清水ミチコさんの「朝日新聞」連載エッセイ「まぁいいさ」(金曜日夕刊・月1回)をまとめた文庫本『時をかける情緒 まぁいいさ』が発売になりました。平成から令和へ、自由自在にかけめぐる清水さんの情緒の味わいを、少しだけお裾分けします。

カナダからの手紙
光浦靖子さんが住む、カナダで遊んできました。食べ物はおいしく、ビルの隣にはむき出しの自然公園など、住むのにも幸せそうでした。
国民性もおおらかなカナダ人ですが、犯罪にも若干おおらからしく、こちらに住む光浦さんの知り合いは、自宅の窓を割られ、泥棒に入られたそうでしたが、震える指で警察に電話しても、やってきたポリスたちは、「大変だったね! 気をつけなきゃ!」と、どこかライトでフレンドリー。
日本と違って特に緻密に犯人を調べる感じは薄そうで、「映画みたいに私たちが粉振って現場の指紋でも取ると思ってた?」と、笑ってお帰りになられたそうで、感謝を口にしながらも、(ここで暮らすには自衛が必要なのだ!)と深く悟ったと言います。自衛という当たり前を軽んじてる我々も、肝に銘じねばですな。
さて、そんな話の流れから、世界の国民性についての話題になり、こんなたとえ話を聞きました。有名だそうですが、初聞きの私にはとても新鮮でした。
「この船はすぐに沈没します。すぐ海に飛び込んでください!」という緊急事態に、どう説得するか。まずアメリカ人には「今飛び込んだらあなたはヒーローですよ!」と叫ぶと。
そしてイギリス人には「紳士はこういう時、海に飛び込むものです」とささやく。イタリア人には「海で美女が泳いでます」と言い、ドイツ人には「規則です」。
さらに日本人には、「みんな飛び込んでましたよ」とだけ言うのだそうでした。最後がやだわあ。笑いました。だいたいこういう冗談にはなるほどー! と思わせる説得力がありますが、人間性をざっくり表現することって、一種のモノマネのようなものなのか、なぜか笑ってしまうし短いほど面白いものですね。
帰国した今、船上にいるカナダ人にはどう言うかと思うと、「海で犬が溺れてる!」でしょうか。そのくらい動物愛護が最強。街にペットショップはついぞ見かけず、飼い犬は一日に2回は散歩させる規則とか。光浦さんと遊んだドッグビーチではたくさんの犬が飼い主を横目に、海で泳いだりはしゃいだりで、吠えあう声も笑ってるみたいで忘れられません。
時をかける情緒 まぁいいさ

カンジ悪さが褒められた「ドクターX」出演、黒柳徹子さんにおフルの洋服をプレゼント、詐欺かと疑った伊丹十三賞受賞の電話、武道館ライブで達成感が得られない謎、卒業証書チラ見せ伊藤市長からの学び、60代で初婚の親友の結婚式、人生の残り時間を計算して思うこと……。平成から令和へ、自由自在に軽やかにかけめぐる情緒の味わい。











