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ハイスペック女子のため息 season2

2021.11.13 更新 ツイート

なぜリベラルに熱狂できない 山口真由

夫婦別姓――私はそこに昭和の匂いを嗅ぐ。

2021年の衆議院選挙では、新型コロナ対策、経済政策や子育て支援と並んで多様性も論点となった。そこで各党が第一に掲げるのは「夫婦別姓」。続いて「性的マイノリティ」への差別解消である。

もちろん、夫婦別姓という論点が悪いのではない。むしろ、1980年代から続く論争を現代まで積み残していることが問題なのだ。とはいえ、私を含めて夫婦別姓という主張に熱狂する30代は少ない。大学の教室で夫婦別姓を語っても、白けたムードが漂うだけだ。

 

大学生の中のよくできる子たちはレポートに「私はシスでヘテロですが」と書いてくる。“シス”というのは、例えば、身体的に女性で生まれて、それを変更することなく、いま社会的にも女性と認知されている者を指す。“ヘテロ”というのは、例えば、女性が異性である男性を恋愛対象としていることだ。

そんなん、あえていうことじゃないじゃんと思われるかもしれないが、“マジョリティ”に対する“マイノリティ”だけを、“ゲイ”だの“トランスジェンダー”だのと区別するのは、多様性の時代にふさわしくない、“マジョリティ”も“マイノリティ”もない、私もまさしく多様の中の一様であるという考えを表明するために、この大学生は自分を「シスでヘテロ」とあえて自らの性自認・性指向をカミングアウトしているのだ。

なにをいいたいのかというと、そういう子たちに、LGBTという性的“マイノリティ”に対する差別解消法といっても、まして「夫婦別姓」といったところで、それ自体が重要であることは変わりないが、自分たちの理解のその先を、来るべき未来を見せてもらってるという感じがしないのだ。

彼らがアップデートされる速度と、政治がバージョンアップする速さとの間のギャップが半端ない。で、まぁ、正直、(ふる)いから、んでもってちょっとダサいから、大学生の多くは政治には熱狂しないのだと、私は理解している。

(写真:iStock.com/FotoDuets)

そして、それこそが、今回上がったとされる若い世代の投票率がそれより上の世代に比べてそれでも低く、さらに若い世代のリベラル政党支持が少ない理由ではないかと、私は思っている。若者が保守的になったんじゃない。リベラルがモデルチェンジできてないんじゃないか。

衆議院議員選挙の翌日、CBCの『ゴゴスマ』という番組で、解説員の石塚元章さんが「立憲民主党の枝野幸男さんの演説スタイルとかって、戦後の市民運動の伝統なんでしょうけど、若い世代からするとちょっと古いみたいですよ」と仰った。

その言葉で、私は腑に落ちた。

「モリカケ問題」と口角から泡を飛ばし、「改憲にNO!」とこぶしを突き上げ、野党合同ヒアリングで官僚を打ちまくる。私たちはそんなものが見たいんじゃない。

もっと等身大の違和感を代弁してほしいのだ。

正直にいえば、私にとっての大問題は、安保じゃない。憲法じゃない。そういう議論は、「これは興味持って然るべき、っていうか興味ない人は勉強不足」みたいな理性的な義務感に訴えるだけで、私の感性はわきたちゃしない。

ただね、私はこの世の中に息苦しさがないではない。30代で未婚の女性は、みな一様に「結婚したくてもできなかったのだ」と決めつけられるのは嫌だ。いくら「私はいま幸せです」と説明しても、「はいはいはい」と笑いに持ってかれるのは嫌だ。めんどくさくなって、とりあえず自虐しとけばいっかと、安易に自分の生き方を貶める私自身が一番嫌。

誰とともに生き、何を人生の糧とし、どう老いていくか――この点に関して人それぞれの考えがあると思う。それなのに、ちゃんと30代までに結婚して、ちゃんと30代のうちに子どもを産んで……。ちゃんと、ちゃんとのマジョリティ的な生き方からはぐれてしまった者に、「結婚しません」と真正面から自分を肯定することなく、搦手(からめて)から自分を笑い飛ばすことを求める――そういう無邪気な押しつけに、私は心底 辟易(へきえき)している。

この私の等身大の違和感を“多様性”に乗っけて、リアルに代弁してくれる人がいればいいと思う。

(写真:iStock.com/AlexLinch)

そして、それは「LGBTは生産性がない」なんていっちゃう人を、比例中国ブロックの上位にして、今回もしれっと通してしまう自民党には難しいのだろうと思うのだ。自民党の女性議員をひとくくりにするわけには、もちろんいかない。だが、思い浮かぶ顔の多くが、まぁ、余計なお世話だろうけど、それなりに不自由な生き方をしているようにも見える。

