一日一冊読んでいるという“本読み”のアルパカ内田さんが、幻冬舎の刊行作品の中から「今売りたい本」を選び、そして“POP職人”としての腕を振るって、手描きPOPも作ります。
そして、アルパカ内田さんへの「オススメ返し」として、幻冬舎営業部の人気者・コグマ部長からも、一冊ご紹介。
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元カリスマ書店員でPOP職人のブックジャーナリストが売りたい本
第25回 八重野統摩『同じ星の下に』
こんにちは。読書の秋、欲しいものは干し芋のアルパカ内田です。
世の中には「泣ける本」があふれている。泣くことはデトックス効果もあって読者ニーズを捉えているのだが、個人的には読書の前から効能を強要されているようで、気分が落ち着かなくなる。しかし、本書は正真正銘の「感涙本」だ。これほどまでに骨の髄まで震わせる物語は稀有だろう。
舞台は凍てつく寒さの真冬の北海道。主人公は14歳の少女だ。学校からも両親からも見放され孤独な日々を送っていたが、ある時、「児童相談所の職員」を名乗る男に誘拐され、とある一軒家に監禁されてしまう。ところが、その場所は彼女が待ち望んでいた楽園だった。温かな食事、清潔な衣服、見守ってくれる愛情、自宅にはないものが、ここにはすべて揃っていたのだ。
ストーリーは淡々と進み、人間味あふれる感動がこみ上げてくる。もちろん犯罪の物語なのだから、この先に修羅場が待ち受けていることは想像できる。覚悟を決めながら読み進めていくうちに、奇妙な繋がりであっても穏やかに過ごす二人の時間が、少しでも長く続きますようにと願わずにはいられなくなる。
誘拐犯と人質が徐々に信頼関係を深めていく話は珍しくないが、貧困家庭の少女を誘拐した犯人の動機が実に腑に落ちる。クライマックスで事件の真相が明らかにされてからは慟哭必至。
児童虐待の闇を乗り越え、ラストから感じる清らかな光は、祈りの境地に到達している。現代社会を象徴し、読む者の記憶に深く刻まれる必読の一冊だ。
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アルパカ通信 幻冬舎部
元カリスマ書店員で、POP職人でもある、ブックジャーナリストのアルパカ内田さんが、幻冬舎の新刊の中から、「ぜひ売りたい!」作品をピックアップ。
書評とともに、自作の手描きPOPも公開。
幻冬舎営業部のコグマ部長からの「オススメ返し」もお楽しみください!
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