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アルテイシアの59番目の結婚生活

2021.03.18 更新 ツイート

三十年来の親友にバチギレてしまった話 アルテイシア

「森さんの失言が話題になった時、うちの父親も『叩かれすぎだ、老人いじめだ!』と怒っていたわ」

複数のJJ(熟女)たちがそう証言していた。我々の父親世代は森喜朗型おじいさんが多いため、自分が批判されたような気がしたのだろう。

男尊女卑に浸かって生きていると、感覚が麻痺してしまって、性差別があることに気づけない。

そんな彼らの言う「今は女の方が強い」は「昔は踏まれても文句言わなかったくせに、文句言うようになるなんて、強くなったなお前」という意味である。

 

そんな老いた父親の発言を、娘たちはガン無視している。相手がおじいさんだと「今さら変わらないし、もうすぐ死ぬしな」と諦めがつくもの。

それより女友達と意識のギャップを感じる方がしんどい、という声をよく耳にする。

たとえば「森さん叩かれすぎだよね」「いじめみたいで可哀想」と女友達に言われると「マジか」と思う。

そこで「いやいや、これまで何度も差別発言をしてきたのに許されてきたことが問題だよね? そんな人がいまだにトップにいるからジェンダーギャップ指数121位のヘルジャパンなんだよ」とマジレスすると「なんでそんなに怒ってるの?」と言われる。

え、なんで怒らないの? 現実に差別に苦しむ人がいるのになんで? 自分には関係ないと思ってるの??

と逆質問したくなるが、その手の人々は確固たる思想信条があるわけじゃなく、ジェンダーや社会問題に関心がないのだ。

何に関心をもつかは個人の自由だけど、そういう友人と付き合うのがしんどくなってきた……

みたいな話に「わかる!」と膝パーカッションする女子は多いだろう。

私が主催する「アルテイシアの大人の女子校」のメンバーは、ジェンダーや社会問題に関心が高い。「ミソジニー? それどんな汁物?」みたいな人は私のコラムを読まないからだ。

「フェミニズムの話ができる場所があるだけで安心するし、癒される」そんな声が女子校メンバーから寄せられる。

自分にとって重要なテーマについて話したいし、わかる! それな! と膝パーカッションできる仲間がほしい。我もそう思っていたので、女子校を作ってよかった。

ちなみに今春からハイキング部を発足したので、山歩きで足腰を鍛えて、死ぬまで歩けるおばあさんを目指したい。あと尿漏れ抑止効果も期待している。

尿漏れはさておき、私自身が性差別や性暴力に苦しんで、フェミニズムに出会って救われた。

だからフェミニズムを揶揄する人や、頭ごなしに否定する人とは関わりたくない。そんな人とはまともな対話などできないし、戦争になるだけだろう。

「『フェミニストって面倒くさい』『仕事と育児に忙しくて、そんなこと考えてる余裕ないわ』とか言われると、がっさムカつく」「マジで縁を切ろうかと思う」といった声も寄せられる。

たしかにワーママは金田一の犯人よりやることが多いが、ワーママでフェミニストの女性もいっぱいいる。「私はジェンダーや社会問題に関心がない」とハッキリ言えばいいのにと思う。

誰と付き合うかを選ぶ権利は自分にある。一緒にいてストレスを感じる相手と距離を置くのは、自然なことだろう。

「やっぱりジェンダーや社会問題の話ができる相手といる方が楽しいから、そうじゃない相手とは会わなくなりますね。昔からの友達と疎遠になるのは寂しいけど……」これが女性陣からよく聞く意見である。

「フェミ系の話題は避ける」という選択肢もあるが、ドラマやコスメや仕事の話をしていても、結局はジェンダーやルッキズムや性差別の話につながるため、意識のギャップがしんどくなって距離を置く、という話もあるあるだ。

