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《京都ガイド本大賞・リピーター賞》受賞!京都の路地裏

2015.10.21 更新 ツイート

第4回:第三章 路地裏細道の不思議発見 より

都伝説、奇妙・奇怪な逸話の数々 & 首振り地蔵――地蔵さまの頭をぐるりと一回転させて願掛け柏井壽

柏井壽さんの『京都の路地裏』が京都ガイド本大賞・リピーター賞を受賞しました。「私は京都好き」と言いたいあなたのために、本当は内緒にしておきたい(←編集者の本心!)、とっておきの名所・名店を紹介します。

古くから、京都には数々の逸話が伝わっています。おどろおどろしい話から、イイ話まで。ここで紹介する「首振り地蔵」のほかにも、路地裏歩きをドキドキさせる不思議スポットをいろいろ紹介します。

*  *  *


都伝説、奇妙・奇怪な逸話の数々

 路地裏には、何かしら不思議な空気が流れている。妖しい、と言ってもいい。狐か狸が姿を変えて現れて、澄ました顔して通り過ぎて行きそうな、そんな空気。

「あのな、昔ここで、おかしなことがあったんやで。それはな……」

 祖母に連れられて寺参りをした帰りなどに、路地の奥を覗き込んで、そんな話をよくしてくれた。

 祖母はどこまでその話を信じていたのか。今となっては知るすべもないのだが、モノノケが主役となる話や、時に教訓めいた話もあり、大抵の話を僕は信じ込んでいた。そしてその場所をひとりで通らねばならなかったときは、全速力でそこを走り抜けたものだ。

 都市伝説に倣うなら、都伝説とでも呼びたくなるような奇妙、奇怪な逸話がそこかしこに残されていて、それに因む場所が今もちゃんとあるというのが、京都が京都たる所以(ゆえん)なのかもしれない。おどろおどろしい話から、ちょっとイイ話まで。路地裏に潜む不思議話をいくつか。

 

首振り地蔵──地蔵さまの頭をぐるりと一回転させて願掛け

 ちょうど表通りと裏路地の関係によく似ている。

 京都を訪れたなら、誰もが必ずお参りするのが『清水寺』。断崖にせり出すようにして建つ清水の舞台はあまりにも有名だ。京都を訪れて、一度も『清水寺』を参拝したことがない旅人など居ようはずもない。

 であったとして、そのうち、どれほどの旅人が首振り地蔵に気付いただろうか。

 北からなら、二寧坂(にねいざか)、産寧坂(さんねいざか)(二年坂、三年坂)と辿り、西からだと松原通りを、南からは茶碗坂、五条坂を上って来て、やっと目指す朱塗りの仁王門が見え、きっと心が逸るのだろう。一目散に石段を目指す。これを表通りに喩えるなら、その左手、北側に建つ『善光寺堂』はさしずめ裏路地に当たるだろうか。小さなお堂に目を向ける参拝客は極めて少ない。

 元は地蔵菩薩を本尊とする地蔵院だったが、今は洛陽三十三所観音霊場の第十番札所として、広く観音信仰を蒐(あつ)めている。

 堂内には、鎌倉時代末期作と伝わる如意輪観音坐像(にょいりんかんのんざぞう)や、本尊の地蔵菩薩立像(じぞうぼさつりゅうぞう)が安置され、『善光寺堂』の名の由来となった、善光寺如来堂の本尊、善光寺型阿弥陀如来三尊像が並んでいる。

 不思議があるのは、このお堂の手前右手に建つ小さな祠。ここにおわします地蔵さま。なんと首が回るのである。

 先ずは一礼。おもむろに両手で地蔵さまの頭を持ち、ぐるりと首を一回転させてから、願い事を唱えると、たちどころにその願いが叶う、と言われている。また、恋心を寄せる相手の方に首を向けて願うと、恋愛が成就するとも。

 更なる俗世間的な願いは借金完済。借金で首が回らぬ、とはよく言われる話で、これだけ首が回るのだから、願いを込めれば借金で困ることが無くなる──かどうかは定かで無い。

