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極北でアートを学ぶ

2021.11.08 更新 ツイート

オーロラの下で口笛を吹かないで 吉村静

先週くらいから寒さがぐっと増し、とある日の最高気温を見ると最高気温がマイナス17度、最低気温がマイナス19度となっている。毎日氷点下の日々が続いているから気温に関する感覚が変わってきて、マイナス5度とかだとちょっとあったかく感じるほど。むしろ自然の劇的な変化を見るのが楽しみで、寒くなるのが嬉しくもある。

朝焼けもきれい。写真は朝の9時40分頃。
 
寒いんだけど寒くない。雪が好きだからかな?

11月4日の深夜0時。今日は観れる気がする、と言う根拠のない確信があった。パジャマ姿のままだと寒いから何枚かレイヤーを重ね着して外に出る。空を見上げた瞬間声が出た。「わぁ!!!」頭上に紫色のオーロラが大きくぐるぐる渦巻いていた。これがオーロラなんだ! すごい!

はじめに紫色が目に飛び込んできた。

ある地元民がオーロラのことを「空が踊るんだよ」って言う風に表現していて、その言葉を思い出す。その言葉のとおり、空が、光が踊っていた。あまりの壮大さと衝撃により寒さも忘れて30分ほどオーロラに見入ってしまった。

家の前で空を見上げるパートナー、ルイス。

オーロラ鑑賞っていうと、光のないところまで出向いて行って、むっちゃ分厚い防寒着きて夜中まで待つ、みたいなイメージがあったけど、ここドーソンは町のどこからでも観ることができる。家の窓からも見えて、その光の持つエネルギーに驚かされる。写真にあるように電信柱があってオーロラがあるのが不思議な光景に見えるのはそのせいかもしれない。

普段は真っ暗な空がこんな色に輝くとは!

みどり色、紫、そして白のオーロラが形を変えながら出現する。カーテンみたいにひらひらしているのもあれば、蒸気機関車の蒸汽みたいに力強く出ては消えていくのもある。光の動くスピードが早くて、その動きを観てると、その光に吸い込まれてしまいそうだった。人口2000人の小さな極北の町は電灯もあまりないし、大自然の真ん中で空気が澄んでるから、町中で観るのが可能なんだろうなとおもう。

現在住んでいる家。夜は静かでよく眠れる。

オーロラを見ながらアート学校のクラスメイトが描いた絵が浮かんできた。その中には「オーロラの下で口笛を吹かないように」って書いてある。彼女は先住民Carcross Tagishファーストネーションで、母はLittle Salmonファーストネーションだと教えてくれた。「オーロラの下で口笛を吹くと、オーロラのスピリットにさらわれていってしまう」と言う言い伝えなのだそう。彼女の絵の優しいタッチのせいか、彼女の絵を見てると私までお母さんから優しく忠告を受けているような気持ちになる。翌朝、彼女に生まれて初めてオーロラを見たことを伝えて、「口笛は吹かなかったよ」と言うと、嬉しそうに微笑んでいた。

クラスメイト、Roxy(ロキシー)の作品。

でもなんで「今日は絶対観れる!」って思ったんだろう? そういえば前にも野生のクジラに会える気がする、って思って本当に出会えたり、同じ理由で別の日にシャチも見たし、はたまた自分の後ろに虹が出てるって分かったり、「私スピリチュアルな力があったりして?」とか一瞬考えたけど、それってただのファンタジーかな? とも思う。でも思い込みでも信じることで、それを見るために外に出る、空を見上げてみるっていう行動に繋がってて、そこが実は運命の別れ道なのかもなぁ? とか考えた。

魔法や~。

「今日も見れないや」って思い込んで寝ることもできたけど、信じることでそのチャンスに近づくんやなぁって。もちろん同じくらい外れることもあるんだろうけども。でもオーロラに関しては天気予報のオーロラバージョン「オーロラ予報」ってのがあってそれをたまにチェックしていたから「今日はいける!」と思っただけかも? まぁ自分が信じたいように信じればいいのかな?

次の日の朝。オーロラもいいけど朝の色もいい。

そんなこんなの初めてのオーロラ。これから日照時間がどんどん短くなって暗~い日々が続くけれど、オーロラがそばにあるなら大丈夫って思えるから不思議だ。

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極北でアートを学ぶ

カナダへ移住して4年半。バンクーバーを飛び出し、私はドーソン・シティへ引っ越した。目的は、ビジュアル・アートを学ぶため。氷点下40度に達し、オーロラの見える極北の地で、どんな人と、どんな風景と出会えるだろう。ありのままの生き方を探す、ゆったりエッセイ。
[バナーデザイン:宗幸(UMMM)]

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吉村静

1987年、新潟県長岡市生まれのランナー。走歴25年。ランニング雑誌の出版社に勤めた後にカナダへ渡り、トレイルランニングやハイキング、日々のお散歩に没頭する。カナダで2年過ごしたのちに南米やニュージーランド、インドなど様々な国で写真を撮りながら旅をする。2019年からカナダの永住権を取得し、現在はバンクーバーで暮らす。トレイルランニング用品専門店Run Boys! Run girls!のウェブにてアウトドアスポーツのある生活を綴る「Tip of the iceberg Newspaper」という名のブログも更新中。バンクーバーのヌーディストビーチで開催される裸のランニング大会Bare Buns Run2014年大会女子の部優勝。

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