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アルテイシアの59番目の結婚生活

2021.06.18 更新 ツイート

小学生に「モテさしすせそ」より「フェミさしすせそ」を伝えたい アルテイシア

共学の大学に進んでショックを受ける、は女子校育ちあるあるだ。

大学1年の時、男の先輩に「ナントカちゃんはまだ十代だけど、おまえはもうハタチだろ?」と言われた女子が「もう~私まだ19ですよ~!」と返す場面を見て「ラピュタは本当にあったんだ」とパズー顔になった。

そういうキャバクラ的な接客サービスを、肉眼で始めて見たからだ。

 

当時の私は「だからおまえはモテない」と男子にディスられていた。たとえば「おまえはもうハタチだろ?」と聞かれて「いや19ですけど」と真顔で返すと、彼らは不機嫌そうな顔になった。

それは「男は女に接客サービスされる権利がある」と思っているからだ。

だから予想通りのリアクションが返ってこないとムッとして、「愛想がない」「女子力が低い」「だからモテない」とディスってくる。

男のいない女子校では接客サービスなど必要なかったし、「男を立てろ」「男に媚びろ」的な文化もなかったので、私はたいそう戸惑った。

ジェンダーの呪いを刷り込まれずにすむ女子校は、男社会からの避難所だったなあ……と今では思う。
でも当時の私は「モテなどいらぬ!!」とサウザーにはなれなくて、非モテコンプレックスをこじらせていた。

友人の金田淳子さんがツイッターに「路傍の石ころほどもモテなかった若い頃、モテようとして、ウンコの匂いがなくなるという薬を買ったことがある」と書いていた。

結果ウンコがフローラルの香りになったりはせず、ウンコの色が黒くなったそうだ。

ご本人も「どの局面でウンコの匂いが少ないことを意中の人にアピールできるのか?」と書いていたが、大学時代の私も「それでモテるなら安いものだ」と飛びついたと思う。そして漆黒のウンコを錬成しただろう。

それぐらい、当時はモテないことがつらかった。意中の人に好かれたいというより、劣等感の苦しみから解放されたかったのだ。

そんなわけで、非モテ男性の苦しみ自体はよくわかる。だけどインセルのように異性を逆恨みして攻撃しようなんて思わないし、「女を再分配せよ!」と訴えたりもしない。

女性の場合はウンコの匂いを消すとか、見た目やコミュ力を磨くとか、モテるために努力する。かつ「私がモテないのは自分が悪い」と自分を責める傾向が強い。

そうやって自責しすぎるのも問題だが、「俺がモテないのは女が悪い!」と攻撃するよりよっぽどマシだ。また「男を再分配せよ!」と訴える女性も見たことがない。

女を再分配せよと訴えるのは「男には女を所有して支配する権利がある」と錯覚しているからで、これも男性優位社会の産物だろう。

ジェンダーギャップ指数120位のヘルジャパンで、女は子どもの頃から「女はいつも笑顔で愛想よく」「男の機嫌を損ねるな」と刷り込まれる。

その結果、イヤなことをされてもイヤと言えない、怒るべき時に怒れない大人になってしまう。

セクハラの加害者が「相手も喜んでいた」と主張したり、被害者に対して「思わせぶりな態度をとって、俺を陥れるつもりだったのか!」と逆ギレするケースは多い。

ハラスメントは強者から弱者に行われるものであり、おじさん上司に「今度デートしようよ」と言われて「笑止!!」とラオウ顔で返すのは難しい。
でもそこで笑顔で愛想よく返すと「同意があった」と誤解されてしまう。

かつての私も「セクハラされても笑顔でかわせ」と洗脳されていて、まんまとハラスメントの標的にされていた。

そんな女子を少しでも減らしたくて、新刊『モヤる言葉、ヤバい人』を執筆した(6/19発売)

本書にはモヤる言葉に言い返す方法や、ヤバい人から身を守る方法など「言葉の護身術」を詰め込んだ。

明菜返し、エジソン返し、哲学返し、猫&BL返し、ナイツ返し、ネズミ返し、マンスプ返し、イキリオタク返し、オカルト返し、エシディシ返し、アナル返し……その他、あらゆるシチュエーションに対処する術を綴ったので、参考にしてほしい。

