出張が続いている。
仙台、岡山、兵庫。今回は、子役の皆さんを中心に映像の現場について、お芝居について、お伝えするレッスン講師としてまわっている。
最初のレッスンで、「表情を出すことが苦手なんです。どんな練習をしたらいいですか?」と質問された。
うーん。気持ちを感じられているのなら、それを表に出す練習、とにかく回数を重ねて、沢山演じてみることかなぁ。。。
「日常で、いろんな人になりきってみるのはどう?」
今日はリアクションがものすごく豊かなアメリカ人。今日は気弱で、店員さんに声をかけるのにも勇気がいる人。ひとつ設定を決めて、その人としてコンビニに行ってみるとか。そんな話をした。
さて。新幹線に乗って、降りて、また乗って。長距離移動には慣れているはずなのに、近頃、移動がものすごく疲れる。急に、がたんと体の衰えを感じている。移動しただけで疲れているのだ。仕事が捗るから好きなのに新幹線。ものすごく疲れる。なんでだ。前はこんなんじゃなかった気がする。
更に今回は、夏休みの映画クラブで5日間、小学生たちと映画を作って走り回り、へろへろのまま出発。ちなみにこのスケジュールを組んだのは私だ。色んなスケジュールの都合で仕方がなかったとはいえ、自分の体力を過信していた自分に反省していただきたい。
レッスンは子どもたちにエネルギーもらえるし、テンションあがっちゃうし、全く疲れたーと思わず、とにかくとってもとっても楽しく最後まで出来ちゃったけど、終わって新幹線に乗った瞬間もうプツッと疲れは最高潮。
そんな中、用意していただいたホテルが駅直結だった。新幹線を降りて、外に出ることもなく、そのままエレベーターに乗ればホテルに着く。なんということでしょう。ものすごく楽‼︎
自分でホテルを選ぶときは、駅からの近さよりも、値段やインテリアなどの雰囲気を重視することが多い。せっかく泊まるなら、好きな感じのところがいい。駅からちょっとくらい歩いたっていいじゃない、と思っていた。
違った。出張の駅近、すごい。駅直結、もっとすごい。へろへろの体で、そのありがたみを思い知った。はー。私、歳をとったねぇ。いや、大人になったのね!
ホテルに着いたら、まず洗濯だ。今回は移動が多いので、スーツケースを持ち歩くのも大変だろうと、大きめのバッグひとつでやってきた。荷物を減らすべく、着替えも最低限。途中で洗濯すればいいという計画だ。
下調べしない民、ここで気づく。ホテルにランドリーがない。調べてみると、徒歩9分のところにコインランドリーがあるらしい。街を見れていなかったし、お散歩がてら洗濯物を抱えて向かう。
到着すると、誰もいない。乾燥機に入れたくない生地だったので、洗濯だけすることにした。料金は400円。
小銭入れを開く。100円、100円、100円。計300円。あとは500円玉。わー、残念。しかも、ちゃんと洗濯洗剤を家から持ってきたのに、ホテルに置いてきた。そーゆーこと、しちゃうよねー。
洗剤は40円で買えるらしい。もう一度、小銭入れを見る。20円。絶妙に、どっちも足りない。
さぁ、コンビニに行きますか。洗濯を待ちながらアイスとかいいな。あ、でも飲食禁止かな?それに私、ダイエット中だった。と思い出し、水を買って500円玉を出す。
無事に100円玉と10円玉を手に入れた。再びコインランドリーへ戻り、ようやく洗濯機を回す。
30分。
本当はその間に駅まで戻って、行きたかったお店に寄ろうと思っていた。でもコンビニを往復している間に21時を過ぎ、お店は閉まってしまっただろう。もういいや。ここで待とう。そういえば、街のコインランドリーで洗濯を待つという経験、あまりしたことがないなぁ。初めてだったかなぁ?
