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山田マチの山だの街だの

2019.06.26 更新

第42回 練馬 - あじさいナイト・久松湯・ひょうたん - 山田マチ

6月初旬、府中市の「あじさい祭り」に出かけたのですが、まだ2分咲きほどで見頃の前でした。そんな私に朗報が。練馬区の「としまえん」では6月24日まで「あじさい祭り」開催中。毎週土日の17時以降は「あじさいナイト」として、入場料が300円になるというのです。未体験のとしまえんで、サタデーあじさいナイトとしゃれこもうじゃないか。

 

としまえんは、練馬駅から歩ける距離。練馬を自発的に訪れるのは初めてなので、ちょっと早めに出かけて散歩することにしました。
街を知るために、まずは駅前のビル「ココネリ」内にある観光案内所へ。
私は練馬区のことを何も知りませんでした。アニメの聖地であることも、特産品が大根であることも、東京23区唯一のワイナリーや牧場があることも。観光案内の充実ぶりにも感激し、教えてもらったお礼に、練馬区のキャラクター「ねり丸」と練馬名物をあしらったクリアファイルを買いました。

練馬をもっと心に刻もうと向かったのは、練馬区役所。
土曜日ですが、20階の展望ロビーとレストランは営業中です。エレベーターの扉が開くと、大パノラマ。レストランを含めると、360度ぐるりとまわって、富士山やスカイツリーも眺めることができます。……晴れていれば。
今日は朝から、大雨小雨、ときどき曇りを繰り返していて、今はどす黒い雲に覆われています。素晴らしい景色の写真を拝見し、地上に戻りました。

時刻は16時半。あじさいナイトまで30分。小雨。としまえんに電話で問い合わせます。
「あじさいナイトは開催しますか?」
あじさいナイトはあじさいの祭典なのに、雨の場合は中止なのです。「今のところは~」という曖昧なお返事でしたが、希望を胸に、いちかばちかのとしまえん。

寄り道しながらてくてく歩き、17時を少しすぎたころに正門到着。小雨はやんで、曇り空。あじさいナイトは、営業していました。
入場料を支払い、思いのほか速いスピードで回る巨大メリーゴーランドの横を通り過ぎて、あじさい園へ。
待望の満開のあじさいです。どこまでもつづく美しいあじさいの小径。ぜんぶ、青い。果てしなく、青い。
「あじさいナイト」ですから、ライトアップも見どころのひとつ。
いたるところに、あじさいの花と同じくらいの大きさの真ん丸の照明が立っていて、目を凝らしてよお~く見ると、うっすら七色に変化していました。
なぜ私はよりによって、夏至の日に来てしまったのでしょうか。日の入りまでまだしばらくあります。ナイトのライトはあきらめて、そのぶん大量の青いあじさいを目に焼きつけ、としまえんをあとにしました。

次なる目的地は、銭湯の概念をくつがえすおしゃれ銭湯、なのですが、小腹がすいたのでちょっと一杯。

練馬でいちばん安いとウワサに聞いた、居酒屋「希望の星」へ。
客席はカウンターだけで、厨房には優しそうなお父さんさんがひとり。飲み物メニューは、生ビールが250円で、ほかはぜんぶ190円! 日本酒も焼酎もハイボールも、モヒートだって一律です。
最近お気に入りの、味も色もないただの「酎ハイ」を飲みながら、短冊のメニューを吟味。どれも大盛りらしいので、まずは様子を見ようと、冷奴&キムチ&漬物の3点盛、290円を注文しました。
すると、まさかの、豆腐1丁、皿にどーん。キムチと高菜もてんこもり。それにお通しのそら豆を食べたら、おなかいっぱいです。
となりの人が頼んだ290円の焼きそばには、麺が2玉使われてました。
ステレオから流れる昭和歌謡を口ずさみながら、機嫌よくお酒や料理をつくって出してくれるお父さん。この方は、神様なのでしょうか。

練馬の神様にいくばくかの金銭をお渡しして、銭湯にむかいました。
「久松湯」は、温泉の露天風呂があるうえに、とにかくスタイリッシュな銭湯。外観からして近代的で、内装は白と黒と木の色で統一され、清潔感にあふれています。なのに「公衆浴場」なので、都内一律の460円。
ここにはケロヨンも富士山のタイル絵もありません。洗い場はオケも椅子も黒、壁のタイルは全面真っ白。温泉と炭酸泉に交互につかってリフレッシュしたら、何かが飲みたくなってきましたよ。

練馬駅のほうに戻って、もう一杯。
駅の近くの歓楽街には、新旧まざった小さなお店がたくさん並んでいました。そのなかでも、通りまで人が溢れてにぎわっている、立呑みタイ食堂「ひょうたん」へ。
お店をのぞき「満席かな?」とあきらめかけたのですが、カウンターで飲んでるお客さんたちが「あいてるよー」と、スペースをつくってくれました。「ここどうぞ」と案内してくれたのもお客さん。メニューを渡してくれたのもお客さん。

タイのものであろう調味料やお酒やおつまみが、カウンターにも厨房の棚にも空中にも、ところせましと、置かれたり、ぶらさがったりしています。私のちょうど頭の上には、カエルの干物が透明な袋に小分けされ、画鋲でとめてありました。豊富なドリンクメニューは壁がうまるほど貼ってあり、どこを眺めても、ああ愉快。
フロアを小気味よくまわしているのは気のいいマスター、ひとりしか立てないコンパクトな厨房にはタイ人らしき女性シェフ。そこからまるで魔法のように、お酒や料理がじゃんじゃん出てきます。

豆腐1丁で腹がふくれ、タイ産の発酵ハムと春巻きしか食べられなかったけど、もっと食べたい! もっと飲みたい! きっと発見できていないメニューもあるはずです。奥にテーブル席もあるので、頭数そろえて予約して、おなかすかせて来なくては。
計画を練り、馬が合う仲間たちと、また練馬に。
あじさいがひょうたんに導いてくれた、発見づくしの半日散歩でした。

*きょうの昭和*
練馬駅の近くのパン屋さんにありました。良い顔、良いテカリ。
*きょうのごはん*
立呑みタイ食堂「ひょうたん」にて。えびのしっぽまで、ぱりっとうまい。

 

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山田マチ『ひとり暮しの手帖』

実家をはなれて、およそ20年。 これまでも、きっとこれからも、ひとり暮し。 ここには、ひとり暮しのいろいろなことを書きつけます。 このなかのどれかひとつくらいは、あなたの心に届くかもしれない。 いや、ぜんぜん届かないかもしれない。 そんなふうな、 これは、ひとり暮しの山田の手帖です。

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