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アルパカ通信 幻冬舎部

2022.07.28 公開 ツイート

村山由佳『星屑』/反田恭平『終止符のない人生』―華やかなステージの表も裏も描いた小説&ノンフィクション アルパカ内田/コグマ部長

一日一冊読んでいるという”本読み”​​​​​​のアルパカ内田さんが、幻冬舎の刊行作品の中から「今売りたい本」を選び、そして“POP職人”としての腕を振るって、手描きPOPも作ります。

そして、アルパカ内田さんへの「オススメ返し」として、幻冬舎営業部の人気者・コグマ部長からも、一冊ご紹介。

*   *   *

元カリスマ書店員でPOP職人のブックジャーナリストが売りたい本
第10回 村山由佳『星屑

田舎者のミチルと、サラブレッドの真由。過酷な芸能界で、少女たちをスターダムに押し上げようとする女性マネージャーの桐絵。妨害、挫折、出生の秘密、スキャンダル……その果てに少女たちと二人を取り巻く大人たちが見るものは─。息もつかせぬ、ド・エンタメのスター誕生物語。

こんにちは。アイドルよりも米ドル。アルパカ内田です。

時代は昭和、1970年代。高度経済成長の名残がまだ強く残っていた頃。当時のジャパニーズ・ドリームの高揚感を描きだした、濃密な人間ドラマが『星屑』である。スポットライトを浴びたステージ上の光の洪水。光が眩しいほど、闇はどこまでも深くなる。まさに眩暈がしそうな過酷な世界だ。

主役は正反対の個性を持った二人の少女。嫉妬と羨望が入り混じり、天国と地獄の風景が同居する。栄光も挫折も紙一重。食うか食われるか。物語の中で繰り広げられるのは火花が飛び散るむき出しの感情のぶつかり合いだ。スターになるということは、頂点を目指すために手段を選ばぬ仁義なき闘いをするということなのである。

アイドルは虚像だ。見るものを魅了する姿は、秘密という名のヴェールに隠されている。本書の最大の魅力は激しい葛藤とその素顔が赤裸々にさらけ出されるところだろう。努力と才能だけではスターは輝かない。時の運や人々の縁、スキャンダルまでも己の実力に昇華させるパワーが必要なのだ。

『星屑』は選ばれし者たちの成長譚であり、数多の光源から原石を見出し、我が子のごとく育てあげた職業人の矜持の物語でもある。決して妥協を許さない本物の魂(ソウル)が感じられる。

希望の光は天から降り注ぎ、絶望から這い上がる情熱が地から湧き出す。身震いが止まらない感動とともに、強烈な不協和音の出会いから、いつしか唯一無二の旋律を奏でるまでの展開の妙、そして読後感の良さも印象深い。

ぜひ世代を超えて読んでもらいたい。

内田さんの手描きPOP!ご活用ください!

幻冬舎営業部 コグマ部長からオススメ返し
反田恭平『終止符のない人生

若き天才ピアニスト・反田恭平。音楽のみならずスポーツやビジネス等の多角的視点を持つ希代の音楽家はどのようにして生まれたのか? 決して順風満帆ではなかった、その半生を描く自叙伝的エッセイ。

一方、こちらは世界的な日本人ピアニストによる、自叙伝であり未来への決意表明だ。

反田恭平は昨年、27歳で「ショパン国際ピアノコンクール」で2位の栄光に輝き、その名を国内外に轟かせた。

この若き天才の半生がとてつもなく面白い。4歳でピアノ教室の先生に「とんでもなく耳がいい」と言われ、12歳で早くもクラシック界で生きると決意した。その道のりはエリートコースだったというわけではない。サラリーマン家庭で育ち、ロシア、ポーランド(ショパンの母国)での音楽留学の費用は、リサイタルやコンクールで稼がざるをえなかった。特にロシアでは「命の危険」にさらされるようなこともあった。そしてどんな小さな演奏会でも手を抜かない。すべてをチャンスと考えるからだ。

彼に才能があるとすれば、それは音楽そのものの才だけではなく、諦めない気持ち、挑戦しようとする強い思いを持ち続けられることだ。

世界を目指すと決めた時から、人生の岐路に立つたびに面倒や困難が付きまとう道を選択してきた。安定をよしとしない、前例や周囲の雑音に惑わされない、自身の信念に誠実に生きる。

そのちょんまげ風の髪型と相まって、まさにサムライピアニストだ。

若きサムライは、ピアノを武器に世界で戦う。読者はその生き方に勇気をもらい、目の前の困難に立ち向かえるはずだ。その時、脳内には反田のピアノが応援曲として鳴り響く。彼が人生のすべてをかけてかき鳴らすその力強い音が読者に届くはずだ。

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アルパカ通信 幻冬舎部

元カリスマ書店員で、POP職人でもある、ブックジャーナリストのアルパカ内田さんが、幻冬舎の新刊の中から、「ぜひ売りたい!」作品をピックアップ。
書評とともに、自作の手描きPOPも公開。

幻冬舎営業部のコグマ部長からの「オススメ返し」もお楽しみください!

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アルパカ内田 ブックジャーナリスト

内田剛(うちだたけし)。ブックジャーナリスト。約30年の書店勤務を経て2020年2月よりフリーランスに。NPO法人本屋大賞実行委員理事で創立メンバーのひとり。文芸書をメインに各種媒体でのレビュー、学校や図書館でのPOP講習会などを行なっている。これまでに作成したPOPは5000枚以上で著書に『POP王の本!』あり。無類のアルパカ好き。
Twitter @office_alpaka

コグマ部長

太田和美(おおたかずみ)。幻冬舎営業本部で販売促進を担当。本はミステリからノンフィクションまでノンジャンルで読みまくる。アルパカ内田(内田剛)さんとは同学年。巨人ファン。
Twitter @kogumabuchou

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