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アルテイシアの59番目の結婚生活

2021.04.18 更新 ツイート

「#二次加害を見過ごさない」私が毎日納豆を食べる理由 アルテイシア

新緑が芽吹く季節、「許せねえッ!」と吐き気をもよおす邪悪案件が多すぎて、血管がいくつあっても足りない毎日です。

マリエさんが過去の性被害を告白した動画が話題になった。ネット上ではマリエさんに連帯する声が広がり、私も以下のツイートをした。

<「枕営業」ではなく「10代に対する性行為の強制」「性暴力」と言いたい。欧米だったら逮捕されて実刑になる重犯罪。きっと他にも被害者がいるのだろう。見て見ぬふりをした周りの芸人たちも共犯者。#マリエさんに連帯します>

 

「片方の言い分だけ聞くのはどうか」という意見もあったが、そんなこと言ったら誰も被害を訴えられない。
ハラスメントは強者が弱者におこなうものだ。弱い立場の者が必死の思いで訴えた声に、真摯に耳を傾けるべきだろう。

たとえば、いじめられっ子が被害を訴えた時に「片方の言い分だけ聞くのはどうか」と言われたら「誰も自分の話を信じてくれない」と絶望して、ますます孤立化してしまう。

また「相手はやってないと言ってるよ」と言われたら「そりゃ言うやろ」と思うだろう。加害者は罪を否定するもの、という前提で話を聞くべきだ。

「片方の言い分だけ聞くのは」系の発言をする人は「自分は中立の立場だ」と主張するが、クラスでいじめがあった時に「自分は中立の立場だ」と何もしないのは、消極的にいじめに加担していることになる。

周りが声を上げなければ、いじめっ子はいじめし放題なのだから。「見て見ぬふりをしてくれてありがとう、おかげでいじめを続けられるよ」と加害者は喜ぶだろう。

誰かが行動を起こすことで被害者を救える。それを伝えたくて、#性暴力を見過ごさない 動画を作った。

アメリカの学校では「第三者介入教育トレーニングプログラム」が広く行われており、プログラム導入によって、性暴力の事件数が47%減った高校もあるという。

マリエさんも「今でも強要されて仕方なく応じてる子を救いたい」と告白を決めたそうだ。

「私、殺されるかもしれない」と何度も話していたように、性被害を告白すると加害者側から攻撃されたり、世間からひどい二次加害にさらされたりする。伊藤詩織さんのように日本に住めなくなる人もいる。

傷ついた被害者を何重にも傷つける二次加害。このいともたやすく行われるえげつない行為が横行するヘルジャパンでは、テレビやメディアがセカンドレイプを平気で垂れ流している。

その一例がこちらの記事でも紹介されている。

「2017年放送の『バイキング』(フジテレビ系)では、ハーヴェイ・ワインスタイン氏の問題を取り上げるなかで、坂上忍が<ワインスタインさんがやったことは確かに悪いことなんですけど、逆もあるでしょう、女優さんのほうから実力者に>とゲストの梅沢富美男に投げかけ、それに対し梅沢は<枕営業なんて言葉がね、飛び交っているからね。こんなことは昔からじゃないの。私、言っていいなら喋るけど。こんなことやっているやつはいっぱいいるよ。気をつけろ、本当、テレビ局も映画監督も>などと、性暴力の話を「本当は女性から仕掛けたのに罠にハメられて男性が告発された話」として展開した。

『バイキング』のセカンドレイプ的な放送はその後も続き、2018年に「TIME’S UP」運動を特集した際にも、おぎやはぎの小木博明と坂上が下記のようなやり取りを繰り広げた。

小木<これ僕の意見じゃないんですけど。セクハラを受けたことで売れた人たちもいるじゃないですか、女優さんは。訴えた人の中でもそれで売れた人ってたくさんいると思うんですよ。それを訴えたところで、どっちが悪いって>