そして中高生にもぜひ読んでほしい。私は難しい文章を書けないので、サラッとサラサーティに読めると思う。

中高生がこの本を読んだら「この世界は地獄だ……ぴえん」とアルミン顔になると思う。残念ながらこの世界は残酷で、尊厳を傷つけてくる人々がいる。

だからこそ、イヤなことをされたらイヤと言おう。反射的に笑顔で返さず、ちゃんと言い返す練習をしよう、と女の子たちに伝えたい。

もちろん男の子にも自分を守る術を知ってほしいし、女性が苦しんでいる現実を知ってほしい。

子どもを被害者にも加害者にもしないこと、次世代にジェンダーの呪いを引き継がないことは、大人の責任だと我は思う。

そんな思いでやっとりますので、『おしゃカワ! ビューティー大じてん』がツイッターで炎上した時「やばたにえんの麻婆春雨」と思った。麻婆春雨を教えてくれた若い友人には「当たり前田のクラッカー」を教えてあげた。

女子小学生向けの本書では「モテ女子になるためのさしすせそ(さすが! しらなかった! すごい! センスいい! そうなんだ)」を提案している。

「男の子はホメられるのが好き! まほうのコトバ『さしすせそ』を覚えておいてね♡心からホメることが大切だよ!」という文章と共に「勉強してないけどテストできたわ」「さすが○○くんだね!」といった例文が紹介されている。

この手のコンテンツが批判されると「いちいち目くじらを立てなくても」と言う人がいるが、これはあらゆる呪いと地続きなのだ。

こうしたメッセージが、女の子に「接客サービスして男の機嫌をとれ」「男よりも劣ったフリをしろ、じゃなきゃ愛されない」という呪いを刷り込む。
かつ、男の子には「男は女に接客サービスされて当然」という認知の歪みを刷り込んでしまう。

ジェンダーの呪いを再生産する罪深さを、作り手は真剣に考えるべきだろう。

周りの女性陣からも「褒めないと機嫌が悪くなる男、多すぎません?」「さしすせそ待ち男子が多すぎてうんざりします」という声が寄せられる。

瀧波ユカリさんが「おちんちんよしよし」と見事なネーミングをしていたが、私の周りでこの手の男性は「ホメマチアカチャンマン」と呼ばれている。

自分で自分の機嫌をとれず、女にあやしてもらわないとグズる男たち。そんな彼らは赤ちゃんと違ってかわいくないし、己の股間を痛めて産んだ子じゃないんだから、女がケアする義務などない。

広告会社時代、偉いおじさんにクラブやラウンジに連れていかれた。そこでお店のママさんに「ママー!! ウ~ウウウ~」とフレディばりにオギャるおじさんや、ホステスさんの胸を触って「メッ!」と怒られてエヘエヘするおじさんたちを目撃した。

そんな地獄絵図が焼きついて離れないし、死ぬ前の走馬燈に出てきたらどうしてくる。

ホメマチアカチャンマンが家庭内ではモラハラ夫、というのもあるあるだ。

彼らは「妻は夫が支配する所有物」「女は男をケアするべき」と認知が歪んでいるため、妻が思い通りにならないとキレて、権利を奪われたと被害者ぶる。

夫に不機嫌をぶつけられる妻は、そのストレスを子にぶつける。家庭内では一番弱い立場の子どもが犠牲になり、かつ両親から男女の関係を学んでしまう。

「人間よ、もうよせ、こんな事は」と私は高村光太郎顔で言いたい。

子どもに教えるべきはモテさしすせそじゃなく「男女は対等であり、お互いに尊重し合うコミュニケーションが大切」ということだろう。

広告会社時代も、セクハラやイジリをコミュニケーションと勘違いしている上司がいた。

20代の私は自尊心を削られつつ「こんなことで傷つくなんて弱い」と自分を責めていた。そうして痛みや怒りに蓋をしたまま、不眠や過食嘔吐に苦しんでいた。

そんなある日、上司に「今日は特にブスだな(笑)」と言われて、トイレで「死んじゃおっかな」と泣いたことを覚えている。

次世代の女の子には、そんな目に遭ってほしくない。だから性差別やハラスメントに対して、中年の我が率先して怒っていく。女の子には、怒る女のお手本が必要だと思うから。

ドイツに住んでいた女友達が「日本に帰国して、平気で失礼な発言やセクハラしてくる男が多くてギョッとした」と話していた。
「ドイツの女性はバチボコに怒るから、男性もナメたことできないのよ。そういう社会だと、女にナメたことする男は男からも嫌われるんだよね」とのこと。

