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アルテイシアの59番目の結婚生活

2021.07.18 更新 ツイート

俺の股間と黄金のような夢の話 アルテイシア

ここ二ヶ月ほどは闘いの日々だった。

まず初めに、脇の下にできものができた。そのうち治るだろうと放置していたら、どんどん腫れて人面瘡みたくなってきた。

脇を締めると痛いので、腰に手をおいてデューク更家みたいに歩いていた。デューク更家、なつい。「なつい」は若い子に教えてもらって最近覚えた。

人面瘡に市販の塗り薬を塗ったものの、いつまでたっても治らない。いっそ名前をつけるかと思って「魑魅魍魎太郎」と命名した(字面がかっこいいから)

 

魑魅魍魎太郎に「早く治ってくれよな」と語りかけるうちに、じょじょに痛みが引いてきた。

「意思の疎通ができてる……? トゥンク」とうっかりスピに目覚めそうになったが、今度は猛烈なかゆみに襲われた。

おまけになんと、右の股(鼠蹊部)に第二の人面瘡が現われた。

こちらは獅子奮迅二郎と命名して、語りかけるうちに数日で痛みは引いたが、またもや猛烈なかゆみに襲われた。

脇と股がかゆい状態は、とてもつらい。三国志の霊帝も体がかゆかったんだと思う。

早く皮膚科に行けよという話だが、数年前、左の股に人面瘡ができた時に皮膚科に行き、M字開脚で切開されながらオイオイ泣いた記憶がトラウマになっていた。

あんな痛い思いをするのはもう嫌だ。でも脇と股がかゆくてもう限界。

というわけで皮膚科に行き、女医さんに人面瘡に名前をつけた話をしたら爆笑された。

「じゃあ手術してとったら寂しいんちゃう?」と聞かれたので「いえ平和にお別れしたいです!」とハキハキ答えた。

2つの人面瘡は治りかけでかゆい状態なので、手術はせず塗り薬でかゆみを抑えることになった。その薬を塗ったところ、3日でかゆみがおさまった。

早く皮膚科に行けばよかった。完。

こうして俺と人面瘡との闘いは幕を閉じた。本人以外どうでもいい話を705文字も書いて申し訳ない。

しかし股間のかゆみは人類共通の悩みじゃないか。

夏は股間が蒸れてかゆくなる。冬は小陰唇が乾燥してかゆくなる。春秋もなんだかんだでかゆくなる。

イエベ春やブルベ冬といった派閥があるが、春夏秋冬股がかゆい点で女は連帯できるんじゃないか。

そして、女が脱毛するのは男のためじゃなく自分のためだ。少なくとも私はそうだった。

「パイパンにして股間のかゆみを軽減したい」

そんな黄金のような夢を抱いてVIO脱毛を受けたら、げっさ痛くて死ぬかと思った。私は皮膚科で医療レーザー脱毛を受けたのだが、焼きごてを押しつけられるような痛みだった。

一方、女友達は「私は全然平気で眉ひとつ動かさなかったよ」と話していた。つまり俺は痛みにとても弱いのだ。

M字開脚で泣きながら、皮膚科のお姉さんに「小陰唇、燃えてませんか?」と聞いたら「燃えてませんよ」とにっこり微笑まれた。

そして「次回からは事前に麻酔クリームを塗ってきてください。ラップを巻くと浸透しますよ」と言われたので、次回から自宅で股間に麻酔クリームを塗りこんで、サランラップを巻きつけた。

そんな透明のふんどし姿で仁王立ちしながら、夫に「なあこれどう思う?」と聞くと「きみは何をしてるんだ?」と聞き返された。

私も自分が何をしているかわからないポルナレフ状態だったが、5回ほど脱毛に通ったところ、夢のパイパンに近づいた。

そのまま通い続ければよかったが、根性がないので続かなかった。そして数年後、アスファルトに咲く花のようなド根性で陰毛が復活しだした。

「ぼくの恥丘を守ってと頼んだ覚えはないぞ」とボヤきながら、今も股間のかゆみと闘っている。

俺の夢が叶う日は来るのだろうか……(未完)

