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女ひとり温泉をサイコーにする53の方法

2021.02.25 更新 ツイート

行きにくいけれど一生に一度は行きたい「わざわざ湯」の魅力 永井千晴

「温泉オタク会社員」こと永井千晴さん(@onsen_nagachi)の初めての本が発売になりました。その名も『女ひとり温泉をサイコーにする53の方法』! 訪れた温泉は約500湯。暇さえあればひとりで温泉を巡りまくっている永井さんによる温泉旅が100倍楽しくなる本書から、少しずつTIPSをご紹介していきます。

 

新幹線駅・空港・都市から遠くアクセスにだいぶ難があるにもかかわらず、個性的ですばらしい湯が湧いているためにわざわざ訪れたくなるところがあります。平たくいえば、辺鄙な場所に位置する小さな温泉地(または一軒だけポツンと建つ日帰り入浴施設)を、個人的に“わざわざ湯”と呼んでいます。

例えば、本州の北端、「あの世に最も近い場所」といわれる、青森県の恐山。日本三大霊山に数えられており、故人をしのぶ地として知られています。境内には湯小屋(共同浴場)がいくつかあり、透き通った硫黄の香る温泉がひたひたに満ちています。白い湯の花が湯船にまとわりついていて、さっぱり弾く新鮮な浴感がすばらしい。参拝客がすぐ横を通るようなところにあり、湯浴みをするのは度胸がいりますが、神聖な湯場で身も心も洗うような体験ができるのは恐山ならでは。いつまでも忘れられない温泉です。

正直に書くと、恐山はどこから向かうにも大変で、気軽に行ってみたらといえる場所ではありません。でも、「あの湯のためだけに」行く旅行も楽しいものです。期待値はその分上がってしまうけれど、達成感で心がいっぱいになるのもあって、私はよく、わざわざ足を運んでしまいます。

青森県にはもうひとつ有名な“わざわざ湯”があります。その名も「黄金崎不老ふ死温泉」。数多くのメディアに取り上げられているひょうたん型の露天風呂は、温泉好きにとって一生に一度は訪れたいあこがれ湯のひとつ。日本海が眼前に広がり、遠くのほうには漁船が見え、波しぶきがこちらに飛んできそうなほどの迫力。太陽の光できんきらに輝く塩気の強い濃厚な温泉は絶品です。海とひとつになるようなダイナミックな入浴は、あそこまで行かないとかないません。青森県西部の海沿いにあり、青森市からも弘前市からも秋田市からも車で二時間以上かかるところに位置しています(冬期限定で新青森駅から直行バスが出ています)。白神山地の麓で、周りはのどかな山と海。大きな観光スポットもほとんどありません。不老ふ死温泉のためだけに行って帰るような温泉旅行は、なんて贅沢だろう、と思うのです。

主要な街からちょっと足を伸ばしていく、日帰り入浴の“わざわざ湯”も大好きです。例えば、岐阜県高山市にある「荒城温泉 恵比須之湯」。高山駅から車で三〇分ほどのところにある山間の小さな日帰り入浴施設です。飛驒高山の観光とセットでおすすめしたいけれど、どこかへ行く道すがらにあるわけではないので、わざわざ行くことになっちゃいます。だばーっと注がれては流れていくオーバーフローで、すさまじい温泉成分によって湯船や床はとろとろに変形・変色。加温している湯船と、源泉そのままの二〇度ぐらいの冷たい湯船があって、交互浴がサイコーに気持ちいい。源泉湯船はアワがたくさんつき、硫黄と鉄のにおいがくっきりしています。地元客に愛されている、隠れた名湯です。

日本三大美肌温泉のうちのひとつ、栃木県の喜連川温泉より少し外れにある日帰り入浴施設「喜連川早乙女温泉」も、この湯のためだけに訪れたくなる日帰りの“わざわざ湯”です。宇都宮駅から車で三〇分ほどでたどり着くそこは、田園広がる平地にぽつんと建っています。ぱりっと弾く塩の強い温泉で、硫黄のにおいも濃く、たゆたゆのオーバーフロー。半露天で心地よくて、エメラルドグリーンから乳白色に変わる色湯も美しい。シャワーと蛇口にも惜しみなく温泉が使われていて、温泉成分によってもう全然石鹼のアワが立ちません(褒めてる)。宇都宮餃子を食べる旅行のついでにぜひ、わざわざ寄ってほしい名湯です。

ちょっと行きにくい温泉に客足が途絶えないのは、魅了されたファンがたくさんいるから。徳島県の祖谷温泉、東京の離島の式根島、鹿児島県の湯川内温泉、山梨県の奈良田温泉、和歌山県の湯の峰温泉や龍神温泉も“わざわざ湯”のようなもの。近くに寄れるめぼしい観光スポットや温泉街がなくたって、その湯のために、どうしても……と車を走らせるその時間は、わくわくしてたまりません。自分のためだけに、夢中で時間と手間を使ってどこかへ行くのは、大人の特権だなあと思います。

関連書籍

永井千晴『女ひとり温泉をサイコーにする53の方法』

訪れた温泉は500湯。ヒマさえあれば女ひとりで温泉を巡りまくっている「温泉オタクOL」による温泉偏愛エッセイ!

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女ひとり温泉をサイコーにする53の方法

「温泉オタク」会社員による温泉偏愛エッセイ

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永井千晴

1993年2月生まれ。学生時代に温泉メディアのライターとして、半年間かけて日本全国の温泉を取材。その後、旅行情報誌「関東・東北じゃらん」編集部に2年在籍し、「人気温泉地ランキング」などの編集を担当。退職後は別業種で会社員をしながら、経験を活かしてTwitterやブログで温泉の情報を発信している。現在も休みを見つけてはひとり温泉へ出かける、市井の温泉オタク。国内外合わせて約500の温泉に入湯。好きな言葉は「足元湧出」。Twitter @onsen_nagachi

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