シルバーウイーク特にやることもなかったが、せっかくだからと回転すしを食うことになり、ちいさくてかわいいものの件で大炎上したすし屋に行ってきた。
別に選んでそこにしたわけではない、当初は別の店に行く予定だったが、テーブル席の予約がそこしか空いていなかったのだ。

中高年から不用意に「背もたれ」を奪うと一瞬の油断で往年の桂三枝師匠と化すのでこれは安全対策として欠かせないのだ。これ以上回転すし界隈全体の空気を悪くするわけにはいかない。
それに景品を横流しした奴に罪はあってもレーンを流れる魚介に罪はないだろう。
そんなわけで、夫に対し「じゃあ絶賛炎上中のすし屋に行きまっしょい!」と、配偶者選びにミスったことが3秒でわかる声かけをして出発しようとしたのだが、夫はこの炎上のこと自体を知らなかった。
だが、これは想定内である。
夫はニュースを見ないわけではない、ただ私が主にXこと世界一のドブ川を一日中見つめているのに対し、夫は「農業新聞」という比較的清流を眺めており、情報源の水質が違いすぎるのだ。
だったらこの温水(ぬくみず)育ちに、世間ではどれだけ汚いことが起こっているか説明してやろうと思ったのだが、夫がちいさくてかわいいもの自体を知らなかったのは流石に想定外であった。
今の日本でちいかわを視界に入れないなんて香川でうどん屋を1回も見ないぐらい不可能なのではないか。
夫は視力が悪いが視界もフクロウレベルしかないのではないか。フクロウは首を270度回転することでカバーできるが人間がそれをやると普通に死ぬ。
だが、どうやら夫はちいさくてかわいい奴ら自体を見たことはあるようだ、ただそれが何なのかを今まで追求してこなかったため、それがちいかわだと認識していなかったのだ。
そんなことあるかとも思うが「興味」がなければそんなものなのかもしれない。
こち亀のコピペでもおなじみなように、人間は興味がなければ視界に入ってもそれを気にすることはないし、説明されても全部同じに見えてしまうのだ。
おそらく、夫にとってはキティさんもちいかわも同じに見えているのだろう。
私もちいさくてかわいい奴らのことはよく知らないが、それでもキティさんはロック、ちいかわは倉橋ヨエコぐらいの差は感じる。
しかし、私も車を運転するし、その際他の車も見るが、その車が何なのかなどイチイチ気にしないし、何なら私が今乗っている車の車種もとっさには出てこない。
よって夫にちいさくてかわいい奴らのことを説明したところで明日にはキティさんと融合されるだけなので、その点は省略し、そのキャラクターのグッズを巡り、この回転すし屋で何が起こったかを説明した。
巷で人気のキャラクターに関しては疎い夫だが、保険や貯金に関わる仕事柄「横領」は身近に感じてくれたようで「それは大変なことだ」とすぐ理解してくれたし「俺の職場でも備品を転売していた奴が」と小ネタを披露してくれた。
このように、業務上横領というのは大なり小なりどこでも起こりえるし、ポケットに会社の練り消しが入っていたなど無意識なものであればほぼ気づかれないだろう。
しかし、気づかれないと思ってエスカレートするとさすがに気づかれるし、特に注目グッズの転売などしたらすぐバレる。
そういえば私も昔似たようなことがあった。
トイレットペーパーの持ち帰りがバレて会社を辞めることになった、という話ではないし、もしそんなことがあっても黙っている。ちなみに私の前任者は皆に配る土産を1人で着服していて辞めることになったらしい。本当にどこにでもある話なのだ。
昔「クラウドファンディングでコラボカフェ」という、出版社に金を出してもらえない作家特有のイベントを行ったのだが、その時のカフェの店員には返礼品の一つであるオリジナルTシャツを着てもらっていた。
そしてカフェが終わるや否や、そのTシャツが転売されていたのである、クラファン出資者はまだそのTシャツを持っていないので、出品者は99%カフェ関係者、または俺という状況だ。
それに気づき、怒りを覚える出資者の方もいらっしゃったが、秒で特定し取り下げさせたことにより、何とか事なきを得た。Tシャツはイベント後スタッフに寄贈されるものだったので横領ではなかったことも幸いした。
規模はちいかわの2兆分の1レベルだが「モノが客の手に渡る前に売られる」に関しては、私の方が先んじていたといえる。
逆に言えば、その程度のレベルでもおかしなタイミングで転売すればバレるということだ。
グッズがいくらで売れたかは知らないが、損害賠償よりは安いと思うので、うかつに手を出さない方がいい。
カレー沢薫の廃人日記 ~オタク沼地獄~

- バックナンバー
-
- 例のグッズ転売炎上で思い出す、自らの転売...
- ロマサガ3リメイク発表に際して思い出した...
- 窓辺の猫推し活
- 職業「嫉妬」としての矜持と動揺と対策
- 私がパンを好きな理由
- 「推し活キャンセル保険」の補償対象から考...
- 「推し活休暇」や「推し活手当」について思...
- 頭脳勝負のリアリティショーでもカイジ的地...
- 誰か競走馬に私の著作名をつけてくれないだ...
- 「やるべきでない時にする推し活」の楽しさ...
- 「つまらない女の趣味は読書、美術館、植物...
- 推しとは「前向きな外出をする理由」になっ...
- パペットスンスン好きが考える飲食店コラボ...
- 絵を描く人間はとりあえず推しを描くし、描...
- 作家にとって「おもしろい」はアイドルにと...
- 二次元ばかり推してきた人間がはじめて三次...
- 推しが最後に一般人になったとしても「推さ...
- 中年夫婦が3時間超えの映画「アバター3」...
- 優越感を感じようとしてコンテンツを選んで...
- 自分と違う人種のことが悪い意味で気になっ...
- もっと見る