なんていうかさ、杉田水脈さんとか高市早苗さんとか、いまどき権力のある男性が自分の口からはなかなか言いにくくなった本音を、自分より年も若く立場の低い女性にいわせてる感があるように思うんだよね。

女性側もそういう重鎮の後ろ盾で党内の地位を上げてるわけだから、持ちつ持たれつではある。だが、正直、ああいう保守のマドンナみたいなのはちょっと昭和臭くて、あんまり乗れない。

だからって、野党が立ててくる女性候補にも、あんまり共感できる人を見つけられていないのだ。テレビ局の記者とかアナウンサーとか、なんかビジュアルきれいめで、ボブっぽい髪型多めで、けっこうしっかりメイクしてる人が多いんだよね。なんで、あの女性候補の数々に感情移入しにくいんだろう?

そう尋ねた私に、こないだ20代の女性が「男性セレクションの女性に共感できない問題」と言語化してくれた。

そっか! 確かに!

 

1960年代の学生運動の中から、第二波フェミニズムは生まれた。アメリカで日本で同時多発的に起こった闘争は、決して男女平等ではなかったのだ。勇敢な実力行使や討論での意見表明は男性の役割だった。彼らにひたすらに食べ物を提供し続ける母親役か、または彼らのリーダー格に選ばれて妻やパートナーになる恋人役として一目置かれるか、または、「今夜、俺に公民権をくれ」と申し込まれてベッドをともにしてあげる娼婦役――女として革命を生きるなら、このどれかに身を投じるしかなかったのだ。

この「男性の眼差し」が内在化された学生運動に抗議した女たちがフェミニズムの盛り上がりを作り出した。

与党の出す「保守のマドンナ」や、野党の推す「革命の聖女」――そのいずれにも自らを投影できない私は思う。この男性的な眼差しが露骨に内在化された政治の分野にも、等身大で私を代表してくれる人がじゃんじゃん出てくればいいのになと。

もしかしたらまだ見つけていないだけかもしれない。この原稿の担当編集の相馬さんが共産党の田村智子氏の演説動画の一部を転送してくれた。

「私たちは国家に家族を押しつけられたくない」と語る彼女には、自分の言葉を確信している人特有の強さがある。もしかしたらこれは有権者の側に突きつけられた課題かもしれない。

もっと関心を持たなくてはならない。マスメディアが拾わない演説も見逃してはならない。探さなきゃ。等身大のまま、私を熱狂させてくれる次の世代のリーダーを。

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山口真由『高学歴エリート女はダメですか』

人気連載「ハイスペック女子のため息」(season1)が8/26に書籍化!! 東大法卒→財務省→弁護士→留学→准教授で37歳、未婚。偏差値の高い女は幸せになれないのか!? 等身大の女子たちや、女子アナ、芸能人まで下世話に観察、おおいに自省しながらハイスペ女子の幸せを模索する。

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コメント

数理モデル構築を目指す院生  @mub1yo 山口真由さんの新しい記事です。セクハラ恐れずに冗談を言うと、私は彼女に個人講義の依頼をする際は純粋に学問に徹すると誓います。 https://t.co/kbT72JR750 この記事を読んで、女性っていうのはそんな… https://t.co/4PqjM4ec0t 1日前 replyretweetfavorite

独り言a.k.a発達障害を自称する可愛そうな人間\(^o^)/  https://t.co/6K3gkzrsya 【正論】山口真由氏、「夫婦別姓を認めろというリベラルも認めない保守も、なんか“古い”んですよねぇ…笑」 「1 https://t.co/YeMmIO3rGA 」 「201独り言 要… https://t.co/WJvggK4RjR 8日前 replyretweetfavorite

ハイスペック女子のため息 season2

ハイスペ女子は自分で自分が面倒に思うこともある。社会に邪険に扱われ、「なぬ?」と思うこともけっこうある。今日もぶつかる壁や疑問を吐露する社会派エッセイ。

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山口真由

1983年、札幌市生まれ。東京大学法学部卒。財務省、法律事務所勤務を経て、ハーバード大学ロースクールに留学。2017年にニューヨーク州弁護士登録。帰国後、東京大学大学院法学政治学研究科博士課程に入学し、2020年に修了。博士(法学)。現在は信州大学特任教授。「超」勉強力』(プレジデント社、共著)いいエリート、わるいエリート(新潮社)、『高学歴エリート女はダメですか』(幻冬舎)など著書多数。最新刊は『「ふつうの家族」にさようなら』(KADOKAWA)。 
山口真由オフィシャルTwitter

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