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カレー沢薫の廃人日記 ~オタク沼地獄~

2026.04.29 公開 ポスト

「つまらない女の趣味は読書、美術館、植物」から考えた趣味の話カレー沢薫

先日Xのニュース欄に「女のつまらない趣味トップ3は読書、美術館、植物」という話題が上がっていた。

見た瞬間、言いたいことで東名高速が30キロの渋滞を起こす秀逸な見出しだが、私も最近はアンガーをコントロールしようと努めている。

このニュースをクリックするのは理性に対し1日の休暇を与えるに等しい。

世の中腹立たしいことばかりだが、回避可能な怒りを自ら拾いに行って怒っているのなら「趣味は怒り」、としかいいようがないだろう。

これは趣味が読書美術館植物の女よりも先に糾弾されるべき存在だ

そんなわけで、この話題は意識的に見ないようにしていたのだが、2日ぐらいニュース欄から消えたり現れたりしていたので相当紛糾していたことが伺える。

だが、今になって考えると、令和も8年になって人を趣味でつまらないなどとジャッジ奴が本当にいるものなのだろうか。

見出しと記事内容が全然違うというのはよくあることだし、特にXのニュースはAIが作成しているので、全く別の話題を悪魔合体させている場合すらある。

「女のつまらない趣味」というのは「女の趣味がつまらん奴はつまらん」という呪術廻戦で提唱された持論をAIが要約したものかもしれない。

それに「女の趣味トップ3」の話題が何故か融合され「女のつまらない趣味トップ3は読書、美術館、植物」という地獄みたいなトピックが生まれてしまったのかもしれない、そうだとしたらAIは特級呪霊よりも邪悪だ。

しかし、調べてみると割とそのまんまの話だったようで、やはり真に邪悪なのは呪霊より人間であり、どちらにしても夏油さんの闇落ちは防げなかったのだ。

話題の元はつきとめられなかったのだが本当に「つまらない女の趣味は読書、美術館、植物」という投稿が拡散され議論になったようだ

当然、文化的趣味をバカにしている以前に人の趣味をつまらなんて何様だという反発が多数な一方で「確かにそう」という意見もあり、さらに「女」と性別で限定しているところから、男女論争に発展していったようだ。

趣味が読書美術館植物の女がつまらないのかは置いておいて、この説を提唱した奴は間違いなく「Xで男女が殴り合うのを見るのが趣味」だろう。こういう趣味を持った奴を喜ばせないようにするためにも、SNSの話題を踏む時は慎重にならなければいけない。

私もこれは暴論だと思うし、趣味で人間性を測ろうとしていること自体趣味が悪いと思う。

だが一方で「趣味の種類も性別も関係ないが『趣味は?』と問われた時の返答がつまらない奴はいる」という耳の痛い意見も見かけた。

相手はこちらの趣味が何かをピンポイントで知りたいわけではなく話題を広げたくて聞いているのに、その意図を理解せず「読書です」と、話が広がる余地を削ぎ落した返答をする「話がつまらない奴」は存在するということだ。

非常に身に覚えがある話だ。

最近も「休みの日は何をやっているのか?」と問われて「youtubeを見ている」「ソシャゲをやっている」など、話題の翼を完全に折った返答をしてしまった記憶がある。

少し前に私が別媒体でやっている人生相談に「自分の趣味を面白く説明できない」という相談があった。

私はその相談に対し、趣味は自分が面白ければよく、布教しなければサ終か解散するという状況でなければ他人に面白さを説明する必要などないと思っていた。

今考えれば、そういう意味ではなく、趣味というよくあるテーマで話題を広げることができない、雑談下手を嘆く相談だったのかもしれない。

そうだとしたら「自分の趣味のことは自分が理解してればOK!」などと、まさに話がつまらない以前に話が通じないオタクの返答をしなくて本当に良かった。

確かに話題を広げるためであれば、趣味を一答するのではなく、youtubeのどのチャンネルを見ているとか、どこが面白いかまで言う必要があるだろう。

だがこれは一歩間違えると「相手が興味ないことを長々語るオタク」になってしまうので、結局、話が短いつまらない奴か長いつまらない奴の差でしかなくなる。

しかし「趣味はローションeスポーツ」のように、一答するだけで「何それ?」と食いつかずにいられない「話題になる趣味」を持っている人もいるだろう。

逆に言えば、読書、美術館、植物というのは「話題として広げるのが難しい趣味」という意味なのかもしれない。

しかし、会話というのは互いに作り上げていくものであり、つまらなさの原因をどっちか一方だけに問うのもおかしいだろう。

確かに「読書」だけでは話が広がる余地がないかもしれないが「趣味は?」という一問のみを投げてよこした方もなかなか会話のセンスがないのではないか。

それにも関わらず、ジャッジされ会話の責任を問われるのは、答える側だけだとしたら、常に会話は先制攻撃した側が有利ということになる。

私は会話の中で典型的な「話しかけられるの待ち」な人間で、たまに話しかけられたと思ったら、広がる余地のない返答をしてしまう会話の破壊神だ。

このままでは会話が盛り上がらない全責任が私にあるということになってしまうので、今後は誰よりも早く「趣味は」と尋ねて回りたいと思う。

 

関連書籍

カレー沢薫『人生で大事なことはみんなガチャから学んだ』

引きこもり漫画家の唯一の楽しみはソシャゲのガチャ。推しキャラ「へし切長谷部」「土方歳三」を出そうと今日も金をひねり出すが、当然足りないのでババア殿にもらった10万円を突っ込むかどうか悩む日々。と、ただのオタク話かと思いきや、廃課金ライフを通して夫婦や人生の妙も見えてきた。くだらないけど意外と深い抱腹絶倒コラム。

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カレー沢薫

漫画家。エッセイスト。「コミック・モーニング」連載のネコ漫画『クレムリン』(全7巻・モーニングKC)でデビュー。 エッセイ作品に『負ける技術』『もっと負ける技術』『負ける言葉365』(ともに講談社文庫)、『ブスの本懐』(太田出版)がある。

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