股間の話でだいぶ尺をとったが、本当は生理の話をしたかったのだ。

私は40歳の時に子宮筋腫の根治のために子宮全摘手術を受けた。そのおかげで股間のストレスは大幅に軽減された。

手術前は過多月経で月の半分以上は股から出血していたため、ナプキンが蒸れて最悪だった。そんな状態だと旅行や出張や運動もできなかった。

また当時は貧血がひどくて鉄剤を飲んでいたが、その副作用でウンコが硬くなった。

鋼のウンコを錬成しながら「このままでは肛門が裂けてしまう……僕のアナルを守って!!」と神に祈る日々だった。

そんなわけで子宮を断捨離したことで、人生の幸福度が爆上りした。その経緯を『離婚しそうな私が結婚を続けている29の理由』に綴っているので、よろしくどうぞ。

生理に苦しんだ一員として、「生理の貧困」問題が注目され始めてよかったと思う。

「生理用品を買うのに苦労した学生が2割もいる」という調査が話題になり、国会でも取り上げられた。それは大きな一歩だが、その場限りの支援では全然足りない。

フランスやニュージーランドは学校での生理用品の無料提供を決定して、イギリスやスコットランドは自治体に無料提供を義務づけている。

生理の貧困は経済的な問題だけではない。親のネグレクトによって生理用品を買ってもらえない少女や、親の理解不足によって婦人科を受診できない少女もいる。

そもそも十代の少女にとって婦人科はハードルが高い。学生は親に保険証を借りなきゃいけない場合もある。

また日本では「生理は我慢するもの」という価値観が根強く、子宮内膜症などの病気が見過ごされるケースも多い。

一方、ヨーロッパにはユースクリニックが多数存在して、生理や性の相談を気軽にできる場所がある。そこでピルやアフターピルなどを無料、または安価でもらえたりもする。

これは素人の思いつきだが、献血ルームの隣にユースクリニックを作ったらどうだろう。献血に行くと飴ちゃんやジュースをもらえるけど、Amazonギフトカード500円分とかをプレゼントしてはどうか。

もし私が中高生だったら絶対行く。そこで「生理や性のこと何でも相談してね!」という部屋が隣にあったら、ちょっと覗いてみよかいなと思うだろう。

そういうアクセスしやすい工夫をして、日本中にユースクリニックを作ってほしい。それがパイパン以上に叶えたい俺の夢である。

また、働く女性のために生理休暇を取りやすくしてほしい。

現在、生理休暇の取得率は1%以下だそうだ。しかも取得すると無給になってしまう企業が7割以上だという。
そりゃ給料が減るとなったら休めないだろう。有休で生理休暇を取れるように法律で定めるべきじゃないか。

また「生理休暇を取りたい」と上司に言いづらい問題もあるようだ。

私も会社員時代、後輩女子がつらそうだったので声をかけると「毎月、生理痛がひどくて」と今にも倒れそうな様子だった。

そこで「じゃあ私が上司に伝えるから、来月から生理休暇とりなよ」という話になり、それを40代の男性上司に伝えたところ「俺はそういうこと聞くのは恥ずかしい」と言われた。

「なに言うとんねん、下ネタちゃうぞ!」とグレッチでしばいたろかと思ったが、幸いその後輩は生理休暇を取れることになった。

上司がこんなトンチキだったら、言いづらいに決まっている。だから男女共に性教育が必要なのだ。生理は下ネタでもなければ恥ずかしいものでもない、と正しい性知識を教えるべきだ。

女子校育ちの私は「生理がつらい」「ナプキン持ってる?」と学校で普通に話していた。そこから共学の大学に進んで、同級生の女子に「お座布団持ってる?」と聞かれて「座布団?!」と面食らった。

「いやー座布団は持ってないなあ」と返すと「もういい」とため息をつかれたが、あれは本当に悪いことした。と反省しているけれど、生理やナプキンを隠語にしないことが大事だと思う。