坂上忍<それはダメでしょ。合意の上で、利害関係が一致してる>

小木<売れてない人が文句を言ってるんですか? 大スターはそれで大スターになったんじゃないですか?>』

女を悪者にして男をかばうホモソ仕草に反吐が出る。スティッキィ・フィンガーズでまとめて輪切りにしてやりたい。

JJがやらかし反省会をする理由」で、私は以下のように書いた。

「ジェンダー差別、性暴力、虐待、DV等は現実に苦しむ被害者がいて、人の生死に関わる問題である。それについて、まともな知識のない人間がメディアで無責任な発言をすると、差別の強化や二次加害につながる恐れがある。

(略)この偏見に満ちた発言は被害者に対する深刻な二次加害であり、「無知だから」で済まされる話ではない。なぜこんなものを電波で流していいと思うのか? 差別解消を目指すべきメディアが、なぜここまで差別に鈍感なのか?」

こんなものを垂れ流せば、人々がテレビ離れするのは当然だろう。私がテレビを見ないのも、いちいち血管が切れそうになるからだ。
家では大体アニマルプラネットをつけているが、坂上や梅沢や小木が出てこないからである。

一方、日常生活で二次加害発言する人に出くわした場合は、リモコンでミュートできない。

本音は「今日耳日曜~」と無視して、笛を吹き羊と遊んで暮らしたい。だが、それだと邪智暴虐を除くことはできぬ。二次加害に苦しむ人を減らすこともできぬ。

ゆえにアヌス、じゃなくてアルスは次のように返している。

「交通事故に遭った人に『でも当たり屋もいるよね』『ドライバーは気をつけろ』って言います?」

「強盗に遭った人に『そんな時間に歩いてるからだ』『そんな高そうな服を着てるからだ』って言います?」

「その発言は被害者を傷つける二次加害ですよ。二次加害が怖くて泣き寝入りするしかなく、支援につながれない被害者も多いんです」

「私も性暴力の被害者だから、そういう発言を聞くと傷つきます」

二次加害発言をしてくるのは男性、特におじさんが多い。

性犯罪の加害者の95%以上が男性、被害者の90%以上が女性であり、男性は女性に比べて性暴力に遭いづらいことから、被害者の苦しみがわからないのだろう。

ちなみに「男がみんな性犯罪をするわけじゃないし」とムッとする男性には「男がみんな性犯罪をするなんて一言も言ってませんけど?」と返す。

一方、女性が二次加害発言をする場合もある。

性的同意をテーマにした番組の中で、26歳の女性アナウンサーが「女性がリテラシーを高く持てばいいだけの話で、家に行かなければいいだけの話。その人とそういう関係になりたくないのであれば、二人で飲みに行かなければいい」と発言して、ネットで批判の声が広がった。

私はその言葉に「自衛できない女は被害に遭ってもしかたない」というニュアンスを感じて、被害者を貶める発言に怒りを覚えた。同時に「おじさん受けする言動が染みついてしまったのかな」と痛々しさも感じた。

また、女性の場合は「自分も被害に遭ったらどうしよう」という不安や恐怖があるんじゃないか。だから「被害者の行動に問題があったからだ、自分はそんな行動をしないから大丈夫」と安心したいんじゃないか。

不安や恐怖があったとしても、二次加害は許せない。なので、プーチン顔で次のように返したい。

「『なぜ合意をとらなかった』と加害者を責めるべきでは? なぜ被害者を責めるんですか?」

「男性が男友達の家に行って殴られても『家に行った方が悪い』と責めますか?」

「女性が『いいですね、飲みましょう』と家に行ったとしても、同意したのは『家で飲むこと』だけです。『家に行った=性的行為をする同意があった』という認識は間違いです」

このように、とっさに言葉が出ないこともあるだろう。私も「何言おうとしてたんやっけ?」が口癖のJJなので、カンペがないとしゃべれない。

それでも「公の場で性暴力の話するのやめませんか? 傷つく人もいると思います」の一言だけでも返したい。

「あなたも悪かったのでは?」「そんな言い方じゃ伝わらないよ」「なんでそんなに怒るの?」「怒っても解決しないよ」「そんな大げさに騒がなくても」「気にしすぎじゃない?」「そんなに責めたら相手が可哀想」「相手も事情があったんだよ」「相手も苦しんでると思うよ」……等など。

