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《京都ガイド本大賞・リピーター賞》受賞!京都の路地裏

2019.07.13 公開 ポスト

そこでしか買えない!京都の地元民とっておきの和菓子の名店柏井壽

すっかり観光地化されてしまった京都。しかし大通りから一歩、路地を入れば、そこには地元民だけが知っている「本当の京都」が広がっているという。小さな寺社や、昔からの言い伝えが残る不思議スポット、一子相伝の和菓子屋、舞妓さんが通う洋食屋、本当の京料理を出す和食店……。『京都の路地裏』には、こうしたレアな情報が盛りだくさん。本書に収録されたとっておき情報を、少しだけご紹介しましょう。

*   *   *

古式ゆかしい『大黒屋鎌餅本舗』

店へと誘う目印は『阿弥陀寺』。〈織田信長公本廟〉と刻まれた石碑が門前に建っている。本能寺の変で討たれた信長と、その子信忠がこの寺に葬られているという。

(写真:iStock.com/tawatchaiprakobkit)

信長の墓だとか御廟は日本中に散見される。京都でも『大徳寺』の塔頭『総見院』にもあるが、これは多分に秀吉が政治的な思惑を持って建立したものだろうと思う。他所の墓も、何かしらの縁があったり、伝承によって墓所と伝わってはいるが、どうも信憑性には乏しい。

そこへいくとこの『阿弥陀寺』本堂の東側墓所に、信長父子の墓が並んでいる。その左横には蘭丸、力丸、坊丸と、信長に殉じた森三兄弟の五輪塔が建つ。そしてその御廟を守るかのように、ずらりと外縁を家臣の墓が取り囲む。きっとこここそが真の御廟に違いないと思わせる、神性を備えている。

この寺の向かいの路地を入ったところにあるのが『大黒屋鎌餅本舗』

寺町通から西へ続く路地の奥に店を構えて、どれくらいの年月が経っているのだろうか。かつてこの店の周りはどんなだっただろう。そんな思いを馳せたくなるような、古式ゆかしい佇まいの菓子屋。

屋号が示す通り、この店の名物は鎌餅。シルクのような滑らかな羽二重餅に、上品なこし餡を包み、鎌先の形に似せた餅菓子。その歴史は、古く江戸時代に農民たちが、鎌を腹に入れると豊作になると、好んで食べたことから始まったと伝わる。

名物の鎌餅。手に取ると、餡の重みで、クタッと垂れ下がり、まさに鎌のような形になる。

口に入れると、滑らかな舌触りの餅がふるふると滑り、おそるおそる歯を入れると、餡に含まれた黒糖の爽やかな甘みが口中に広がる。

ひとつひとつ、経木に包まれて、木箱に並べられる。丁寧に作られていることが、ひと目で分かる

包装紙にも物語がある

注目したいのは箱を包んでくれる包装紙。鎌で稲を刈る農民の姿が洒落た筆致で描かれている。この絵は画聖富岡鉄斎に師事した、本田蔭軒の作。『阿弥陀寺』滞在中に、鎌餅をいたく気に入った蔭軒が、この店の為に描いたもののようだ。

(写真:iStock.com/AKKHARAT JARUSILAWONG)

京都に於いて、菓子には、必ずと言っていいほど、こういうエピソードが付いてまわる。店があり、寺があって、そこを人が行き来する。その中で育まれて来た菓子と掛紙。

デパ地下でも、駅の売店でも、長蛇の列を作って今様の和スイーツを買い求める姿が目につくが、それらには歴史を重ねてきた菓子が持つ、こういう必然の流れというものがない。

トレンドを分析し、著名なデザイナーの手によって作られただろう菓子とパッケージ。そこには何ほどの物語もない。どれほどの数を作っているのか。どこで、誰が、どんな風にして作っているのだろうか。多くの人、おびただしい数の器械によって生み出される量産品であることは、疑う余地がない。決してそれを否定はしないが、路地裏の名物菓子と、どちらが京都という街にふさわしいかと言えば、誰の目にも明らかだろうと思う。

この店の鎌餅。最近ではデパ地下でも時折り見かけるようになり、通販も行っているようで、些か有り難みが薄れている。その代わりと言っては何だが、もうひとつの名物懐中しるこや、でっち羊羹を買い求めるのも一興。どちらもあっさりした甘さが身上。取り分け懐中しるこは懐かしさも手伝って、しみじみと美味しい。

関連書籍

柏井壽『京都の路地裏 生粋の京都人が教えるひそかな愉しみ』

観光地化された京都には、京都っぽいものが溢れており、本当の京都はないと著者は憂う。古き良き京都らしさが残っているのは、地元民の生活感が漂う、大通りから一本入った路地裏の細道。そこを歩けば、地元民が参拝に通う小さな寺社や、昔からの言い伝えが残る不思議スポット、多店舗展開しない漬物の老舗、一子相伝の和菓子屋、舞妓さんが通う洋食屋、京風料理ではなく本当の京料理を出す和食店……に出会える。京都に生まれ育ち、歩き尽くした京都のカリスマが、「本当は教えたくない」とっておき情報を紹介。

柏井壽『京都の定番』

近年、穴場的な「隠れ名所」が注目されがちな京都。だが、京都を愉しむなら、まず「定番」を押さえたい。誰もが知る名所・名店・祭事でも、その成り立ちや、今に至る歴史の流れまで知る人は少ない。名刹の背後にある物語、「京都風」でない真の京料理を守り続ける料理人の心意気、都人の春夏秋冬の愛で方、花街のルールなどについて知ると、京都の奥ゆかしさや美しさの理由が分かる。この街で生まれ育った著者でさえ、定番を改めて辿ってその奥深さに驚愕した。数多の情報に振り回されず、本当の京都を知るための究極のガイド。

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 「私は京都好き」と言いたいあなたのために、本当は内緒にしておきたい(←編集者の本心!)、とっておきの名所・名店を紹介します。

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柏井壽

一九五二年京都市生まれ。大阪歯科大学卒業。京都市北区で歯科医院を開業する傍ら、京都の魅力を伝えるエッセイや、日本各地の旅行記などを執筆。『おひとり京都の愉しみ』『極みの京都』『日本百名宿』(以上、光文社新書)、『京都の路地裏』(幻冬舎新書)、『日本ゴラク湯八十八宿』(だいわ文庫)、『おひとり京都の春めぐり』(光文社知恵の森文庫)、『泣ける日本の絶景』(エイ出版社)ほか多数。
自分の足で稼ぐ取材力と、確かな目と舌に定評があり、「Discover Japan」「ノジュール」「dancyu」「歴史街道」など、雑誌からも引っ張りだこ。京都や旅をテーマにしたテレビ番組の監修も多数行う。
柏木圭一郎名義で、京都を舞台にしたミステリー小説も多数執筆する一方、柏井壽本名で執筆した小説『鴨川食堂』(小学館文庫)が好評で、テレビドラマ化も。
二〇一三年「日本 味の宿」プロジェクトを立ち上げ、発起人として話題を集める。
二〇一五年、京都をテーマに発足したガイドブックシリーズ「京都しあわせ倶楽部」の編集主幹としても。
プロフィール写真撮影:宮地工

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