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勝手に!裏ゲーテ 街場の旨いメシとBar

2022.05.18 更新 ツイート

#26

ご機嫌な変態が集う ド変態ロックバー編 相場英雄

〔使用機材:FujifilmX100V〕

二年以上くだらないエッセイを綴ってきたが、正直なところ、本欄でこのお店を扱うかどうか、かなり迷った。

〈取り上げていたお店、美味しかったよ〉

〈あの居酒屋、居心地がとってもよかった〉

店名や宿の名前を掲載していないにも関わらず、読者の皆さんや出版、映像関係者から多くのお声をいただいてきた。例によって屋号は掲載しない。興味があれば、自分でネット検索して行ってちょうだい……そう言い切っても良いのか。しかし、ネタ枯れ気味なのであえて取り上げてみる。

 

まず、今回のバーがある場所、実に治安が悪い。新潟の片田舎から上京してから、まもなく三六年となり、都内の盛り場や横浜は大概知っている。かつて一般人が決して言ってはいけないと呼ばれたアノ場所や、ヤバすぎな通りなど数々知っているが、このバーがあるエリアはリアルにものすごく危険。東京の北の玄関口、上野駅の近くとだけ記しておく。

実際、ボッタクリキャバクラで身包み剥がされたおじさん(リアルなパンイチ)を何人も見てきたし、その筋の人たちの揉め事を何度も目にした。朝になっても強引に外国人の客引きが腕を引っ張るのが当たり前の小路を通らねば、物理的に店に辿り着けないのだ。間違っても女性一人で行ってはいけないので、ご注意を。

カウンター席の一番目立つ場所にあるフィギュア。あの名盤を知っている人ならニヤリ。

さて店着しても、ハードルはいくつも残っている。まず扉を開けた瞬間に爆音でロックがかかっている。しかも、店主と常連客のロックの趣味、あるいは嗜好がかなり変なのだ。

大概の酒はある。音響も最高。JBLの爆音に酔うのも一興。

ロック、ブルース、リズム&ブルース、ハードロックにヘビメタ、そしてプログレの音源が店のそこかしこに。客の大半がロック系のマニア、オタク……一癖も二癖もあるどころではない。癖が束になっているのが特徴で、要するに変態ロックバーなのだ。

毎回驚くようなレア物が聴ける。
もちろん、アイバの人生を変えてしまった名盤もある。

数年前のこと。仕事を通じて知己を得たベテラン俳優さんをお店にご案内した。この御仁は自他共に認める“変態紳士”であり、芸能界でも一、二を争うロックマニアだ。各種媒体でご自身のコーナーを持ち、投稿を続ける強者でもある。このベテラン俳優さん、特にプログレッシブロックがお好きで、全世界のバンド事情に通じておられる。

〈まさか、北欧やイタリアのバンドの音源とかないですよね?〉

〈各種取り揃えてございます〉

〈マジっすか?〉

ということになり、あとは私の知らない世界の話で店主と俳優さんは朝方までマニアトーク。同じように、多種多様な音源をめぐり、癖しかない常連客と毎夜ディープなトークが続いているのだ。

勘違いしていただきたくないのだが、マニアやオタク特有の知識のひけらかし、マウント合戦がある、という意味ではない。

店主と各々の常連客のロック愛が強すぎ、側から見た景色が“変態”に映ってしまうのだ。もしご興味を持たれて訪れた際は、思い切りあなたのロック愛を店主にぶつけていただきたい。運が良ければ、常連客たちとあなたの偏ったロックへの愛情が共鳴する機会があるかもしれない。

訪れた日は、常連さんと出前のお寿司をシェア。近隣に飲食店がたくさんあるバーの幸せ。

こう書いてくると私がハードルを上げすぎた感がある。店主はかつて都内某所の隠れ家レストランの名物店長であり、物腰は柔らかく、接客は丁寧すぎるくらい(泥酔していなければの話だが)。

愛すべき変態店主。実は海外大物アーティストもこのお店を利用する。
変態グルーヴに酔う素敵な夜。

怖いもの見たさもまた一興だ。

繰り返しになるが、決して治安の良いエリアではない。店を探すときはあくまでも自己責任で。

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勝手に!裏ゲーテ 街場の旨いメシとBar

食い意地と物欲は右に出るものがいない作家・相場英雄が教える、とっておきの街場メシ&気取らないのに光るBar。高いカネを出さずとも世の中に旨いものはある!

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相場英雄

1967年新潟県生まれ。元時事通信社記者。主な著書に『震える牛』(小学館文庫)、『血の轍』、『KID』(ともに幻冬舎文庫)、『トップリーグ』  『トップリーグ2/アフターアワーズ』(ともにハルキ文庫)。近著は『アンダークラス』(小学館)、『Exit(イグジット)』日経BP、『レッドネック』(角川春樹事務所)、『血の雫』(幻冬舎文庫)、『マンモスの抜け殻』(文藝春秋)。

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