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山田マチの山だの街だの

2019.05.15 更新

第39回 青梅(おうめ)- 昭和・バカボン・中華ライス -山田マチ

昭和に生まれ、昭和の家具や生活用品に囲まれて暮し、どこにでかけても昭和にでくわしがちな山田です。平成になじめぬまま、新しい時代に入ってしまいました。令和、ですって。すっと受け入れられたのは、「和」のおかげでしょうか。

平成最後の「昭和の日」。
せっかくだから昭和っぽいところを散歩しようかと、グーグル先生にたずねてみました。すると、青梅だ、青梅がいい、青梅にかぎる、と、やたら青梅市をすすめてきます。どうやら「昭和」をテーマに街おこしをしているようです。よし、いってみよう。

 

JR立川駅で青梅線に乗り換え、約30分。
青梅駅の通路には、はやくも昭和レトロな映画看板が。改札を出て、バカボンのパパの像の前で、友人の通称カッパを待ちます。彼女もまた昭和に生まれ昭和を愛する女。なぜカッパかというと、カッパそのものが好きだから。カッパ伝説が有名な地でカッパ捕獲用の軍手をお土産に買っていったら喜んでました。つかまるといいね。

カッパと落ち合い、観光案内所で地図をもらって散歩スタート。
旧青梅街道を歩くと、あちらこちらに映画看板が飾られています。
青梅には、昭和の時代には映画館が3館もあったそうです。平成の時代、街おこしのアートイベントに、青梅出身の “ 最後の映画看板師 ” 久保板観さんが参加されたことで、看板が復活しました。貴重な作品が野ざらしに。しかし野ざらしだからこその風合いが出て、街になじんでいます。

陶器屋、傘屋、金物屋。気になる商店がちらほらありますが、買い物はあとのお楽しみ。延々と街道を歩き、中華料理「昭和軒」などをやりすごしながら、再び駅方面に引き返してきました。
そして「赤塚不二夫会館」へ。赤塚不二夫は青梅に縁もゆかりもないのですが、なぜここにつくられたかというと、青年時代に映画看板の仕事をしたことがある、という理由からだそうです。一点突破。

受付で、駅に置いてあった割引券を出しました。「これは使えますか?」。受付のおばちゃんの返事は、「これでいいのだ!」。おっ。おばちゃんとニヤリと微笑みあい、料金を支払って館内へ。
じつのところ赤塚不二夫には、それほどの思い入れはありませんでした。「藤子・F・不二雄ミュージアム」に対する興奮状態を100とすれば、8くらい。
しかししかし、展示を見てまわるうちに、その数値はぐんぐん上昇していきました。赤塚不二夫、すごい。改めてトキワ荘、すごすぎる。若かりしころのタモリとの交流なども写真に収められ、全力でふざけつづけていた人生に感動。グッズのクオリティも高く、よく知らないニャロメのマスキングテープを買ってしまいました。

興奮してお腹がすいたので、赤塚不二夫が愛した水餃子が食べられるという「ボンボン亭」へ。すると「ごめんなさい食事終わっちゃったんですよ~」。シェー。
ノープランで街をふらふらとさまよううちに「手打ちラーメン  みたまや」という看板が目に入りました。ふつうの民家のたたずまい。イチかバチかだ。店内にお客さんは誰もいなくて、店主らしきおじさんが奥からゆっくり出てきました。「ラーメンと中華ライスください」「ふたりでわけるの?」「はい」「じゃあ半分ずつにして出してあげるね」。やさしー。麺も焼豚も中華ライスも、昔ながらのやさしー味。いつしか店内は満席になっていました。

満腹になり、割引共通券で入館できる「昭和レトロ商品博物館」「昭和幻燈館」を見学してから、お買い物タイム。
「カワスギ陶器店」にはレトロな器がたくさん。かわいいかわいいと騒ぐ私たちをお店のお母さんは不思議そうに見ています。「お客さんたちは喜んでるんだけど、何がいいんだかよくわからないのよねぇ」。
私はレトロポップな食器はもう一生分あるので我慢。カッパは長時間にわたる自分会議の末、カッパが描かれたとっくりを購入していました。

「大野金物店」では、ぎゅうぎゅうに詰まった棚のいちばん下に、お花模様のプラスチックのちりとりを発見。宝を掘り当てたようなウキウキ気分でレジに持っていくと、そこでもお店のお母さんが首をかしげます。「ふぅん、これがいいの? さっぱりわからないわねぇ」。

このあたりで青梅とサヨナラ。
帰る沿線上の吉祥寺に、昭和をテーマにした居酒屋があるぞとグーグル先生がおっしゃるので、いってみることにしました。
そこはチェーンの居酒屋で、テキ屋の兄ちゃんみたいな格好をした若者が迎え入れてくれました。店内には駄菓子が並び、レトロ看板が飾られ、メニューには電気ブランやナポリタンがあったりと、たしかに昭和風。でもなんでしょう、この落ち着かなさ……。
すみっこの席でちびちびビールを飲んでいたら、気づいてしまいました。店員に昭和生まれがひとりもいません。お客さんもおそらく全員平成生まれ。みんなヤングで元気ハツラツ。おばさんはお呼びじゃないのね。

そこで突然、ひとりの店員が大きな声をあげました。
「え~みなさん! スタッフの○○がお客様からビールを頂戴しましたので、ここで一気しまーす!! 」
イッキとな! とんねるずが「一気! 一気!」と歌い叫んでいたのは昭和59年。残しちゃいけない昭和もあるのよ。私たちは恐怖におののき、こだまするイッキコールから逃げるように店を出ました。

逃げる足のまま私たちが転がり込んだ先は、昭和3年創業の焼き鳥「いせや」。酎ハイを飲み、1本90円の焼き鳥数本と、焼きとうもろこしを各々1本ずつ食べ、心を落ち着かせました。
ただそのままそこにある、ふいにあらわれる無自覚な昭和を楽しんでいきたいものです。令和時代もどうぞよろしくお願いします。

*きょうのごはん*
ふたりでラーメンと中華ライスを頼んだら、半分こずつにして出してくれました。味もサービスも、やさしー。
*きょうの昭和*
金物屋さんの棚の奥底から発掘し、光の速さでレジに持っていったちりとり。ほうきといっしょに玄関で使おうと思います。

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山田マチ『ひとり暮しの手帖』

実家をはなれて、およそ20年。 これまでも、きっとこれからも、ひとり暮し。 ここには、ひとり暮しのいろいろなことを書きつけます。 このなかのどれかひとつくらいは、あなたの心に届くかもしれない。 いや、ぜんぜん届かないかもしれない。 そんなふうな、 これは、ひとり暮しの山田の手帖です。

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コメント

幻冬舎plus  昭和を謳えば昭和になるってわけじゃないんです。昭和の目利きマチさんが過ごした、平成最後の「昭和の日」です。 (小) ↓ 第39回 青梅(おうめ)- 昭和・バカボン・中華ライス -|山田マチの山だの街だの|山田マチ - 幻冬舎pl… https://t.co/3v6o5iqtaK 4日前 replyretweetfavorite

林けいこ  第39回 青梅(おうめ)- 昭和・バカボン・中華ライス -|山田マチの山だの街だの|山田マチ - 幻冬舎plus https://t.co/4KfBKqLC77 4日前 replyretweetfavorite

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