 これを始めとして〈清水寺の七不思議〉と呼ばれるものがあるが、それらは、多くの参拝客が目を向けない、堂の裏や脇道に潜んでいる。

 その一例が仁王門の石段下に建つ狛犬(こまいぬ)。

 通常は神社の鳥居脇にあるのが狛犬。それがなぜ、寺の山門下に? という疑問の答は、『清水寺』の奥に『地主神社』があるから。つまりこの仁王門は、寺と神社の、共通の入口になっているということ。これも又珍しいが、更なる不思議は左右の狛犬の口。

 普通の狛犬は阿吽(あうん)の一対になっていて、犬は口を開いた阿形(あぎょう)と、口を閉じた吽形(うんぎょう)が向かい合い、万物の始まりと終わりを象徴すると言われている。しかしこの仁王門の前の狛犬は、どちらも口をあんぐりと開いている。つまりは阿と阿。

 始まりだけで終わりがない。のではなく、釈迦の教えを大声で説くために大口を開いているのだ、というのが寺の見解。

 人の背中ばかりを見て、順路に従って歩くのではなく、参道の脇にも目を遣れば、たとえ有名寺社だとしても、そこにはガイドブックには記されていない。不思議が隠れている。

*  *  *

次回「『そこでしか買えない』貴重な店は細身にある & 野呂本店――この店一軒でしか買えない漬物を」は10月25日(日)に公開します。お楽しみに!

関連書籍

柏井壽『京都の路地裏 生粋の京都人が教えるひそかな愉しみ』

観光地化された京都には、京都っぽいものが溢れており、本当の京都はないと著者は憂う。古き良き京都らしさが残っているのは、地元民の生活感が漂う、大通りから一本入った路地裏の細道。そこを歩けば、地元民が参拝に通う小さな寺社や、昔からの言い伝えが残る不思議スポット、多店舗展開しない漬物の老舗、一子相伝の和菓子屋、舞妓さんが通う洋食屋、京風料理ではなく本当の京料理を出す和食店……に出会える。京都に生まれ育ち、歩き尽くした京都のカリスマが、「本当は教えたくない」とっておき情報を紹介。

柏井壽『京都の定番』

近年、穴場的な「隠れ名所」が注目されがちな京都。だが、京都を愉しむなら、まず「定番」を押さえたい。誰もが知る名所・名店・祭事でも、その成り立ちや、今に至る歴史の流れまで知る人は少ない。名刹の背後にある物語、「京都風」でない真の京料理を守り続ける料理人の心意気、都人の春夏秋冬の愛で方、花街のルールなどについて知ると、京都の奥ゆかしさや美しさの理由が分かる。この街で生まれ育った著者でさえ、定番を改めて辿ってその奥深さに驚愕した。数多の情報に振り回されず、本当の京都を知るための究極のガイド。

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柏井壽

一九五二年京都市生まれ。大阪歯科大学卒業。京都市北区で歯科医院を開業する傍ら、京都の魅力を伝えるエッセイや、日本各地の旅行記などを執筆。『おひとり京都の愉しみ』『極みの京都』『日本百名宿』(以上、光文社新書)、『京都の路地裏』(幻冬舎新書)、『日本ゴラク湯八十八宿』(だいわ文庫)、『おひとり京都の春めぐり』(光文社知恵の森文庫)、『泣ける日本の絶景』(エイ出版社)ほか多数。
自分の足で稼ぐ取材力と、確かな目と舌に定評があり、「Discover Japan」「ノジュール」「dancyu」「歴史街道」など、雑誌からも引っ張りだこ。京都や旅をテーマにしたテレビ番組の監修も多数行う。
柏木圭一郎名義で、京都を舞台にしたミステリー小説も多数執筆する一方、柏井壽本名で執筆した小説『鴨川食堂』(小学館文庫)が好評で、テレビドラマ化も。
二〇一三年「日本 味の宿」プロジェクトを立ち上げ、発起人として話題を集める。
二〇一五年、京都をテーマに発足したガイドブックシリーズ「京都しあわせ倶楽部」の編集主幹としても。
プロフィール写真撮影:宮地工

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