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女ひとり温泉をサイコーにする53の方法

2021.02.11 更新 ツイート

何時間でも入っていられる「ぬる湯」の魅力をとことん語ってみた 永井千晴

「温泉オタク会社員」こと永井千晴さん(@onsen_nagachi)の初めての本が発売になりました。その名も『女ひとり温泉をサイコーにする53の方法』! 訪れた温泉は約500湯。暇さえあればひとりで温泉を巡りまくっている永井さんによる温泉旅が100倍楽しくなる本書から、少しずつTIPSをご紹介していきます。

全国の温泉取材を終えて、東京に戻ってきたとき、友人に最も聞かれた質問が「一番いい温泉、どこだった?」でした。「本当にいろんな温泉があるから、“ベスト”ってわけじゃないんだけど、一番印象に残ったところでいうと……」と予防線を張りながら、私が答えていたのは、鹿児島県の湯川内温泉でした。

湯川内温泉は、全国でも希少な「足元湧出」温泉のうちのひとつ。足元湧出はその名の通り、足元(湯船の底)である板の間や岩の隙間から温泉が直接湧いていて、湯船を満たしているものをいいます。ぷくぷくと湯面にアワが湧くのがその証拠。「生まれたて」な温泉なのです。もちろん、とっても新鮮で、においも肌触りも段違い。私は足元湧出が大好きで、そのためならどこへでも車を走らせます。

私が初めて足元湧出に出会ったのが、「湯川内温泉 かじか荘」でした。鹿児島県出水市の山奥にある一軒宿で、温泉にも取材旅行にもずいぶん慣れてきた頃です。暑い五月のことで、日帰り入浴でさらりと浸かる予定でした。しかしまあ、もう、どのくらい居座ってしまったことやら。驚いたのはその透明度でした。ガラスのようで、無重力のような心地。とろけた木造湯船。ごろごろした岩底から湯玉がぷくりと浮いてきます。どっぷり体を沈めて、三七~三八度のぬる湯に一時間。体にはアワがぴちぴちとつき、つるつる肌を滑るなめらかさがパーフェクトでした。「国内ナンバーワンの単純泉」「完璧な湯」と評価される所以です。

その感動と衝撃は、どんな色湯も、どんなにおいの強い温泉も霞みました。無色透明でもこんなに個性的な温泉があるのか、と。私は湯川内温泉をきっかけに、足元湧出とぬるい温泉が大好きになり、いまも求めて旅行を続けています。

足元湧出は、湯川内温泉だけではありません。私の最推し旅館である青森県の「蔦温泉」もそう(足元湧出でにおいも個性的。ぬる湯。趣深い湯屋もすばらしく、ごはんもおいしい。大好きな旅館です)。有名どころでいうと、「丸駒温泉旅館」(北海道)、鉛温泉「藤三旅館」(岩手)、乳頭温泉郷「鶴の湯」(秋田)、赤倉温泉「湯守の宿三之亟」(山形)、法師温泉「長寿館」(群馬)、下部温泉「源泉館」(山梨)、壁湯温泉「旅館福元屋」(大分)などが挙げられます。川底から湧くワイルドな野天だと、川湯温泉仙人風呂(和歌山)や、湯原温泉郷砂湯(岡山)も人気です。

東京からの行きやすさで選べば、群馬県の法師温泉か、山梨県の下部温泉でしょう。特に法師温泉「長寿館」は、国の登録有形文化財に指定されているほどの歴史ある建築も魅力のひとつ。映画『テルマエ・ロマエ』のロケ地にもなっている趣深い宿なのです。

私がこれまで浸かってきたさまざまな温泉の中でも、足元湧出はいつもちょっと別格です。毎回、「すげ~~~」って声に出ます。一生に一度は浸かりたい、一生に一度は浸かってほしい。鮮度が一番大事だという感覚が、本当に身に沁みる温泉なのです。

冬の温泉旅行より、夏の温泉旅行のほうが好きです。なぜなら、ぬる湯にずっと浸かれるから。冬はさすがに、ぬるいと体が冷えてしまいます。一時間でも二時間でもずーっと浸かってしまうような、ぬるくて、だらっとした温泉が、たまらんのです。

ぬるい温泉がだいだいだいだい大好きだ

ぬる湯というと、人により感じ方はさまざまですが、体温と近い三四~三七度の湯に浸かることを「不感温浴」といい、熱くも冷たくも感じず長湯できる温度とされています。温泉施設がぬるい状態を保てているのは、多くの人が「気持ちいい」と感じる四〇~四二度にするための加水・加温をせず、ぬるい源泉をそのまま投入しているケースが多いから。ぬる湯は、施設側によって「選択」されたものなのです。「浸かるために湧き出てきた」というような絶妙な温度感の源泉を愛しく感じます。