しんどいのに無理して付き合うより、ジェンダー意識の合う友人を見つける方がいいと私も思う。フェミニズム系のイベントやコミュニティでつながるのも手だろう。

「相手にわかってもらうように説明する」という選択肢もある。

これは手間も労力もかかるので、そこまでかけたい相手か? によるだろう。また相手に真摯に耳を傾けて対話する姿勢があるか? が鍵である。

「丁寧に説明して俺を納得させてみろ」と上から言ってくる奴には「興味があるならググれカス」と返す。
一方、ジェンダーやフェミニズムがよくわからなくてトンチキな発言をする場合は、なるべく丁寧に説明するよう心がけている。

というのも「ジェンダーやフェミニズムって難しそう」「ややこしそうだし近寄らないでおこう」と思われると、フェミニズムの理解が広がらないから。

みんなアップデートの途中なんだから、一人一人に理解が広がって、社会全体がアップデートすればいいなと思う。

とか言いつつ2年ほど前、三十年来の親友にバチギレてしまった。

それは竹馬の友が集まったJJ会で、性暴力被害の話になった時、友達の1人が「でも冤罪や枕営業もあるよね」と発言したのがキッカケだった。

その頃、私は寝ても覚めても伊藤詩織さんのことを考えていた。

こんな理不尽があっていいのか……と激しい怒りを感じつつ、自分にもできることがあるんじゃないか、性暴力を駆逐するためにできることはなんだろう……と考え続けて、それが「#性暴力を見過ごさない」動画にもつながった。

そんなわけで「冤罪や枕営業もあるよね」の一言に、エレンのように瞳孔が開いた。巨人化はしなかったものの、怒髪天を突いてスーパーサイヤ人になりそうだった。

そして「伊藤詩織さんが日本に住めなくなったのは、なんでだと思う?」「その発言は被害者に対する二次加害、セカンドレイプだよ!」とバチボコに詰めてしまった。

伊藤詩織『Black Box』(文藝春秋)

冤罪、でっちあげ、枕営業、ハニトラ……など、日本では性暴力被害者が責められて、二次加害により何重にも傷つけられる。
杉田水脈議員の「女性はいくらでも嘘をつく」発言がそれを象徴している。

信じてもらえないかもという不安から誰にも相談できない被害者や、二次加害を恐れて支援につながれない被害者も多く、一生トラウマに苦しむ人たちもいる。

冤罪や枕営業が存在したからといって、性暴力被害に苦しむ人が大勢いる事実は変わらない。

性暴力被害の話に「冤罪もあるだろ、それはどうなんだ!」と返す手法はワタバウティズム(Whataboutism)と呼ばれ、トランプ元大統領の得意技でもある。

Aの問題について話しているのに「だったらBはどうなんだ!」と論点をずらして、相手の発言を封じようとする。我はフェミニストの作家として、この手のクソリプを日常的に浴びている。

ナンパされて怖い思いをする女性が多いと書くと「ナンパされて自慢する女もいるだろ!」とクソリプがつき、女性差別について書くと「ウイグル差別はどうなんだ!」とクソリプがつく。

彼らは声をあげる女を黙らせたい、生意気な女の口をふさぎたいだけなのだ。

「冤罪や枕営業もあるよね」と言ったのがトランプだったら「今その話はしてないし論点をずらすな」と冷静に返してブロックする。

あの時に私がキレてしまったのは、彼女のことを好きだったからだ。三十年来の友達でめっちゃいい奴なのを知ってるから、悲しくて悔しかった。

だから「私だって性暴力の被害者なんだよ? あんたは交通事故の被害者の前で『でも当たり屋もいるよね』って言うの?」と詰めてしまった。

別の友人が「そうだよね」と間に入ってその場はおさまったが、その後もずっとモヤモヤしていた。

どうでもいい相手なら縁を切るけど、彼女とはババアになってもズッ友でいたかったから、どうしたもんかと悩んでいた。

するとしばらくして、彼女の方から連絡をくれた。そして「あの後、私も考えたんだよね。なんで私は女なのに、加害者寄りで考えてしまったんだろうって」と話してくれた。

「私は中高大と女子校で、しかも徒歩通学だったから、痴漢に遭ったことがないのよ。卒業後も女性ばかりの職場にいたから、セクハラや性差別を受けたこともなかった。
そういうレアな環境にいたから、性暴力や性差別に苦しむ人の気持ちがわからなかったんだと思う」

