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アルテイシアの59番目の結婚生活

2021.02.18 更新 ツイート

発見!ジェンダーイコール男子はここにいた アルテイシア

フェミニスト仲間から「ジェンダーイコールなパートナーが欲しい、でもどこでどうやって見つけるの?」とよく聞かれる。というわけで、前回の続きを書きます。

フェミニストのAちゃん(34歳)は「ジェンダーイコール男子と結婚するか、結婚しないかどちらかだ」と覚悟を決めて、暗闇の荒野に進むべき道を切り開いた。

その結果、最高のキンタマ(金の卵)をゲットした彼女に話を聞いた。

 

「やっぱりフル開示が鍵ですね。『家事育児を公平に分担できる関係が理想です』と明言すれば、家事育児は女性がメインでやってほしい男性は向こうからお断りしてくるので」

「男性に会った際は、いろいろ質問して男女平等意識を探りました。特におすすめの質問は、育児休業と結婚後の姓についてです」

Aちゃんいわく、世間話のノリで聞くのがポイントだという。面接みたいに質問すると「試されてる?」と警戒させてしまって、本音を引き出せないから。

たとえば「うちの会社は男性が1年間の育休をとるケースも増えてるんですよ」とか「友達が結婚するんですけど、どちらの名字にするか揉めてるらしくて」といった流れから「どう思います?」とサラッとサラサーティーに聞いてみる。

「そうすると、相手の男女平等感覚がどの程度なのかわかります。ただ、そこでイマイチな返事が返ってきても一度で見切る必要はないです。

『いやーうちの会社は男性が育休をとった前例がないし、無理ですね」とか言われたら『子育ては妻任せですか、いいご身分ですね』とバチボコに詰めたくなりますが、いったん深呼吸して落ち着きます』

いったん深呼吸して、マヌルネコのこととか考えて落ち着こう。

「そして『男性が育休をとりづらい会社はまだまだ多いですよね。うちの会社で最初に男性育休をとった人も、めちゃめちゃ勇気がいったと言ってました』とやんわり切り込んでみて、最終的に相手が育休に前向きになるのであれば、ジェンダーイコールに育つ可能性があるかもしれません。

というのも、フェミニストと対話を続けるうちに、男女平等意識に目覚める男性も多いからです

ハイここ試験に出ますよー! と太字にしたが、そうなのだ。最初から完成形を求めず、磨けば光るキンタマを発掘する。その姿勢が婚活には必要だと思う。

なぜならここはスウェーデンやニュージーランドじゃなく、ジェンダーギャップ指数121位のヘルジャパン。完璧に仕上がってるキンタマを見つけるのは、刺青人皮を集めて金塊をゲットするぐらい難しい。

そのため、ポテンシャルに注目するのがおすすめだ。「みんなアップデートの途中だもんな」と己に言い聞かせ、相手に伸びしろがあるかをチェックしよう。

女性の話を真摯に聞く姿勢、尊重して学ぼうとする姿勢があれば、キンタマに育つ可能性は高い。

「なんで大の男を育てなあかんのじゃい! ブオオー!」と法螺貝を手に出陣したい気持ちはよくわかる。だが、見切りが早すぎると損をするのも事実。

16年前に夫と出会った時「料理はするの?」と聞いたら「いやうちはオカンが料理するから」と返ってきて「料理は女任せですか、いいご身分ですね、笑止!!」とラオウ顔になった。

でもチーターの赤ちゃんのことを考えて落ち着いて、試しに付き合ってみた。あの時点でこいつはナシと見切っていたら、夫と結婚することはなかっただろう。

試しに付き合ってみると、夫に「料理や家事は女の仕事」という意識は一切なく、私に女や妻の役割を一切押しつけないことがわかった。

戦中生まれの義母は「あんたが入ったら台所がちらかる」といって、全部やっちゃう系の母親だった。

そのため夫は料理や家事をする機会がなかったこと、また母親を養うために同居を続けていたこと、その母親と夫はバチクソ仲が悪いことも、付き合ううちにわかった。

見た目はゴリマッチョな格闘家だが、中身はジェンダーイコール男子だった夫。とはいえ、料理や家事のスキルは低い。

夫が食器を洗うと汚れが落ちてなくて「そのぶっとい腕は飾りか?」と思う。なので指導する手間はかかるが、素直に教わる姿勢があり、言われたことは全部やるので、特に不満はない。

