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極北でアートを学ぶ

2022.04.23 更新 ツイート

カナダに来てから5年、やっと自分の根っこが生えてきた 吉村静

先日、今まで通っていたビジュアルアートの学校の卒業式があった。昨年9月からの8ヶ月間、大変な時もあったけれど、多くのことを学び体験できて、ドーソンまで来てよかったなぁと心から思っている。

卒業制作展のポスター。みんなそれぞれ好きな格好で写真を撮った。
 

このプログラムは基礎アートコースで、ドローイングや水彩画、イラストなどの2D、木工、型、テキスタイルなどの3D、最後に写真、映像、パフォーマンスの4Dの全てを学ぶ。私はちょくちょく興味のあることが変わるから、こうしていろんな素材に触れることができるのは自分に合っていたし、いろんな発見があった。写真をもっと学びたいって思って来たけれど、卒業の最後の制作に選んだのは木工だったし、一つの分野に絞らずに、その時々で表現方法を変えていけばいいのか! と思えるようになったのも大きかった。

クラスのみんな。ほんまに優しい人たちばかりだった。

他にも英語のクラスもあり、アーティストステイトメントの書き方や、Zineを作ってみたりと、なんで自分がこの作品を作っているのかを言葉で表現する方法も教わった。英語は自分にとって第二言語だし、やっぱり日本での感覚を英語で表現するって難しい。でも先生や周りのサポートのおかげで、言葉の表現の幅もだいぶ広がったように思う。

町の小さなギャラリー、ODD Galleryにて4Dの作品が展示されている。

また技術的なことだけじゃなくて、「どううまく助成金や補助金を活用しながら活動していくか」っていうような突っ込んだ話をしてくれたアーティストもいたりして面白かった。今現在卒業制作展が学校と町のギャラリーの2か所で開催中で、多くの地元民がこれから来てくれるといいなと思う。

私の3Dの作品。雪が一つ一つにのっていて、それが溶けていくのを見ることができるジュエリー作品。

卒業式の日はプログラムディレクターやその他の講師たちがまさかのコロナで出席できなくなり、突如私ともう一人の友人に司会役が回ってきた。生徒数は18人と小さな学校だし、先生たちが仕切るんじゃなくて生徒たちが好きなようにするこういう卒業式もありやなぁ、と終わってから思う。卒業生の両親以外にも友人や地元民も足を運んでいて、めっちゃアットホームな会になった。

友人と学校の前で記念撮影。

この卒業式で友人に短いスピーチを頼まれ、自分を木と木の枝に例えて今の思いを言葉にした。

「自分のルーツがやっとカナダに根差し始めてるのを感じます。ドーソンにやって来てから、自分がものを作るのが好きなことに改めて気づき、それを支え、応援してくれる人たち、一緒にそれを楽しんでくれる友人たちができたことで、勇気がまた湧いてきました。バンクーバーに住んでいた時の自分は、木の枝のようで根っこがなく、ただ地面に刺さっているような感覚でした。生活を安定させるのに一杯一杯で、日本に帰りたかった。でも今、自分は木になり、産毛くらいのまだ弱々しいものではあるけれど、根っこが生え出しているように感じられることが嬉しいです」

クラスメイトJasminaのパフォーマンス。学校から町のラジオ局までをダンスしながらみんなで歩く。

カナダに来てから5年間、本当にいろんなことがあったけれど、ドーソンに来てから間違いなく、身体も心も好きなものに触れている感覚がある。そのエネルギーは絶大で、「カナダでも生きていけそうだ、大丈夫」と初めて、やっと思えるようになった。この前町を離れるクラスメイトが「ドーソンに来てから初めて友達、と思えた人が静だったよ」と言ってくれたり、ある講師の先生も「静がここにいてくれて本当に良かった」と声をかけてくれ、涙がちょちょぎれた。

クラスメイトCocoによるヘアカットパフォーマンス作品。Cocoが作ったZineを読みながら髪を切ってもらう。

今も別にたくさん友達がいるわけじゃないけれど、心の底から友達、と呼べる人たちができたのは大きい。経済的な安定とかよりも、実はこうした心置きなくなんでも言える友達が一人でもいることがこの根っこの部分の成長に繋がった気がする。今考えるとバンクーバー時代はなんか寂しかったなぁ、と振り返る。

昨年9月、みんなで焚き火して、ホットドックを食べたのが懐かしい。
みんなでハイキングも楽しかったなぁ。

卒業と同時に映像編集のお仕事をもらい、この夏は新しいスキルを学びながら働く予定。今年の秋に日本に帰る予定だからそれまで仕事をしながらドーソンの夏を満喫したいと思います。新たな旅立ちということでこの連載も今回の記事を持って終了することにしました。

2019年から3年間、記事を読んでくださった皆さん、ありがとうございました!

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極北でアートを学ぶ

カナダへ移住して4年半。バンクーバーを飛び出し、私はドーソン・シティへ引っ越した。目的は、ビジュアル・アートを学ぶため。氷点下40度に達し、オーロラの見える極北の地で、どんな人と、どんな風景と出会えるだろう。ありのままの生き方を探す、ゆったりエッセイ。
[バナーデザイン:宗幸(UMMM)]

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吉村静

1987年、新潟県長岡市生まれのランナー。走歴25年。ランニング雑誌の出版社に勤めた後にカナダへ渡り、トレイルランニングやハイキング、日々のお散歩に没頭する。カナダで2年過ごしたのちに南米やニュージーランド、インドなど様々な国で写真を撮りながら旅をする。2019年からカナダの永住権を取得し、現在はバンクーバーで暮らす。トレイルランニング用品専門店Run Boys! Run girls!のウェブにてアウトドアスポーツのある生活を綴る「Tip of the iceberg Newspaper」という名のブログも更新中。バンクーバーのヌーディストビーチで開催される裸のランニング大会Bare Buns Run2014年大会女子の部優勝。

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