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山田マチの山だの街だの

2019.07.10 更新

第43回 かっぱ橋道具街 - ペリカントースト・太助鮨・ナゴヤナイト -山田マチ

とある仕事で梱包資材を用意することになり、「よっしゃ、あの街にいけるぞ」とニヤリ。
あの街とは、料理道具や店舗用品がなんでもそろう、かっぱ橋道具街。
しかしなかなか都合がつかず、やっと行けることになったのは日曜日。日曜日……。
公式サイトによると、日曜は3割くらいしか営業していないとのこと。そうよね、本来は業者向けだものね、素人なんて相手にしてくれないよね、そんな硬派なところが好きよ、かっぱ橋。

 

日曜日だけど、行くことにしました。同行者は、友人の通称カッパ。カッパだから「かっぱ橋にいく?」と誘ってみたら、0秒で「いく」との返信。私もカッパも料理道具が好きなのです、見たいのです。「これいつ使うの」とか「でか!」とか「ちょっとしたパーティーにいいよね」とか言いたいのです。

朝9時、現地集合。ふたりとも名古屋出身ですから、1日のはじまりはモーニングから。
「合羽橋珈琲」がリニューアルし「KAPPABASHI COFFEE & BAR」といシャレた名前になった喫茶店。名前に負けず外観も内装もシャレています。蔵のように重厚感がありながらもすっきりしていて、照明控えめのオトナな空間。
モーニングメニューを見ると、「ペリカン」のトーストとあります。ん? ペリカン? そういえば先日、東京に来た地元の友人が「ペリカンのパンを食べるために浅草に泊まる」と言ってました。「ペリカン」は、食パンとロールパンしか売ってない、予約必至の老舗人気パン屋さんだそう。そんな貴重なパンがたまたま食べられるなんて、幸先良いぞ。

食パンを、ふたつの意味でサクサク食べ終え、満腹。さぁ歩こう。

シャッターは目立つけれど、営業してるお店もまあまああります。
食器店の店先には湯呑みがずらり。歴代総理の似顔絵や魚へんの漢字などのおなじみの柄と並び、達筆で「令和」と書かれたものも。令和、はやくも湯呑みにしっくり。令和、パソコンですぐに漢字変換できないのがタマにキズ。私は「0話」って出ます。

金物屋さんで便利道具を鼻息荒く見ていたら、開襟シャツ姿のお店のおじさんが、うちわをあおぎながら話しかけてくれました。
「これね、ビクトリノックスのオールドカラー。パンも肉もよく切れるよ~」。いっぱいしゃべってくれるのですが、イッセー尾形さん演じる架空のおじさんにしか見えなくて、話が入ってきません。東京下町テーマパークのキャストさんではあるまいか。

10時をすぎると、お店はどんどん開いてきました。なんだ、けっこうやってるじゃないの。
しかし商品は数あれど、20年もひとり暮しをしていると必要なものは揃っています。「長寿の心得」が書かれた湯呑みも、ビクトリノックスのナイフも、もう持っている。私は、ほしいものが、ほしい。
麺好きの後輩がもうすぐ誕生日なので、湯切りザルをあげようかと物色したのですが、その子もひとり暮しだと気づきました。湯切りは風呂場でしか無理だ。

正午前。
料理道具に興奮したせいか、はやくもお腹がすいてきました。
スカイツリーの見える本通りの「太助鮨」ののれんをくぐります。夜のコースはそれなりのお値段なのに、ランチでは、握りにお味噌汁がついて、なんと1300円。大将がきさくに声をかけてくれました。
「アド街見てきたの?」
「アド街? アド街ック天国?」
「昨日かっぱ橋だったんだよ」
えー! 全然知らなかった。
「来週七夕まつりだから、それでだろうね。鶯谷からこのあたりまで、ぶぁーっと店が出るんだよ」
あらそれは楽しそう。

再び満腹。さぁ歩こう。

妙に人間くさい「かっぱ河太郎」の黄金像を拝んだり、巨大コック像がシンボルの「ニイミ洋食器店」が休みであることに愕然としたり、本来の目的である業務用品店「シモジマ」をくまなく回ったりするあいだも、人々の会話から「アド街……」という単語が漏れ聞こえてきます。アド街って、偉大なんだな。
結局かっぱ橋には、5時間ほどいました。平日に来ていたら一体どれだけかかるのでしょうか。

その日の夜は、友人らと合流し、ご飯を食べる約束がありました。
全員が名古屋出身なので、ふたりで名古屋メシをつくって迎えることに。ナゴヤナイト。ちょっとしたパーティーです。
最近むしょうに食べたいものがあったのです。それは、名古屋の老舗喫茶店「コンパル」の「エビフライサンド」。私はコンパルの近くに泊まりたい。
トーストしたパンに、エビフライ、卵焼き、キャベツ、各種ソースをはさんだ、見よう見まねのサンドをほおばり、パーティースタート。

味噌串カツ、手羽先と味の濃い茶色い料理が続き、シメはホットプレートでつくる鉄板ナポリタン。
デザートはコメダ珈琲の「シロノワール」にしようと、デニッシュパンとバニラアイスとハチミツを買ってきていたのですが、とても食べ切れませんでした。
名古屋には揚げ物と炭水化物しかないのか。エビがあったので、あやうく天むすまでつくるところでした。

家に帰り、アド街を見ました。全録テレビを買ってよかったと、これほど思ったことはありません。
アド街は、私にいろんなことを教えてくれました。
味噌串カツ用のバットを安く買った「お鍋の博物館」は半期に一度のセールだったこと。カッパのパフェが食べられるお店があること。「かっぱ橋」の由来は、合羽屋喜八という人間が橋をつくっていたら妖怪のカッパが手伝った、という複雑な伝説によるものだということ。
そして、のきなみ日祝休み、ということ。

今後どこかに出かける前にはアド街チェックを怠らないようにしよう。そう思いました。

*きょうの昭和*
友人のカッパが、ちょっとしたパーティー用にと買っていました。こてんぐ印の三色寒天。800gで36kcal。
*きょうのごはん*
名古屋の老舗喫茶「コンパル」のエビフライサンドが食べたくなり、見よう見まねでつくってみました。

 

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山田マチ『ひとり暮しの手帖』

実家をはなれて、およそ20年。 これまでも、きっとこれからも、ひとり暮し。 ここには、ひとり暮しのいろいろなことを書きつけます。 このなかのどれかひとつくらいは、あなたの心に届くかもしれない。 いや、ぜんぜん届かないかもしれない。 そんなふうな、 これは、ひとり暮しの山田の手帖です。

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