1. Home
  2. 生き方
  3. 山田マチの山だの街だの
  4. 第45回 愛知県豊明市 - 山田家・高校...

山田マチの山だの街だの

2019.08.07 更新 ツイート

第45回 愛知県豊明市 - 山田家・高校球児・BBQ -山田マチ

甥の夏が終わった。
それはネットのトップニュースで知りました。

実家で暮らす妹の息子は高校3年生、強豪校の野球部ピッチャー。
「おばさんを甲子園に連れてって!」と頼んでいたのに、地方予選2回戦でまさかのコールド負けをしてしまい、出番もないまま、あえなく終了となりました。
7月末、甥の誕生日に庭でバーベキューでもやるか、と部員たちを軽く誘ってみたら、みんなヒマなのか、ほぼ全員が参加を表明。高校3年生の野球部員&マネージャー、約30人のバーベキューをさばくため、私は東京から実家にかりだされました。

 

出身地を聞かれると「名古屋」と答えていますが、正確には愛知県豊明(とよあけ)市というところで生まれました。これは名古屋市民以外の愛知県民あるある。だって愛知県といってもピンと来てもらえないんですもの。とはいえ生家は名古屋市から500mくらいしか離れていないのでご勘弁ください。

豊明は、ザ・郊外の住宅地。日本の多くのみなさんが自分の生まれた街を「なんにもない」と思っているように、もれなく、なんのへんてつもないところです。海や山はなく、住宅があり国道がありマクドナルドがあり、車で30分圏内にイオンがごろごろ。
行ったことはないのですが、東洋一の「花き市場」があるみたいです。高徳院というお寺では、きゅうりを奉納する「きゅうり祭り」を開催。実家の近くには桶狭間古戦場があり、霊感強めの友達は「群れで見る」と言っていましたっけ。
最近は、桶狭間の戦いで織田信長が今川義元の大軍を破ったことにちなみ、「大金星のまち とよあけ」と称して観光PRをしているとか。
……あら、なんにもなくもないですね。今度ちゃんと散歩してみようかしら。

バーベキュー前日、帰省した私は妹の車に乗って、常滑(とこなめ)市にあるコストコ中部空港倉庫店に向かいました。
ひとり暮しの身にとってはなかなか用がないコストコも、30人分の食材とあらば出番です。
天井までうず高く積み上げられている家電や生活用品には目もくれず、巨大カートを押して向かう先は、肉売り場。質より量、とはいえ、なるべくおいしいものを食べさせたい。お肉だけでも小さなスーパーくらいあるので、あっちだこっちだと行き来して、肉塊を吟味。

ところどころでやっている試食ももれなくいただきながら、牛肉、豚肉、ウインナー、エビ、焼きそば、各種調味料、山田家の晩飯用の鶏の丸焼きやサーモンなどを放り込んでいきます。カートはすがすがしいほどにぱんぱん。
それにしても「ロティサリーチキン」という焼きたての鶏の丸焼きが700円って、どういう仕組みなんでしょうか。ニワトリに申し訳ないです。

家に戻り、仕込みスタート。
私は数時間にわたり「ビーフリブフィンガー」という必殺技みたいな名前の肉と格闘することになりました。見た目がグロテスクで下処理が大変だけれど焼肉屋並みにうまい、と評判のその肉。1本1本スジをはがし、小骨をとりのぞき、厚みが均等になるように包丁で開き、細かく切り込みを入れる、という作業を、6キロぶん。
それから5キロの牛バラ肉を切り炭酸水でもんでタレに漬け込み、4キロの豚バラ肉にガーリックソルトの下味をつけ、ついでに鶏の丸焼きもさばいて一口大に切り分けて。さすがに右手がしびれました。

バーベキュー当日、最高気温は37度。山田家総出で準備です。
涼をとる用に、大きめのビニールプールをふたつ用意して、井戸水をためます。
どこからか調達してきた巨大コンロに炭をいれ、かきあつめたテーブルや椅子をセッティング。
花火も問屋から大量に買ってあります。そして残り時間は、塩むすびをにぎるにぎる、ひたすらにぎる。

夕方になり、黒い坊主たちがぞろぞろと集まってきました。庭に全員そろったところで、母がぽつり。
「なんだ、あんなもんか」。
物足りないとでもいうふうな口調です。年末の餅つきの日は、延べ人数100人くらいになるので、それに比べたら少なく感じたのでしょうか。

頭数は少なくとも、全国優秀するほどのメンバーですからガタイが良く、食べはじめたらものすごい迫力です。塩むすびが瞬殺したので、はやくも焼きそばがほしいとのリクエスト。けれど炭火は肉に占領されているため、私がひとり台所でつくることに。ふたつのコンロを使い、同時に3玉ずつ調理していきます。計12玉もぺろり。

写真を撮っておこうと、ときどき甥を探すのですが、どこにいるのか全然わかりません。みんな同じくらいの身長で、同じくらい日に焼けていて、坊主。一度まったく見つけられずにいたら、誰かが「カブトムシをとりにいったよ」と教えてくれました。なぜ今、カブトムシ。18歳になったその日に、カブトムシ。

日が暮れて、花火がスタート。私は袋から花火を出していく係です。みんなに手持ち花火を配っていたら、突然、ボン!と大きな音が轟きました。ドスドスと打ち上がる花火に意気揚々と火をつけているのは、70歳をすぎた我が父。朝から準備に走り回っているというのに、まだみなぎっています。こわいです。

そんなジジイのテンションにひっぱられたのか、別のイベントも発生していました。
涼をとるため静かに戯れていたはずのビニールプールが、人を投げ入れる場所にかわっていたのです。水着じゃない子もおかまいなしに、ターゲットをかつぎあげ、次々と投げ飛ばしては拍手喝采。甥も、ハッピーバースデーの大合唱ののち、服のまま放り込まれていました。
メンバーだけで終わるかと思いきや、父兄までもターゲットに。甥の父親も誰かのお母さんも投げこまれ、最終的にはマネージャーの女の子たちも飛びこんで、全員びしょぬれの記念撮影。

夜も深まり、おひらきの時間となりました。
あれだけはしゃいだあとなのに、びしょぬれなのに、片付けはてきぱき。挨拶もしっかり。さすがでした。
「大金星のまち とよあけ」で、金星をとられちゃった高校球児たちと、良い夏の思い出ができました。
みんな、おつかれさまでした。

*きょうの昭和*
ご近所さんからの差し入れ。ラムネ60本。
*きょうのごはん*
焼きそばを同時に6玉つくったところで、焼け石に水。

 

関連キーワード

関連書籍

山田マチ『ひとり暮しの手帖』

実家をはなれて、およそ20年。 これまでも、きっとこれからも、ひとり暮し。 ここには、ひとり暮しのいろいろなことを書きつけます。 このなかのどれかひとつくらいは、あなたの心に届くかもしれない。 いや、ぜんぜん届かないかもしれない。 そんなふうな、 これは、ひとり暮しの山田の手帖です。

{ この記事をシェアする }

この記事を読んだ人へのおすすめ

幻冬舎plusでできること

  • 日々更新する多彩な連載が読める!

    日々更新する
    多彩な連載が読める!

  • 専用アプリなしで電子書籍が読める!

    専用アプリなしで
    電子書籍が読める!

  • おトクなポイントが貯まる・使える!

    おトクなポイントが
    貯まる・使える!

  • 会員限定イベントに参加できる!

    会員限定イベントに
    参加できる!

  • プレゼント抽選に応募できる!

    プレゼント抽選に
    応募できる!

無料!
会員登録はこちらから
無料会員特典について詳しくはこちら
PAGETOP