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北極かえるのコモンロー日誌

2019.07.08 更新

カナダ移民局は「真実の愛」を審査してくれる吉村静

2019年1月、カナダ議会は、今後3年間で100万人以上の移民を受け入れる計画を発表しました。20年には36万人、21年には37万人の永住者を新規に受け入れる計画だそうです。(CNN.co.jp「移民歓迎のカナダ、3年間で100万人超の受け入れ表明」)。そんな移民大国カナダのユニークな制度「コモンロー・パートナー」を利用し、今年永住権を取得したひとりの日本人女性がいます。「自然に囲まれた土地で、自分らしく生きたい」と、日本を飛び出し世界中を旅した末に、彼女はなぜカナダを選んだのか? 知られざるカナダ生活をお届けします。

* * *

カナダで「コモンロー」として永住権を申請する際には、政府に私たちの関係、つまり「真実の愛があるかどうか?」をあの手この手を使って証明しなければならない。

というのも移民大国であるカナダは、コモンローや偽装結婚で移民しようとする人が絶えないらしいのだ。

ややこしそうだなぁ……と最初は思ったのだけど視点を変えてみれば、政府の審査官、つまり同じ人間に「あなたたちは本物の愛を育んでるだねぇ。はいっ、永住権どーぞ!」って思ってもらえるようにいろいろなものを用意して説得してって……なんかアナログでええやん!!! と、あたたかい気持ちになったことを覚えている。

センター試験みたいに穴埋め問題の答えが一つに限られているのと違って、カップル1組1組に、いろんな愛の証明や表現があるんだろうなぁと想像しながら。

さて、で、具体的にどう証明するのか

まずは、ふたりがはじめて出会った瞬間のこと、さらにどのように恋に落ち、どこに惚れ、どんな日々、または困難を乗り越えて今にいたるのか。

つまりふたりの愛の歴史について、ひたすら詳細に書いていく。

これはもちろん各自書かなければならないのだけれど、「え~わたしのそんなところが好きだったのね♡」とお互いの文章を読んでほっこりする瞬間もあって、なかなか悪くないプロセスだ。

でも作り話と思われないように、ウハウハな部分だけでなく、覚えている範囲で具体的な日付や場所、天候なども書き込んでいかねばならない。結構覚えていないもので、でもパートナーは覚えていたりするとちょっと焦る。

また、その他に政府が推奨する「こんなものがあるとなお良いよ」リストには次のようなものがある。

・2人の関係を表す写真
・手紙やメールの履歴
・2人の名前が記載された賃貸や公共料金、航空券などの支払い明細書や銀行のジョイントアカウント
(※)
(※「ジョイントアカウント」とは、2人で一つのアカウントを共有すること。精神面だけでなく、経済的にもお互いを支えあっている証明になる)

手紙とはつまり……「ラブレターを添付してちょうだい」ということだ(LINEとかメッセージ履歴の印刷でもOK!)。「いやいや今の時代、紙のラブレターなんか送らないでしょ」と思われるかもしれないが、私たちは同じ家に住んでいてもことあるごとに小さなラブレターを書いたりしていたので、結構残っていた。アナログ万歳!

ただ難しかったのが、「第三者からふたりに宛てた手紙があるとなお良い」とのアドバイスだ。

「あ、そんなの楽勝。お母さんからの手紙(ルイスのことが書いてある)があるもーん!」

……とこれが大誤算。お母さんから送られてくる手紙は当然、すべて日本語なのだ。カナダの永住権申請は英語、もしくはフランス語で行わなければならず、日本語の文章はすべて翻訳会社を通して翻訳しなければならない。

「ルイスと仲良くやっていますか?」「ルイちゃんにもよろしくね」と、完璧な「その言葉が欲しかった! 文言集」にもかかわらず、そのままでは添付できない。

しかし、そのことを昔バンクーバーで出会い、現在はオーストラリアに住むルイスとも共通の友人に話したら、数週間後に彼から私たち宛てに手紙が届いた。

「ルイス、しずか、元気ですか? ふたりのことだから仲良く暮らしていることでしょう。ニュージーランドでの暮らしはどう? ……」

優しいなぁ。持つべきものは友達です。

ちなみにその後、私も友人がコモンローカップルで永住権を申請する際に「しずか~! 第三者からの手紙書いて~!!! 涙」と頼まれ、ふたりのラブラブ具体例をふんだんに盛り込んだ手紙を書いたりもした。

みんな必死である。

「ふたりの愛が証明できる写真」というのも、これまた偽装したものだと思われないように、

・お互いの家族や友人が一緒に写ったもの(家族責め
・海外旅行に行った時のもの(場所責め
・遠距離恋愛になるのが悲しくて泣いている自分の写真(感情責め

など、とにかくいろんな情景を織り交ぜた。

実際に提出した姉家族との一枚。鍋に笑顔にほやほやの赤ちゃんという家族ぐるみ感1000%のこの上ない逸品だ。

ちなみに私たちは前述したように、ニュージーランドやインドを旅しながら申請していた。これがなかなか大変だった。

旅の合間をみては地域の図書館のパソコンで作業する。でも公立の図書館は、たいていパソコンを借りられる時間は30分程度後ろで待っている人がいて強制終了っていう日もあった。かと思えば、図書館の人が「まーたあいつら来たわ(笑)」ということで、しれっとパソコンの時間を延長してくれたりした。

そのほかにも、過去10年間に、(1)住んだ場所の住所全部、(2)行った国とその日付全部、これらも全て申告せよとのことで……、あーもう全然覚えてナス…。

国の情報は航空券やパスポートで覚えているけれど、住所は何度も何度も引っ越しているし、いちいち記録していない。これは本当に履歴が残っていなかった。

ここで登場したのが、アナログ界を長年に渡ってリードしている存在、「お母さん」だ。

母とはずっと手紙を送りあっていて、私から送った手紙は全て残してくれていたのだ。というわけで発送元住所、つまり私の住んだことのある住所が京都の大学生だった頃から全て判明した。母アーカイヴ、おそるべし! 

最近の母からの手紙。エアメール(Air  Mail)がエアミール(Air Meal=空気の食事?)に……。ここで一句。「気にしない 小さなことは 気にしない」。

と、いろんな人に支えられながら取れた永住権でした。大変だったけれど、北極かえるだってやればできるのだ! その喜びを胸に新しい生活をスタートしています。

さて、次回は「なんでそもそもカナダなの?」をお送りしたいと思います~! 

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北極かえるのコモンロー日誌

移民大国カナダのユニークな制度「コモンロー」を利用し、2019年、永住権を取得したひとりの日本人女性がいます。「自然に囲まれた土地で、自分らしく生きたい」と日本を飛び出し世界中を旅したすえに、彼女はなぜカナダを選んだのか? カナダでの暮らし、コモンローって何? 生き方の選択肢を探る連載です。[アイコンデザイン / 永井あゆみ]

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吉村静

1987年、新潟県長岡市生まれのランナー。走歴25年。ランニング雑誌の出版社に勤めた後にカナダへ渡り、トレイルランニングやハイキング、日々のお散歩に没頭する。カナダで2年過ごしたのちに南米やニュージーランド、インドなど様々な国で写真を撮りながら旅をする。2019年からカナダの永住権を取得し、現在はバンクーバーで暮らす。トレイルランニング用品専門店Run Boys! Run girls!のウェブにてアウトドアスポーツのある生活を綴る「Tip of the iceberg Newspaper」という名のブログも更新中。バンクーバーのヌーディストビーチで開催される裸のランニング大会Bare Buns Run2014年大会女子の部優勝。

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