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山田マチの山だの街だの

2019.11.27 更新 ツイート

第53回 山形の旅 その1 - 猫に蛸・アイディアの泉神社・小野川温泉 -山田マチ

いつも山だの街だのに同行する友人のカッパが、いつかいきたいと夢見る場所があると言います。
それは、山形県の、とある温泉宿。
猫のアプリのなかだけで長年交流している猫友達がいるそうで、その方が、猫の従業員がいる温泉宿にお勤めとのこと。
私はあいにく動物の猫に興味はありませんが、温泉にはつかりたいですし、山形には猫の頭の上に蛸がのっている「猫に蛸」という郷土玩具があり、見たい、ほしい、と思っていました。オカッパ頭に桜や菊の模様でおなじみの「蔵王高湯系こけし」もあることですしね。
いこうじゃないか、山形。

 

日曜朝6時半、東京駅の駅弁屋「祭」に集合です。
早朝だというのに全国から集められた駅弁が200種類以上! 寿司系、おにぎり系、肉系、魚系、ひもひっぱって温める系……迷ううちにどんどんお腹がすいてきて、肉が食べたくなりました。人気ナンバーワンは、米沢名物「牛肉どまん中」。しかし今からいくのは米沢駅。なんだかくやしいので、秋田県の牛肉弁当にしました。なまはげ秋田も憧れの地ですから。カッパは念願の「平泉うにごはん」を手に入れ、ご満悦。

がっつり弁当かっこんで、9時半には米沢駅着。
まずは「猫に蛸」をつくっている相良人形の工房を目指します。駅のにぎわいとは反対側の住宅街を、北風に吹かれながら歩くこと15分。着いたものの、なんと休業中。貼り紙には「猫に蛸の在庫はありません」。さらに「体調不良。病人がおります」。それはどうかお大事に! そーっとその場を離れました。
「猫に蛸」という最大の目的を失い、さっそく見知らぬ土地で途方に暮れる我々。

駅の観光案内所でもらった地図やパンフレットを広げてみます。
寺、神社、石、のオンパレードですが、そのなかに、私にとっては輝く名前の神社を発見。
「アイディアの泉神社」ですって。アイディア、泉のように湧き出てほしい! あやかりたい!
印だけを頼りに、地図の読める女ガッパの案内のもと、再びただの住宅街を歩き続けること30分。大きな道路の交差点の一角に、その神社はありました。しかしなんだか様子が……。

賽銭箱の上にブロックみたいな石が積まれ、まわりには何体もの猿の像。水色に塗られた樽があり、その上になぜかテレビのモニター。画面に紙が貼られていて、「世界一水水(みずみず)しい。ご自由にお飲みください」とあります。猿が囲む井戸があるので、その水を飲めということか。
しかし、その「水」と「アイディア」のつながりや由来の説明は一切なく、一応手を合わせてはみたものの、到底ご利益があるとは思えません。そのへんのおじさんが適当に文化祭気分でつくったのでしょうか。
見知らぬ交差点で、またもや途方に暮れる我々。

再び地図を開きます。すると20分ほど歩いた先に、上杉謙信を祀る「上杉神社」があることがわかりました。参道を歩けばなんかあるだろう、観光地にいけばタクシーが拾えるだろうとやみくもに歩き出した私たちの思惑はあたります。
途中にあった「米沢織物歴史資料館」では美しい織物が見られたうえに、ハタ織り体験までできました。
神社の横にあった立派な建物「米沢市上杉博物館」に入ると、いきなり立派な能舞台があり、こどもたちが能のお稽古中。いいもの見ました。

タクシーにも無事に乗ることができ、宿泊先とはまた別の温泉地「小野川温泉」へ向かいます。ここで、ランチ&ひとっぷろ、という計画です。

小野小町が開湯したと伝えられる「小野川温泉」。タクシーのドアがあくと、運転手さんが「いいにおいですね~」。そのにおいにつられるままに「お食事処 龍華」に入りました。
細打ち縮れ麺とあっさり醤油スープの米沢ラーメン。温泉の湯を利用して栽培する「小野川豆もやし」も有名なのですが、「もやしラーメン」が食べられるのは冬だけで、1週間後からとのこと。となりのカップルも残念そう。しかし歩き続けて腹ぺこの私たちにとっては、なるとののったシンプルなラーメンも最高においしくて大満足。

さあ、温泉だ。
200円で入れるという「小町の湯」にむかいます。
温泉街から少しはずれて、川沿いを歩き、橋を渡ったらあるはず。なのですが、橋のむこうには、山と、資材置き場のようなほったて小屋しか見えません。「地図ではここのはずなんだけど……」。橋を渡ると、ほったて小屋こそがまさにその温泉。人の気配はありません。
女湯と書いてある扉が開いたのでおそるおそる入ってみたら、いきなり露天の岩風呂がドーン。横に申し訳ていどの屋根がついた脱衣所があり、賽銭箱のような箱にお金を入れるシステムのよう。洗い場、カラン、トイレ、洗面台、などといった設備はゼロ。まわりを囲むのは板一枚の塀だけ。

ここでひるむか、「わーい」となるかは人それぞれでしょうが、カッパも私も後者のほう。
服を脱ぎ捨て、温泉の湯が流れこんでいるカメから洗面器で湯をすくって体を洗い流し、どぼん。
ほったらかしなのに、適温! 湯の花! 青空! 紅葉!

「はー、山形っていいところだね」
湯につかりながら、はやくも山形県全体の感想を述べるカッパ。
住宅街を歩いた疲れもアイディアの泉神社のもやもやもすっかりふっとび、100円玉をふたつ小箱に入れて、温泉を出ました。

はー、山形っていいところ。
 

*きょうの昭和*なんだかかわいい小野川温泉の土産物屋の一角。卵を買って温泉でゆでる、という憧れの行為もここで叶います。
*きょうのごはん*小野川温泉には「どこでも出前」なるサービスが。青空の下やかまくらの中から米沢ラーメンの出前がとれるそう。

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山田マチ『ひとり暮しの手帖』

実家をはなれて、およそ20年。 これまでも、きっとこれからも、ひとり暮し。 ここには、ひとり暮しのいろいろなことを書きつけます。 このなかのどれかひとつくらいは、あなたの心に届くかもしれない。 いや、ぜんぜん届かないかもしれない。 そんなふうな、 これは、ひとり暮しの山田の手帖です。

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