不感温浴といわれているように、ぬる湯に浸かった瞬間、体全体に熱が行き渡るようなじわじわビリビリ感はありません。ざぶんと足を入れた瞬間は、歯ごたえのない冷たさを感じますが、次第にぬるさに体が慣れ、湯と肌に境目のない入浴が続いていきます。いつ出ようか、いつでもいいや、なんにも感じないな、苦しくも痛くも熱くも冷たくもない、ただちょっとずつ、ピリピリじんわりと、血が末端まで行き届いてすべて解放されるような。ぼけっとしていてもいいし、湯が流れる音をただ聞くのもいいし、本を持ち込んでもいい。緊張がすべてとろけて、テレビも見ずに仕事もせずにじっと湯に浸かるような贅沢が、とにかく嬉しいのです。私はだいたい、体を浮かせたり沈ませたり、呼吸を整えて瞑想したりして、一、二時間ほどだらだらと浸かっています。退屈で幸せでたまらないのです。

ぬる湯のおすすめ宿を挙げるとすれば、まずは栃尾又温泉「自在館」(新潟)。ひとり旅客も歓迎しているプチ湯治宿で、東京から上越新幹線でサクッと行ける距離感がいいです。体にやさしいゴハンも、清潔で趣ある建物も好き。

祖谷温泉(徳島)は、忘れられないほどすばらしいぬる湯でした。断崖に建つ一軒宿で、ケーブルカーで行く谷底の露天風呂は絶品。硫黄のにおいがふんわりして、トロットロの肌触り、肌にまとわりつくアワアワがたまりません。ガチな秘境にあるのですが、この湯のためだけに訪れてほしいです。

川古温泉「浜屋旅館」(群馬)もすばらしいぬる湯です。キチキチでアワアワ、新鮮でいいにおい。混浴露天はハードルが高いけど、女湯にも露天があってサイコー。みなかみの山奥にある小さな宿で、静かで快適です。

奥津温泉「池田屋河鹿園」(岡山)は、もはや「羊水に浸かっているのでは?」と思ってしまうほどの心地よさ。三九度の源泉がダバダバとかけ流されていて、アワアワの超新鮮でした。近くの高級老舗宿「奥津荘」だとさらに足元湧出だそう。山間の小さな温泉地ですが、つるさらアワアワですばらしすぎて、「めちゃくちゃ繁盛してほしい」という気持ちでいっぱいになりました。行ってほしい。

谷地温泉(青森)は、足元湧出でぬる湯という、私にとっては直球ストレートなタイプすぎる宿です。日本三秘湯のひとつに数えられていて、ややとろみがありながらもピリッと刺激もある湯。ひなびた湯屋の雰囲気が印象的です。

宿泊であれば「一晩中浸かっていられる」のがポイントですが、日帰り入浴でもぬる湯を楽しめます。「千原温泉湯谷湯治場」(島根)は、先述した足元湧出のぬる湯で、「地球」をひしひしと感じるほどプクプク湯玉が湧いてくる温泉でした。炭酸がじりじり効いていて、塩気のさっぱり感がたまりません。

山口温泉(山梨)は、モール泉(植物成分が染み出ている、茶色の温泉)でぬるつるなアワたっぷりのぬる湯。甲府からちょっと足を伸ばして行く、住宅地の真ん中にある民家のような施設です。気持ちよすぎて出るタイミングをマジで見失います。

ぬるくて新鮮な温泉は、肌にアワのつく(炭酸)ものも多くあります。プチプチピリピリするのは、ぬるいからこそ為せる浴感。多くの施設が湯上がり用に熱い湯船を用意しているので、初心者も安心して挑戦できます。無限に浸かってしまう、ぬる湯の世界へようこそ。

関連書籍

永井千晴『女ひとり温泉をサイコーにする53の方法』

訪れた温泉は500湯。ヒマさえあれば女ひとりで温泉を巡りまくっている「温泉オタクOL」による温泉偏愛エッセイ!

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女ひとり温泉をサイコーにする53の方法

「温泉オタク」会社員による温泉偏愛エッセイ

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永井千晴

1993年2月生まれ。学生時代に温泉メディアのライターとして、半年間かけて日本全国の温泉を取材。その後、旅行情報誌「関東・東北じゃらん」編集部に2年在籍し、「人気温泉地ランキング」などの編集を担当。退職後は別業種で会社員をしながら、経験を活かしてTwitterやブログで温泉の情報を発信している。現在も休みを見つけてはひとり温泉へ出かける、市井の温泉オタク。国内外合わせて約500の温泉に入湯。好きな言葉は「足元湧出」。
Twitter @onsen_nagachi

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