被災地の避難所でナプキンが1枚しか支給されなかったり、おじさんに「そんなもの人に見せるな」と言われた、といった話を聞く。
生理に対する無理解、「生理は隠すべきもの」という呪いが女性を苦しめている。

ロシアに住む人のブログを読んだら「ロシアのスーパーでは生理用品の棚に男性がいることは珍しくない。ロシアでは自分の妻がどんな生理用品を使っているか把握しておくのは常識だ」と書いていた。

日本も「トイレットペーパー買ってきて」と言うように「ナプキン買ってきて」と言える国になってほしい。
ちなみに私は夫に「タンポン買ってきて。レギュラーちゃうで、スーパーやで」と頼んでいた。

ヘルジャパンには「コンビニのエロ本を規制するなら、生理用品も置くな」とか抜かすクソバカ野郎もいる。

また「生理って男で言うと射精だよね」とか言われると、グレッチで金玉を300ヤードかっ飛ばしたくなる。

射精は快楽をともない、生理は苦痛をともなうものだ。どうしても喩えたければ「毎月、尿道結石になる」がおすすめだ。

また「男も性欲に振り回されてつらい」となぜか張り合う男がいるが、性欲は女だってある。そういうトンチキな比べ方をするのは「生理なんて大したことない」と軽視しているからだろう。

最近、周りの女性陣から「不妊治療で休みたい、というのは以前よりも言いやすくなった」と聞く。

ひと昔前は「子どもの作り方教えてやろうか? ゲッヘッヘ」みたいなおじさんがいたが、不妊治療に対する理解が広まったことで、社会全体のアップデートが進んだのだろう。

生理の問題もどんどん狼煙を上げて、アップデートを目指したい。

女性が初潮を迎えてから閉経するまでの期間は、平均で35~40年間だそうだ。日本人女性は50歳ぐらいで閉経する人が多いという。

閉経した50代の友人は「生理のない生活、ストレスフリーだわ~」と喜んでいて、私も「わかる!」と膝パーカッションしている。

私は鼻くそをほじってティッシュがないと「食っちまうか」と思うぐらい、面倒くさがりな人間だ。そんな私にとって生理は死ぬほどウザくて面倒で、さっさと卒業したかった。

最近は「生理は我慢するもの」という価値観が変わってきて、ピルやミレーナによって生理のストレスから解放される女子が増えている。さらに多様な選択肢にアクセスしやすくなってほしい。

私は子宮をとった後、残ったタンポンの在庫をどうしようか? と考えた。窓の隙間につめて結露をとるか……と考えながら、ふとタンポンを鼻に入れてみようと思いついた。

それでグイッと押し込んだら、鼻の穴が裂けそうになった。膣と違って伸縮性がないので鼻からスイカは絶対出ない。

そんな気づきを得ながら、タンポンの紐がぶら下がった状態でにっこり笑って自撮りした。その写真を遺影にしてもいいかもしれない。

まだ遺影になるのは先っぽいので、中年以降も女友達と愉快に過ごしたい。誰かが閉経するたびに卒業パーティーするのもいいな……とささやかな夢を抱いている。

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アルテイシアの59番目の結婚生活

大人気コラムニスト・アルテイシアの結婚と人生にまつわる大爆笑エッセイ。

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アルテイシア

神戸生まれ。現在の夫であるオタク格闘家との出会いから結婚までを綴った『59番目のプロポーズ』で作家デビュー。 同作は話題となり英国『TIME』など海外メディアでも特集され、TVドラマ化・漫画化もされた。 著書に『続59番目のプロポーズ』『恋愛格闘家』『もろだしガールズトーク』『草食系男子に恋すれば』『モタク』『オクテ男子のための恋愛ゼミナール』『オクテ男子愛され講座』『恋愛とセックスで幸せになる 官能女子養成講座』『オクテ女子のための恋愛基礎講座』『アルテイシアの夜の女子会』など。最新作は『40歳を過ぎたら生きるのがラクになった』がある。 ペンネームはガンダムの登場人物「セイラ・マス」の本名に由来。好きな言葉は「人としての仁義」。

Twitter: @artesia59

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