これらも被害者を追いつめる言葉であり、被害者の声を封じる言葉でもある。

二次加害を駆逐するためにできるのは、「#二次加害を見過ごさない」と皆が声を上げることだろう。

私も二次加害を見かけたら「アルスは激怒した」と怒りを表明したい。私自身も傷ついた時、一緒に怒ってくれる人たちの存在に救われたから。

だから毎日納豆を食べて血液をサラサラにして、血管が切れないように気をつけている。あとなるべく玉ねぎも食べて……と献立を工夫しているのに「なんでそんなに怒ってるの?」とか言われると、血管が切れそうになる。

「なんでそんなに怒ってるの?」と言う人には「なんで怒らないの? 現実に性暴力や性差別に苦しむ人がいるのになんで? 自分には関係ないと思ってるの??」とエジソン顔で返したい。

幼少期のエジソンは「なぜなぜ?」と質問ばかりしていたので「なぜなぜ坊や」と呼ばれていたそうだ。

足を踏まれている側が「足をどけてくれませんか?」と丁寧に言っても聞いてもらえなければ「痛いんだよ! 足をどけろよ!」と怒るだろう。
それに対して「なんでそんなに怒ってるの?」「そんな言い方じゃ聞いてもらえないよ」と言うのは、声を上げる人の口をふさぐ行為である。

この手の発言をする人は社会問題に関心がないか、自分さえよけりゃいいと思っているか、または「怒ることは悪いこと」と刷り込まれているんじゃないか。

ヘルジャパンでは、怒る女は特に嫌われる。「女は感情的」「ヒステリーババア」「更年期ww」とクソリプを投げてくる人々は、怒る女を見たくないのだろう。

かくいう私も若い頃は「女はいつも笑顔で愛想よく」「セクハラされても笑顔でかわせ」と洗脳されていた。
そうやって自分の怒りや痛みに蓋をしたまま、自尊心をどんどん削られていった。

私の場合は20代でフェミニズムに出会って「私、怒ってよかったんだ」と気づいた。抑えこんでいた怒りや痛みを解放して言葉にすることで、俄然生きやすくなった。

そんな拙者のコラムを読んだ方から「自分も怒っていいんだと気づいた」「セクハラやパワハラにNOと言えるようになった」と感想をもらうたびに、元気玉をチャージしている。

なので「なんでそんなに怒ってるの?」と聞かれたら「元気だから!!」と元気いっぱいに答えたい。

怒り続けるにはエネルギーがいる。「怒っても無駄」「どうせ変わらない」と諦めた方が楽だし、思考停止して現状維持を望む方が省エネだ。でもそういう人ばかりだと、世界は永遠に変わらない。

参政権を求めた女性たちも「イカれた女たち」と誹謗中傷されながら、必死で運動を続けた。「差別するな! 女にも人権をよこせ!」と怒ってくれた先輩たちのおかげで、今があるのだ。

2017年にアメリカから#MeTooが広がって、日本でも伊藤詩織さん、石川優実さん、フラワーデモ……と多くの女性が声を上げはじめた。そんな流れがあったから、今回マリエさんも告白を決意できたんじゃないか。

このバトンを次世代につないでいくために、私も怒り続ける。怒りたいけど怒る元気がない人のぶんも、私が怒る。
だから今日も納豆ごはんと玉ねぎの味噌汁を美味しくいただこうと思う。

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アルテイシアの59番目の結婚生活

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アルテイシア

神戸生まれ。現在の夫であるオタク格闘家との出会いから結婚までを綴った『59番目のプロポーズ』で作家デビュー。 同作は話題となり英国『TIME』など海外メディアでも特集され、TVドラマ化・漫画化もされた。 著書に『続59番目のプロポーズ』『恋愛格闘家』『もろだしガールズトーク』『草食系男子に恋すれば』『モタク』『オクテ男子のための恋愛ゼミナール』『オクテ男子愛され講座』『恋愛とセックスで幸せになる 官能女子養成講座』『オクテ女子のための恋愛基礎講座』『アルテイシアの夜の女子会』など。最新作は『40歳を過ぎたら生きるのがラクになった』がある。 ペンネームはガンダムの登場人物「セイラ・マス」の本名に由来。好きな言葉は「人としての仁義」。

Twitter: @artesia59

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