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あなたとわたしの生存確認日記

2026.04.19 公開 ポスト

『男の料理』ですら人は揉める(3月21日)―実家に文庫『ブルーハワイ』を届ける。燃え殻

2026年3月21日

横浜の実家に、出来上がったばかりの文庫『ブルーハワイ』と文庫『それでも日々はつづくから』の二冊を持って行った。お彼岸に来てくれたことを父は喜んでくれた。

今回の文庫の巻末に、母とのことを、あとがきと称して書いた。父はその部分を読んで、「ありがとう」と言ってくれた。

父はまだ元気がない。母のことに話が向くと、それだけで涙がジワッと滲んでくる感じだ。四十九日を終えたばかりなので、仕方のないことだとは思うけれど。

 
これからも、このシリーズは朝野ペコさんのイラストでつづいていく予定

母が好きだった白あんのおまんじゅうを、お茶と一緒に出してくれた。

母は素朴な和菓子やお煎餅が好きな人だった

父は「男の料理」という料理教室に通っている。母のことがあったので、ここ二ヶ月は休んでいたが、明日からまた通い始めるとのこと。どんどんやったほうがいいよ、と告げると、「でも、料理教室に気が合わない奴がいるんだよなあ」と表情が曇る。

聞けば、料理教室に見学に来た人に、勝手に名刺を渡していた人がいたらしい。名刺には「男の料理 会長」と肩書きが入っていたという。父がその人を問い詰めると、「いろいろ連絡事項をまとめたりしているから、会長だと思っていた……」と言い出し、「新しい人の窓口になれればと思って、連絡先を渡していただけだ!」と開き直ったのだとか。

父他、通っている生徒さん(全員七十代以上)はその人(もちろ七十代以上)に、勝手にそういうものを作るな、と口頭で注意し、教室が終わったあとに、もう一度全員で話し合いが持たれたらしい。

その事件から二ヶ月、父は休んでいたので、その自称会長と再会するのが、憂鬱らしい。

横浜郊外の、老人だらけの小さな料理教室でも、勝手な行動を取る人がいるのか、と話を聞いていて、鬱々とした気持ちになった。それじゃあ、世の中から戦争がなくならないわけだ、と大袈裟なことも言いたくなった。

***
未だ左耳が聞こえづらい。鼻が詰まり、咳がまだしつこく出る。薬(ステロイド)はちゃんと飲んでいるがイマイチ。

***
そういえばこの間、東横線の車内で、おじいさん(推定八十代)とおじいさん(推定九十代)が口論しているところに出くわした。荷物が当たった、当たってない、という話っぽかった。(推定九十代)のおじいさんが「ばかっ!」と大きな声で怒鳴って、周りで見ていた人たちが、え〜っ、という感じで呆れ笑い。あの光景を見たときも、あの年でもまだ争うのか、と鬱々としたのを思い出した。戦争反対。

* * *

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(アイコンイラスト:大橋裕之)

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燃え殻

1973年生まれ。2017年『ボクたちはみんな大人になれなかった』で小説家デビュー。同作はNetflixで映画化、エッセイ集『すべて忘れてしまうから』はDisney+でドラマ化、『湯布院奇行』が朗読劇化(原作)、『あなたに聴かせたい歌があるんだ』がコミック化とHuluでドラマ化(原作と脚本)された。著書に小説『これはただの夏』、エッセイ集『それでも日々はつづくから』『ブルー ハワイ』『愛と忘却の日々』ほか多数。

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