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愛の病

2020.09.20 更新 ツイート

恋愛小説家が何度も観る9選 #Netflix恋愛映画入門の秋 狗飼恭子

おすすめの恋愛映画は人の数だけあります。傑作がありすぎて、選ぶのが面倒くさい! そんな方たちに向けて、何度も泣ける名作から観終わったあと放心してしまう強烈作まで、恋愛映画をこよなく愛する狗飼恭子さんが9作品をおすすめします。

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2020年を、わたしは忘れないだろう。

映画館へ行けず家にこもり、映画が死ぬんじゃないかと恐ろしく思ったことを。
鳴り物入りで劇場公開するはずだった大作がスクリーンにかけられず、配信という形で世界に放たれたことを。

 

映画をめぐる状況は著しく代わり続け、またこれからも変化してゆくのだということをまざまざと見せつけられた。
おかげで随分Netflixにお世話になったわけだけれど、映画をめぐる状況だけでなく映画の内容も変化しているのだと感じ続けた日々だった。

特に恋愛映画。恋愛映画は作り手の思想を反映させやすい。
社会問題や時代性を笑いやときめきとともにわたしたちに伝えてくれるのだ。
そんな恋愛映画の中から、いくつかわたしのお勧めを紹介させていただきたい。

まず観て欲しいのは、とても2020年ぽい映画。(最初に言っておくと、この「2020年ぽい」は映画の公開や制作が2020年であるということではない。わたしが「ぽい」と思ったという主観であるのであしからず)
『軽い男じゃないのよ』と、『ハーフ・オブ・イット:面白いのはこれから』の2本を。

『軽い男じゃないのよ』は、精神的マッチョな主人公が、ある日男女の役割とイメージが真逆(分かりやすく言えば女尊男卑)の世界に行ってしまうことからはじまるラブコメディ。身体に張り付くシャツを着ていると口笛を吹かれたり、女の浮気は生物学的なものと諭されたり、上半身裸でうろつく女に眉をしかめたりする世界である。そんな中、男卑思想の女性に恋をしてしまった主人公の変化が説教臭くなく描かれる。恋とは、人をかくも変えうるものなのだ。

『ハーフ・オブ・イット』は、中国系移民の少女が白人のクラスメイトに恋文の代筆を頼まれたことから始まる物語。『シラノ・ド・ベルジュラック』を例に挙げるまでもない古典的導入ながら、そこからはじまる一筋縄ではいかない恋愛のかたちと、登場人物たちの現代的知的会話がとても気持ちいい一品。日本の誇る健康食品ヤクルトがいい働きをしていて、なんとなくそれも嬉しかった。

次は、ルッキズムについて考えさせられる映画を。
「人は、人間の内面と外見のどちらを愛するものなのか」「他者との違いを受け入れられるか」という永遠の問いをテーマに描かれた映画『ビューティー・インサイド』と『スキン あなたに触らせて』。

『ビューティー・インサイド』は、朝目覚めるたびに外見が変わってしまうという奇病(なのかな?)の青年が恋をしてしまう物語。毎日見た目の変わる彼の恋が成就するのか、このあらすじだけでわくわくできる。まあ、タイトルがネタバレですが。

『スキン』は、目のない娼婦、顔の骨格が変形している女、口がお尻の穴になっている少女(!)など、「他者と違う見た目」の人々の恋物語。「きみの見た目が普通じゃないから好きだ」と言ってしまう繊細さのかけらもない男が登場したりして結構きわどい作品なのだけれど、ピンクと薄紫に統一されたファンシーな世界観に、つい最後まで魅せられてしまう。

『ビューティ・インサイド』は「見た目なんて関係ない」という綺麗事を美しく、『スキン』は「結局見た目はただの好み。割れ鍋に綴じぶただ」という身もふたもない物語が興味深いので、ぜひとも二本立てでご覧いただきたい。

それから2020年は「可愛いおじさん」が流行っているらしいので、最強おじカワ映画『恋愛小説家』はどうでしょう。
なんせあのジャック・ニコルソンが恋に落ちる瞬間が見られるのだ。たまらない。

あるいは昨今ではなかなかない、女は男を想う日陰の存在、男は虚勢を張って女を守る、という旧式日本恋愛美学が存分につまった『蒲田行進曲』を観てみるのも一興かも。強がる男風間杜夫が大変可愛らしい。
こちら、現代ではパワハラセクハラと思われる描写も多いので少々ご注意ください。

異色作ばかり紹介してしまったので、ストレートに観られる恋愛映画も幾つか。

恋愛は限りなくホラーに近いことを無意識下に刷り込んでくる『mellow』、切な死(=切なすぎて死ぬ)しそうになる『アデル、ブルーは熱い色』、この想いこそ初恋! の『ウォールフラワー』はいかがでしょう。

ああどうしよう止まらない。まだ話したりない以下文字数が。


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愛の病

恋愛小説の名手は、「日常」からどんな「物語」を見出すのか。まるで、一遍の小説を読んでいるかのような読後感を味わえる名エッセイです。

 

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狗飼恭子

1974年埼玉県生まれ。92年に第一回TOKYO FM「LOVE STATION」ショート・ストーリー・グランプリにて佳作受賞。高校在学中より雑誌等に作品を発表。95年に小説第一作『冷蔵庫を壊す』を刊行。著書に『あいたい気持ち』『一緒にいたい人』『愛のようなもの』『低温火傷(全三巻)』『好き』『愛の病』など。また映画脚本に「天国の本屋~恋火」「ストロベリーショートケイクス」「未来予想図~ア・イ・シ・テ・ルのサイン~」「スイートリトルライズ」「百瀬、こっちを向いて。」「風の電話」などがある。ドラマ脚本に「大阪環状線」「女ともだち」などがある。最新小説は『一緒に絶望いたしましょうか』。

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