名乗る男に誘拐され、とある一軒家に監禁されてしまう。ところが、その場所は彼女が待ち望んでいた楽園だった。温かな食事、清潔な衣服、見守ってくれる愛情、自宅にはないものが、ここにはすべて揃っていたのだ。

ストーリーは淡々と進み、人間味あふれる感動がこみ上げてくる。もちろん犯罪の物語なのだから、この先に修羅場が待ち受けていることは想像できる。覚悟を決めながら読み進めていくうちに、奇妙な繋がりであっても穏やかに過ごす二人の時間が、少しでも長く続きますようにと願わずにはいられなくなる。

誘拐犯と人質が徐々に信頼関係を深めていく話は珍しくないが、貧困家庭の少女を誘拐した犯人の動機が実に腑に落ちる。クライマックスで事件の真相が明らかにされてからは慟哭必至。

児童虐待の闇を乗り越え、ラストから感じる清らかな光は、祈りの境地に到達している。現代社会を象徴し、読む者の記憶に深く刻まれる必読の一冊だ。

アルパカ内田さんの手描きPOP。ご自由に使っていただけます。その際、こちらにご連絡いただけると幸いです

幻冬舎営業部 コグマ部長からオススメ返し
梶よう子『雨露

260年以上にわたる長き泰平の世で、「江
戸」が初めて戦場になった日。彰義隊は強大
なる新政府軍に挑み、儚く散った。なぜ、名
もなき彼らは、無謀な戦いの場に身を投じ
たのか。若き彰義隊隊士の葛藤と非業の運
命を描く、号泣必至の傑作!

一方、こちらは号泣必至の傑作歴史小説。

1868(慶応四)年1月、鳥羽伏見の戦いで徳川幕府軍に勝利した新政府軍は、その勢いに乗ったまま東進。江戸が戦禍に巻き込まれるのは時間の問題となった。川越藩の右筆を務める小山家の次男・勝美は、兄に命じられるまま彰義隊に加わる。彰義隊とは強大な新政府軍に対抗すべく有志によって作られた組織。しかし、新政府軍に比較すると武器の性能も劣り、多くの町人が加わった兵士では練度も低い。上野・寛永寺に拠点を構えた彰義隊に、5月、ついに新政府軍が迫る。幕府開闢以来、初めて江戸が戦場になる……。

新しい国造りを目指す新政府と、変化を望まない旧幕府の戦い。本作に出合うまでは、幕末史をそんな単純な図式でしか捉えていなかった。だが、戦いに加わった多くの若者たちには守るものと貫くべき信念があったのだ。

無謀と言われながらも、己の信じる道を歩んだ勝美たちの無垢な物語。勇敢ではあったが、儚く散ってゆくさまは決して涙なしでは読めない。

西欧の脅威にさらされつつ、大政奉還、新政府樹立、江戸城開城など大きな出来事が立て続けに起きた。まさに日本中が胎動していた時代に、江戸を、人々を守りぬこうとして命を賭した男たち。雨露に消えていった名もなき武士(もののふ)たちへの鎮魂歌である。

{ この記事をシェアする }

アルパカ通信 幻冬舎部

元カリスマ書店員で、POP職人でもある、ブックジャーナリストのアルパカ内田さんが、幻冬舎の新刊の中から、「ぜひ売りたい!」作品をピックアップ。
書評とともに、自作の手描きPOPも公開。

幻冬舎営業部のコグマ部長からの「オススメ返し」もお楽しみください!

バックナンバー

アルパカ内田 ブックジャーナリスト

内田剛(うちだたけし)。ブックジャーナリスト。約30年の書店勤務を経て2020年2月よりフリーランスに。NPO法人本屋大賞実行委員理事で創立メンバーのひとり。文芸書をメインに各種媒体でのレビュー、学校や図書館でのPOP講習会などを行なっている。これまでに作成したPOPは5000枚以上で著書に『POP王の本!』あり。無類のアルパカ好き。
Twitter @office_alpaka

コグマ部長

太田和美(おおたかずみ)。幻冬舎営業本部で販売促進を担当。本はミステリからノンフィクションまでノンジャンルで読みまくる。アルパカ内田(内田剛)さんとは同学年。巨人ファン。
Twitter @kogumabuchou

この記事を読んだ人へのおすすめ

幻冬舎plusでできること

  • 日々更新する多彩な連載が読める!

    日々更新する
    多彩な連載が読める!

  • 専用アプリなしで電子書籍が読める!

    専用アプリなしで
    電子書籍が読める!

  • おトクなポイントが貯まる・使える!

    おトクなポイントが
    貯まる・使える!

  • 会員限定イベントに参加できる!

    会員限定イベントに
    参加できる!

  • プレゼント抽選に応募できる!

    プレゼント抽選に
    応募できる!

無料!
会員登録はこちらから
無料会員特典について詳しくはこちら
PAGETOP