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いつまで自分でせいいっぱい?

2026.09.04 公開 ポスト

#110

七夕まつり佐津川愛美

出張で行った仙台。ちょうど七夕まつりの時期だった。仙台の七夕まつりは、今回が初めて。せっかくだから見て帰りたいなぁと話していたら、レッスンの仕事を終えたあと、七夕飾りを見ながら駅へ向かえるルートを選んでくださった。

商店街には大きな七夕飾りが、ずらりと並んでいた。

想像していたより、ずっと大きい。長い。見上げるほどの高さから、色鮮やかな飾りが垂れ下がっている。その下を、暖簾をくぐるようにして歩いていく。

 

華やかなもの、流行りのもの、面白いもの、かわいらしいもの。凝ったデザインのものもあれば、手作りの温かさが伝わってくるものもある。会社やお店、学校ごとに作られた作品もあった。

長く続く駅までの道を、何度も立ち止まりながら歩いた。

どれだけの人が、この飾り作りに携わっているのだろう。デザインを考える人がいて、材料を集める人がいて、ひとつひとつ手を動かす人がいる。細かい飾りを切ったり、貼ったり、つなぎ合わせたり。きっと華やかに飾られるまでには、目立たない作業がたくさんある。

そして、完成を楽しみに待つ人がいる。毎年ここには、どれだけの物語があるのだろう。

今年はどんなものを作ろうかと話し合った時間。うまくいかずに作り直した時間。みんなで完成を喜んだ瞬間。私が知らないたくさんの人の時間が重なり合い、大きな七夕飾りとなって、街を彩っていた。

一人では作れない景色だなぁ。

そんなことを思いながら歩いていると、今回のレッスンに参加してくれた子たちと、そのお母さんに偶然遭遇した。

仙台の街の中で知っている顔を見つけると、それだけで嬉しくなる。一緒に駅まで歩くことになった。

歩きながら、お母さんが仙台のおいしいものを教えてくれた。

「シーラカンスモナカがおすすめです!」

とにかくおいしいらしい。聞けば聞くほど気になったけれど、お店は私が向かう方向とは違いそうだった。

「じゃあ、またの機会に行ってみます」そんな話をしながら駅に着くと、突然、お母さんが声を上げた。

「あっ!あっ!ほら!シーラカンス!!」

見ると、駅でちょうどポップアップショップが開かれていた。

「たまに駅で売っているとは聞いていたけど、私も見るの初めて!これはラッキーですよ!」

それならばと、みんなで列に並んだ。一人だったら、そのお菓子の存在すら知らなかった。たとえお店を見つけても、何のお菓子かわからないまま通り過ぎていただろう。

でも、その日はみんなで並んだ。どんな味なんだろうと話したり、どれを買おうかと迷ったり。買うまでの時間まで、なんだか楽しかった。

冷やして食べるのがおススメと教えてもらって、翌日食べたシーラカンスモナカは、とびきりおいしかった。

あんこの中に塩気のあるバターが入っていて、甘さとしょっぱさが口の中で重なる。一口食べて、「これは力説したくなる」と思った。

知らなかったものを、人に教えてもらう。一人では選ばなかったものを、誰かと一緒に選んでみる。

そうすると、自分の世界に、それまで存在していなかった味や景色が増えていく。

七夕飾りも、きっと同じなのだと思う。一人では作れないものを、誰かと話し、考え、手を動かしながら作っていく。そこに、見上げて楽しむ人たちが集まって、街全体がお祭りになる。

一人で過ごす時間も好きだ。自分の好きな方向へ、自分の速さで歩ける気楽さがある。

けれど、人といることでしか広がらない世界も、確かにある。人と話す。人に教えてもらう。人と一緒に笑う。

そうやって私たちは、自分一人ではたどり着けなかった場所へ、連れていってもらうのかもしれない。

初めて見た仙台の七夕飾り。初めて食べたシーラカンスモナカ。

そのどちらも、みんなのお陰で楽しめた。ずっと心に残る仙台の思い出。

【楽】圧巻!いろんなおまつり。行きたいな。

関連書籍

佐津川愛美『今日も、自分を生きる練習』

映画『蝉しぐれ』でスクリーンデビュー以来、数々の作品で印象的な役を演じてきた佐津川愛美さん。本書は、30代後半を迎えた佐津川さんが、「演じる」ことと「生きる」ことのあいだで揺れながら、自分自身の輪郭を見つめ直した軌跡を綴った一冊です。映画という仕事場、一人旅での出会い、2年間のホテル暮らし、俳優以外への挑戦――。悩み、迷い、揺らぐ気持ちをまっすぐに見つめる誠実な言葉が胸を打つ、共感必至の初エッセイ。

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いつまで自分でせいいっぱい?

自分と向き合ったり向き合えなかったり、ここまで頑張って生きてきた。30歳を過ぎてだいぶ楽にはなったけど、いまだに自分との付き合い方に悩む日もある。なるべく自分に優しくと思い始めた、役者、独身、女、一人が好き、でも人も好きな、リアルな日常を綴る。

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佐津川愛美

1988年8月20日生まれ、静岡県出身。女優。
Instagram http://instagram.com/aimi_satsukawa

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