真ん中のテーブルの下にある椅子に座る。ふと、ガラスに映る自分が目に入った。
……。
街のコインランドリーで、洗濯が終わるのをひとりで待つ。これって。
映画とかドラマの世界じゃーーーん。真夏の夜。ドアも窓も大きく開いている。どうやらクーラーはないらしい。洗濯機の回る音がして、外には暗い夜の道路。人気は少なく、このコインランドリーだけが明るさを放っている。
え、映画だ! 映画の世界だ!
急に楽しくなった。ただ、ガラスの方向を向いて座ると、道路から私の顔が丸見えである。「映画みたい!」と思っている自分の顔を誰かに見られたら、なんだか恥ずかしい。すぐに窓の方を向くのはやめた。
真夏の夜、クーラーの効かないコインランドリーで洗濯を待つ30分。なんてドラマチックなんだ。そして、ふと思った。
私は大学生。部屋に洗濯機がなくて、いつもここで洗濯をしている大学生。あれ。これ、子どもたちに話したやつだ。
せっかくだから、この30分は大学生として過ごすことにした。仕事をしたら負けだ。私は大学生なのだから。なので仕事はせず、SNSを見た。結局SNSかい。なんとも無駄な30分。いや、貴重な30分。
大学生の気持ちで見るSNSは、普段と少し違った。暇だなーっていう気持ち、社会に出て働きたくないなーっていう気持ちが出てきた。大変そうだなーって。笑。そして、とにかくあっという間だった。
30分なんて、こんなにあっという間に過ぎるんだなと思った。こうやって一日が終わって、夏が終わって、一年が終わっていくのだろうか。
洗濯が終わった。洗濯物をバッグに詰めて、ホテルへ戻る。
最近、中学生の頃に流行っていた曲をよく聴いている。特に夏の曲はだめだ。一瞬で、あの頃の夏の空気まで連れてくる。イヤホンから懐かしい曲が流れる。真夏の夜道を歩きながら、ちょっと口ずさむ。
なんだこれ。え、映画や。完全に映画や。私は今、あの時代の夏を生きている大学生の主人公や。
勝手にそんな気分になって、なんだかおかしくて、なんだか気分よくホテルまで歩いた。
出張でへろへろだったはずなのに。歳をとったなぁと思っていたのに。なんだか、若返った気分。
ホテルにランドリーがなくて、小銭も足りなくて、せっかく持ってきた洗剤まで忘れて、行きたかったお店にも行けなかった。予定どおりにいかなかったことばかりだ。それなのに、妙にいい夜だった。
映画の主人公に、特別なことが起きるとは限らない。起こらなくてもいい。何も起こらなくても、切り取れば、それは作品になる。
洗濯をしたり、コンビニに行ったり、夜風が気持ちいいなと思いながら夜道を歩いたり。
そんな何でもない時間だって、自分がちょっとその気になれば、映画のワンシーンみたいになる。そう思うと、日常は案外おもしろい。
子どもたちに「いろんな人になりきってみたら?」なんて言ったけれど、どうやら私も、やってみたら楽しかった。
たった30分。SNSに溶けた30分。でも、大学生になりきっただけで、特別な30分になった。
一生懸命お芝居に向かうみんなと関わらせてもらったお陰で、私も改めて、演じることのおもしろさを教えてもらった気がする。
真夏の夜のコインランドリー。
洗濯機がぐるぐる回る音を聴きながら、ひとり勝手に映画の主人公になった。誰にも撮られていないし、もちろんエンドロールも流れない。
それでも私は、ちょっとだけご機嫌だった。人生なんて、このくらい勝手に映画にしてしまってもいいのかもしれない。
きっとあっという間に、終わってしまうのだろうから。
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いつまで自分でせいいっぱい?

自分と向き合ったり向き合えなかったり、ここまで頑張って生きてきた。30歳を過ぎてだいぶ楽にはなったけど、いまだに自分との付き合い方に悩む日もある。なるべく自分に優しくと思い始めた、役者、独身、女、一人が好き、でも人も好きな、リアルな日常を綴る。











