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北極かえるのコモンロー日誌

2021.02.23 更新 ツイート

詩人・アリが気づかせてくれた「自分が“マイノリティ”である」という経験 吉村静

日本を離れた6年前からテレビのない生活を続けている。以来毎朝ラジオかポッドキャストを聞いていて、最近は「TED Talk Daily」という毎日1つ新しいエピソードが更新されるポッドキャストを聴いている。数日前は詩人・アリさんの「“人であること”という言語」という回を見つけて聴いていたのだけれど、それがすごく興味深かった。

 

アリさん曰く、日本語、英語みたいな「言語」の他に、「癌を告知された家族を見守る言語」、「太っていることを惨めに思ったことがある人の言語」、「毎月のやりくりが厳しい人たちの言語」そして「マイノリティという立場にいる人たちの言語」といった、「経験を通した言語」があるという(→講演の日本語訳)。

バンクーバーにも春がそこまで来ている~!
と思ったら雪降ってきた~! 私は雪国の人の言葉もわかるのかな?

自分に置き換えてみると、そういう意味ではカナダに来てから「英語」だけじゃなくて、いろんな経験を通した言語を話せるようになっているかもしれない。例えば「他の国に移り住んだ人が使う移民の言語」、「言葉が通じなくて苦しんだことのある人の言語」、「仕事も交友関係もゼロから始めなきゃいけない人の言語」などなど。そんなふうに考えてみると、ゲームの中の新しいアイテムを見つけたような気持ちになる。つらい経験、弱い立場に立つ経験は、新しい言語を獲得することでもあり、それは同じような境遇の人たちの立場に立って物事を考えられる機会を得ているのかもしれない、と考えた。

雪が数日で溶けて畑を見に行ったら小さなカリフラワーが踏ん張っていた! 泣ける!

自分が弱い立場に立ったことがあると、今自分が住んでいるところから全然離れた世界の“どこか”で起きているニュースを見ても、心が痛むのはそのせいかも知れない。世界のどこでも移民に対する差別はあるし、そういうニュースをみると心底悲しくなる。でもそういう気持ちが、想像力を掻き立てるし、いろんな世界で起きている問題が「各国」じゃなくて地球全体の問題のように思えてくるし、そういう感覚がこれからもっと必要なんじゃないかな? とも感じる。

海はどこへでも繋がっていると考えるとホッとする。

日本にいた時は他の国に友達なんていないし、正直「移民」とか「少数派」と聞いてもピンとこず、普段の生活の中でそれについて考えることすらなかった。でもカナダにいると、「英語」と言う言語も使うし、アリさんのいう「経験を通した言葉」で語られた情報や物語を見たり聞く中で、いろんな境遇で生きている人たちがいるんだよなぁ、ということを常に思い出させてもらっているような気がする。

植物たちもいろんな場所で生きている~。

このTEDトークを見てから、まぁバンクーバーはアジア人人口高いとはいえ、私はカナダにおいては他の国からやってきたアジア人というマイノリティなのかぁ、と今更ながら気づいた。自分で自分を少数派と考えたことはなかったけれど、LGBTQ2コミュニティなどの「少数派」と言われる人たちのことについてもっと知ろう! とカナダに来て思いはじめたのは、無意識のうちに自分もマイノリティってことをわかっていたからなのかも知れないなぁ。

家の近くの凍った池。いつもここにいる鴨たちが今日はいなかった。

でも弱い立場に立ったことだけじゃなくて、「そうならないように促してくれる人たちの言語」もある気がする。というのは最近今働いているアウトドア用品のお店のミーティングで、よくマイノリティや差別の話になり、先日は代名詞をなんて呼び合うかということをみんなで話し合った。「憶測でのSheとかHeじゃなくて、これからはその人が呼んで欲しいように呼びたい。SheもHeもTheyも嫌であれば名前で呼ぶようにするよ。言いたくない人は言わなくても全然OK!」ということをオープンに話したり、お客さんから差別的な発言があればすぐにマネージャーに言う、アグレッシブな場合は警察を呼ぶ、などなど、みんなが大事にしたいこと、「これはあかん!」と言うことをちゃんと話せる環境を整えてくれるっていうのはすごくありがたい。

寒さで元気が出ない時は、パートナーのルイスが去年手伝いした養蜂の蜂蜜をぺろり。

「人生無駄なことなんてない」、みたいなことってよく言われるけれど、この「経験の言語」と言う考え方を知ってからほんまにそうかも知れないなぁと思う。

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コメント

幻冬舎plus  環境や立場が変わると見えてくることがあります。フラットに話し合える環境も大事かも。〔そ〕 詩人・アリが気づかせてくれた「自分が“マイノリティ”である」という経験|北極かえるのコモンロー日誌|吉村静 - 幻冬舎plus https://t.co/NcZUAQZPoz 3日前 replyretweetfavorite

詞華集BOT  【WEB記事】詩人・アリが気づかせてくれた「自分が”マイノリティ”である」という経験|北極かえるのコモンロー日誌|吉村静 ~ 数日前は詩人・アリさんの「“人であること”という言語」という回を見つけて聴いていたのだけれど、それがすご… https://t.co/dI3qmJAtWM 3日前 replyretweetfavorite

林けいこ  詩人・アリが気づかせてくれた「自分が”マイノリティ”である」という経験|北極かえるのコモンロー日誌|吉村静 - 幻冬舎plus https://t.co/0y36b8IgAy 3日前 replyretweetfavorite

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北極かえるのコモンロー日誌

移民大国カナダのユニークな制度「コモンロー」を利用し、2019年、永住権を取得したひとりの日本人女性がいます。「自然に囲まれた土地で、自分らしく生きたい」と日本を飛び出し世界中を旅したすえに、彼女はなぜカナダを選んだのか? カナダでの暮らし、コモンローって何? 生き方の選択肢を探る連載です。[アイコンデザイン / 永井あゆみ]

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吉村静

1987年、新潟県長岡市生まれのランナー。走歴25年。ランニング雑誌の出版社に勤めた後にカナダへ渡り、トレイルランニングやハイキング、日々のお散歩に没頭する。カナダで2年過ごしたのちに南米やニュージーランド、インドなど様々な国で写真を撮りながら旅をする。2019年からカナダの永住権を取得し、現在はバンクーバーで暮らす。トレイルランニング用品専門店Run Boys! Run girls!のウェブにてアウトドアスポーツのある生活を綴る「Tip of the iceberg Newspaper」という名のブログも更新中。バンクーバーのヌーディストビーチで開催される裸のランニング大会Bare Buns Run2014年大会女子の部優勝。

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