「でもあの後、性暴力やフェミニズムについて勉強して、アルテイシアが怒ってた意味がわかった」

ワンダーウーマンの里みたいな世界で生きてきた彼女は、性暴力や性差別を受けずにすんだ自分はラッキーだったと気づいたそうだ。

その後も彼女は私のコラムの感想を送ってくれるし、フェミニズム本を紹介したら読んでくれる。

今回「私がキレた件をコラムに書いてもいい?」と聞いたら「お~ぜひ書いて!」と言ってくれて、やっぱりめっちゃいい奴である。

友人関係がしんどくなったら、距離を置くのもアリだろう。でもわかってくれそうな相手なら、説明するのもアリだ。自分で説明するのが難しかったら、記事や本をシェアしてみよう。

その時の反応によっては、ズッ友でいられるかもしれないから。

昨今、女友達と集まるとフェミニズムの話になる。
「オッス、おらフェミニスト!」というタイプじゃなかった友達もどんどん目覚めていって、この流れは止まらないし、さらに加速していくだろう。

同時に、フェミニズムにバックラッシュはつきものだ。フェミニズムの波が来ると、それを潰そうとする波が来る。

参政権を求めて運動した日本の女性たちも「イカれた女たち」と誹謗中傷されたし、80年代のアメリカでは「フェミニズムのせいで女性は不幸になった」とメディアがネガティブキャンペーンを行った。

バックラッシュに殴られても負けなかった女性達のおかげで、今があるのだ。

2017年にアメリカから#MeTooが広がって、日本でも伊藤詩織さん、石川優実さん、フラワーデモ……と多くの女性たちが声を上げはじめた。

森会長の発言に「わきまえてたまるかよ!」と女性たちが一斉に抗議して、約15万人の署名が集まり、世論と政治を動かした。

一人一人が声を上げることで、社会は変えられる。それをいま世界中の、そして日本の女性たちが証明している。

マジで間に合って良かった、おいらの寿命が。何歳まで生きるか知らんけど、なるべく長生きして変わっていく社会を見てみたい。

いまや人生百年時代と言われて、日本人の寿命はゾウガメ並みに延びている。

ところで長寿と言えばカメだと思っていたが、ウニは200年生きる個体もいるそうだ。今度寿司屋で会ったら「ウニ先輩」と呼びたい。

医学の進歩によって、人がウニ並みに生きる時代が来るかもしれない。200歳になっても女友達と集まって「昔々、東京オリンピックが……」と昔話をしたいと思う。

関連書籍

アルテイシア『離婚しそうな私が結婚を続けている29の理由』

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アルテイシアの59番目の結婚生活

大人気コラムニスト・アルテイシアの結婚と人生にまつわる大爆笑エッセイ。

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アルテイシア

神戸生まれ。現在の夫であるオタク格闘家との出会いから結婚までを綴った『59番目のプロポーズ』で作家デビュー。 同作は話題となり英国『TIME』など海外メディアでも特集され、TVドラマ化・漫画化もされた。 著書に『続59番目のプロポーズ』『恋愛格闘家』『もろだしガールズトーク』『草食系男子に恋すれば』『モタク』『オクテ男子のための恋愛ゼミナール』『オクテ男子愛され講座』『恋愛とセックスで幸せになる 官能女子養成講座』『オクテ女子のための恋愛基礎講座』『アルテイシアの夜の女子会』など。最新作は『40歳を過ぎたら生きるのがラクになった』がある。 ペンネームはガンダムの登場人物「セイラ・マス」の本名に由来。好きな言葉は「人としての仁義」。

twitter : @artesia59

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