なにより、私にとって最重要なのは「私にダメ出しをしないこと」なのだ。もし料理や家事が手抜きとか言われたら、グレッチでめった刺しにしてしまう。

夫は私にダメ出しをしたことがないし、うんこを漏らしても褒めてくれる。そんなアナル&ガッバーナ精神こそ、毒親育ちの私がパートナーに求めるものだった。

つまり「自分は何が譲れて、何が譲れないか」を明確にしよう、という話でござる。

Aちゃんは「私にとって最重要なのは、家庭における男女平等でした。なので家事育児を公平に分担できる、という点にこだわって探しました」と語る。

「逆に言うと、それ以外(性暴力やLGBTQ+について等)の価値観は、婚活時点ではそんなに質問しませんでした。結果的に夫とはそのあたりの感覚も合うことが多いですが」とのこと。

今回、Aちゃんの夫氏からもコメントをいただいた。

「彼女と結婚する前も、男女不平等の問題には関心がありましたが、自分は下駄をはかされている側なので、どうしても実感の湧かないところもありました。当事者たるパートナーと一緒に暮らしていることで、自分事に近くなり、より実感をもって考えられるようになりました」

なんといういたわりと友愛のキンタマじゃ…とJJ(熟女)は涙した。

周りの女性陣からも「私と結婚して日々いろんな対話を重ねる中で、夫のジェンダーイコールレベルがアップした」との声が寄せられる。

やはり女性の話を真摯に聞いて学ぼうとする姿勢があるかを、要チェキ(JJ死語)である。

Aちゃんは「共働き共家事夫の見つけ方」というブログを書いているので、そちらも要チェキ☆

続いては、「希少種」と呼ぶキンタマをゲットしたBちゃん(28歳)の話を紹介しよう。

Xジェンダー(中性)でアロマンティック(身体的な性欲はあるが恋愛感情はない)を自認するBちゃんは、人生に悩んでいた。

「女の体に生まれたけれど、自分を女だと思えない。この国でセクマイとして生きることの壁の高さに震えて、どう生きていけばいいのかわからず、途方に暮れていました」

「私は恋愛感情もないし、結婚願望もないし、1人の時間が大好き。でも人生の荒波を共にサバイブできるパートナーがほしくて、婚活を始めました。その結果、ますます絶望が深まりました」

某婚活アプリを始めたものの、女性として見られることに違和感が強すぎて、耐えられなかったというBちゃん。

「もう無理だ、フル開示しよう」と覚悟を決めて、プロフィールにXジェンダーと書こうとしたら「不適切」として記載できなかったんだとか。

「私は不適切なのか、男か女じゃないとパートナーを求める権利すらないのか…とめちゃめちゃ傷つきました。
それで婚活をやめてしまったけど、やっぱり支え合えるパートナーは欲しい。でももう女のフリはしたくない…と悩んでいる時に、アルさんに相談したんです」

周囲にカムアウトしていないため、友達にも相談できなかったBちゃんは、拙者に悩みを話してくれた。

そこでLGBTQ+に詳しい編集さんに相談したところ
「最大手のマッチングアプリP(仮名)には、いろんなセクシャリティの人がいますよ。登録者の母数も多いし、フル開示でやってみてはどうでしょう。顔写真を載せてない人もいるので、身バレせず活動できると思います」とアドバイスをくれた。

彼女は「友情結婚を専門とした結婚相談所」も紹介してくれたが、Bちゃんは結婚よりもパートナーを求めているので、Pに登録してみることにした。

そして、プロフィールに次のように明記した(写真は風景画像と後ろ姿の画像を使用)

・性自認が中性寄りで、女性として見られることが非常に苦痛。
・恋愛感情がほぼないため、彼氏彼女という恋愛関係ではなく、人間同士のパートナーシップを求めている。
・セクシャルマイノリティに偏見のある人、男尊女卑な人はNG

「こんな攻めたプロフィールで釣れる人いるのか? と思ったけど、意外といました。ろくに読んでない人や、50代のおじさんからイイネもきたけど(笑)、そういうのはスルーしてちゃんと読んでそうな人とだけメッセージのやりとりをした結果、現在のパートナーに出会いました。直接会ったのは彼だけなので、すこぶる効率的でした」