ヘルジャパンでは若い女は特にナメられる。笑顔で接客サービスすると、さらにべろんべろんにナメられてしまう。
なので自分を守るために、以下の「フェミさしすせそ」を使ってほしい。

「さすが~! ジェンダーギャップ指数120位のヘルジャパン」
「知らなかった~! ミソジニストだったんですね」
「すごーい! マンスプのお手本みたい」
「センスいい~! 安土桃山生まれですか?」
「そうなんだ~! あなたの話に興味ないです(苦笑)」

そして困った時には1人で抱え込まず、助けを求めてほしい。

どこにどう求めればいいの? という方のために、『モヤる言葉、ヤバい人』では弁護士の太田啓子さんに「法律の護身術」を伝授いただいた。

セクハラやパワハラに遭ったら? モラハラやDVを受けたら? 性被害に遭ってしまったら? ネットで嫌がらせをされたら? 等、法律の専門家の立場からアドバイスをいただいたので、参考にしてほしい。また被害に遭った時の相談窓口も掲載している。

45歳の私は「モテなどいらぬ!!」と心から言えるサウザー状態になった。

男から嫌われても屁でもないし、ウンコが臭くてもへっちゃらだ。今後も「退かぬ! 媚びぬ! 顧みぬ!」と闘気を発して、女子を守るための盾になれたらいいなと思う。

関連書籍

アルテイシア『離婚しそうな私が結婚を続けている29の理由』

生涯のパートナーを求めて七転八倒しオタク格闘家と友情結婚。これで落ち着くかと思いきや、母の変死、父の自殺、弟の失踪、借金騒動、子宮摘出と波乱だらけ。でも「オナラのできない家は滅びる!」と叫ぶ変人だけどタフで優しい夫のおかげで毒親の呪いから脱出。楽しく生きられるようになった著者による不謹慎だけど大爆笑の人生賛歌エッセイ。

アルテイシア『40歳を過ぎたら生きるのがラクになった アルテイシアの熟女入門』

加齢最高!大人気連載が1冊になりました。若さを失うのは確かに寂しい。でも断然生きやすくなるのがJJ(=熟女)というお年頃!おしゃれ、セックス、趣味、仕事等にまつわるゆるくて愉快な熟女ライフがぎっしり。一方、女の人生をハードモードにする男尊女卑や容姿差別を笑いと共にぶった斬る。「年を取るのが楽しみになった」「読むと元気になれる」爆笑エンパワメントエッセイ集。

アルテイシア『アルテイシアの夜の女子会』

「愛液が出なければローションを使えばいいのに」「朝からフェラしてランチで口から陰毛が現れた!」とヤリたい放題だった20代。「男なら黙ってトイレットペーパーを食え!」「ヤリチンほどセックス下手」と男に活を入れていた30代。子宮全摘をしてセックスがどう変わるのか克明にレポートした40代。10年に及ぶエロ遍歴を綴った爆笑コラム集。

アルテイシア『オクテ女子のための恋愛基礎講座』

小悪魔テクは不要! 「モテないと言わない」「エロい妄想をする」など、「挙動不審なブス」だった著者も結婚できた恋愛指南本。

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アルテイシアの59番目の結婚生活

大人気コラムニスト・アルテイシアの結婚と人生にまつわる大爆笑エッセイ。

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アルテイシア

神戸生まれ。現在の夫であるオタク格闘家との出会いから結婚までを綴った『59番目のプロポーズ』で作家デビュー。 同作は話題となり英国『TIME』など海外メディアでも特集され、TVドラマ化・漫画化もされた。 著書に『続59番目のプロポーズ』『恋愛格闘家』『もろだしガールズトーク』『草食系男子に恋すれば』『モタク』『オクテ男子のための恋愛ゼミナール』『オクテ男子愛され講座』『恋愛とセックスで幸せになる 官能女子養成講座』『オクテ女子のための恋愛基礎講座』『アルテイシアの夜の女子会』など。最新作は『40歳を過ぎたら生きるのがラクになった』がある。 ペンネームはガンダムの登場人物「セイラ・マス」の本名に由来。好きな言葉は「人としての仁義」。

Twitter: @artesia59

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