2026年4月28日
作家の戌井昭人さんと、一緒に仕事をする予定で、ときどき飲んでいる。
戌井さんはカッコつけをまったくしない。「もうさ、お金がないからさ、バイトしようと思って履歴書、書いたんだ!」飲む前に突然そう言われた。この時点で、こちらの奢りがまず確定した。
「パンフレット制作ってあったからさ、思いっきり『芥川賞候補として五回ノミネート』って書いたんだけどさ、書類で落とされたよ! なんだよ、ちくしょー!」酎ハイを飲みながら、戌井さんはそう言って、ほっぺたをブルブル震わせて怒った。
戌井さんの芥川賞候補作『すっぽん心中』は間違いなく傑作だと思う。ゲラゲラ笑いながら読んだ小説は後にも先にも『すっぽん心中』だけだ。
そんな戌井さんが新作を出した。『あんたはだいじょうぶ』。
足芸をする曲芸一座の家に生まれた主人公のお話。3歳でアメリカ巡業に出るが、6歳で父と生き別れ、18歳で母を喪う。第二次世界大戦中は日本人を収容するマンザナー強制収容所で過ごし、終戦後はホテルのメイドとして働いていたが、ある日、ピストルの流れ弾にあたって天啓を受け「あんたはだいじょうぶ」と唱えながら街角で足芸をはじめることに……。
……って、どんな話なんすか! と突っ込みたいがそれが戌井昭人だ。

J-WAVE『BEFORE DAWN』収録。ゲストは、新日本プロレス所属、エル・デスペラード選手。俵万智さんの次のゲストが、エル・デスペラード選手。我ながらいい番組をやっている。
***
いつもの床屋で、三週間ぶりにシェービング。指名しているマネージャーに「髭ボーボーっすね」と呆れられる。自分で髭剃ることはほとんどなく、伸びすぎたら、いつも行く床屋で、いつものマネージャーに剃ってもらっている。
「新人がふたり入ったんです!」マネージャーにそう言われて、鏡越しに、新人ふたりと軽く挨拶。「見学させていただきます!」ふたりともそう言って頭を下げた。「ああ……」と返答。
では始めます、とマネージャーが自分の頭にシャンプーをジャンジャンかける。
あっという間に、濡れ落ち葉のようになった自分を、ふたりが真剣な顔でメモを取りながら見ていた。
いつ何時でも穏やかなマネージャーが、ささやくような声で、「タオルは?」「チッ……遅い」とふたりにピリピリ注意し始める。こちらはもう深めの寝たフリをするしかなかった。
「ゴールデンウイークってあるんすか?」マネージャーがそう尋ねてきたが、寝たフリに入ってしまっていたので、シカトしてしまった。
マネージャーは無言になる。変な空気になってしまった。しばらくして、いま起きました! みたいなテンションでゆっくり目を開けると、新人ふたりが通夜の受付みたいな顔で、雑務をこなしていた。働くって大変だ。
あなたとわたしの生存確認日記

今日も無事でしたか? 燃え殻さんが毎日配信するレター「底なし日記」より、週に一度一日分を転載します。
(アイコンイラスト:大橋裕之)
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