パートナー氏は、読書や歴史や博物館が好きな文化系の会社員(28歳)だという。

ホモソ感ゼロのジェンダーニュートラルな価値観で、女性差別・LGBTQ+・政治・人権についても深い話ができるんだとか。

「彼はシスヘテロ男性なので『女性として見ないでほしい』『恋愛感情を向けられても私には返せない』と念押ししたら『わかってるし、それでいいです』と受け入れてくれました」

「私は最初からすっぴん・ジーンズ・スニーカーで通してるけど、それを似合ってると言ってくれます。
私の性自認についても『男と女の両方の立場に立てるBさんの意見は貴重だと思う』と言ってくれたり、全てにおいて全肯定してくれるので、これがキンタマなのか…と感動してます」

この時点で全俺が号泣だが、Bちゃんの次の言葉にさらに胸を打たれた。

「一方で、逆説的なんですがパートナーができたことによって、自分は1人でも生きていけることを確信しました。

『彼氏できたら変わるよ』『意外と彼氏べったりになるかもよ』とか友人に言われてましたが、驚くほど自分は何一つ変わらなかったので。

相変わらず1人でいるのが大好きだし、自分を女だと思えないし、恋愛はわからないけど、自分はこういう人間なんだと確信を持てたので、この先もし彼との関係が終わったとしても、私は胸を張って生きていけます」

感無量(感無量)

AちゃんもBちゃんも「同じように悩む人の役に立てれば」と話を聞かせてくれた。二人とも悩んで迷って傷つきながら、自分の求めるものを手に入れたのだ。

「以前婚活していた時は、女のフリをしなきゃとスカートを履くのがつらかった」というBちゃん。前回書いたように、私も激辛カレーパンをクリームパンだと偽装していた。

ありのままの自分ではダメ。男が望むような「女」を演じなきゃいけない。

そう思ってしまったのは、モテや男受けの呪いであり、ジェンダーの呪いだろう。女性差別の強い国ほど女性の自己肯定感が低い、というデータもある。

また「結婚には妥協が必要」という呪いもあったんじゃないか。

全てを満たす完璧な人間などいない。そんなことは百も承知だが、じゃあ自分にとって譲れないものまで譲るべきなのか?

違うねッ!!

ジョジョっぽく否定したが、絶対違う(絶対違う)。必要なのは、自分が譲れないものは何か? と考えることだ。自分の求めるものがわかっていないと、手に入れようがないのだから。

とか言うてるわりに、16年前の私はぼんやりしていた。

「惚れたハレたはいらない、家族がほしい」と切実に思ってはいたが、「ジェンダーイコール男子と結婚するか、結婚しないかどちらかだ」と覚悟を決めていたわけじゃない。

ただ「弱い立場のものに思いやりのある人がいいな」と思っていて、だから夫と結婚した。

夫はフェミニズムのフェの字も知らないが、あらゆる差別や弱いものイジメを許さない人物だ。

学生時代、鳩に石をぶつける同級生の男子にコブラツイストをかけて止めたそうだが、そんな夫と花鳥園に行ったら鳥が肩にとまって、人造人間16号みたくなっていた。

あらゆる差別を許さない、私はそれがフェミニストだと思っている。また「男が望むような女になってたまるかよ!」と思っているから、フェミニストなのだと。

そんな仲間たちに「オッス、おらフェミニスト!」と胸を張って生きてほしい。そして「真の『覚悟』はここからだッ!」とキンタマ探しの冒険に出かけてほしいと思う。

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アルテイシアの59番目の結婚生活

大人気コラムニスト・アルテイシアの結婚と人生にまつわる大爆笑エッセイ。

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アルテイシア

神戸生まれ。現在の夫であるオタク格闘家との出会いから結婚までを綴った『59番目のプロポーズ』で作家デビュー。 同作は話題となり英国『TIME』など海外メディアでも特集され、TVドラマ化・漫画化もされた。 著書に『続59番目のプロポーズ』『恋愛格闘家』『もろだしガールズトーク』『草食系男子に恋すれば』『モタク』『オクテ男子のための恋愛ゼミナール』『オクテ男子愛され講座』『恋愛とセックスで幸せになる 官能女子養成講座』『オクテ女子のための恋愛基礎講座』『アルテイシアの夜の女子会』など。最新作は『40歳を過ぎたら生きるのがラクになった』がある。 ペンネームはガンダムの登場人物「セイラ・マス」の本名に由来。好きな言葉は「人としての仁義」。

twitter : @artesia59

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