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勉強って何のため?

2021.05.02 更新 ツイート

だから古典はおもしろい(第2回)

イエス・キリストは、史上最強の説得者 野口悠紀雄

古典とは時代を超越した作品であり、決して古くなることがない――。無類の読書家として知られる経済学者の野口悠紀雄さんは、次々刊行される経営書やビジネス書を乱読するより「古典」を読もう、と言います。なぜなら古典には、仕事や人生の深い洞察が凝縮されているから。そしてそれが今も役に立つから。勉強は自分の血肉にしないともったいない!大反響の『だから古典はおもしろい』(幻冬舎新書)から試し読みをお届けします。

 

共産主義国家は70年だが、キリスト教は2000年

聖書を読んで得られるものは、文学作品や絵画の理解だけではありません。

説得術を学ぶことができます。

 
From Young People's Bible History - 1873(写真:iStock.com/Campwillowlake)

イエス・キリストは、人類史上で最強の説得者です。

これほど多くの人々を、しかもこれほどの長期間にわたって説得しえた人は、他にいません。

一人の考えが社会に大きな影響を与えた例として、カール・マルクスの共産主義があります。

しかし、共産主義国家ソビエト連邦は、結局のところ、70年しかもちませんでした。

中華人民共和国も、建国から70年しか経たっていません。そして、中国共産党は、「毛沢東思想」とは言っていますが、「マルクス・レーニン主義」とは言わなくなったようです。しかも、現代中国経済の実態は、毛沢東が実現しようとしたものとは正反対です。

それに比べてキリスト教は、2000年の歴史を持っています。そして、その力が衰えているようにも見えません。

 

信じられないほどの強い説得力

イエスの説教は、その影響が広範で、永続しただけではありません。信じられないほどの強さを発揮しました。

キリスト教布教の初期段階において、おびただしい数の殉教者が生まれました。

ネロ治世下のローマ帝国におけるキリスト教徒への迫害は、苛烈なものでした。しかし、キリスト教はそれによって弱まったのではなく、かえって強まりました。

そして、それから300余年後にはローマ帝国の国教となり、ついにはヨーロッパ全土を支配する宗教となったのです。

キリスト教の影響力が頂点に達したのが、十字軍です。

Saint Bernard blesses Crusaders in Vezelay before the Second Crusade in 1145. Illustration published in Cent Recits: D’Histoire De France by Gustave DuCourdray (Librairie Hachette, Paris) in 1887(写真:iStock.com/Chrietine_Kohler)

十字軍は、宗教的義務感だけによって結成された軍隊であり、そのリーダーとなった王や諸侯に、領土獲得などの現世的目的はありませんでした(結果的には、パレスチナに十字軍国家を建設することになったのですが)。

数次にわたる十字軍遠征が終わったあとも、キリスト教の宣教活動は続きました。

ポルトガルが大航海に乗り出した一つの理由は、キリスト教の宣教です。「遠い異国にプレスター・ジョンという王が治めるキリスト教国が存在する」という伝説が、航海王子と言われたエンリケ(1394~1460年)を支えたのです。

ジェズイット教会は、宣教者を遠く日本にまで派遣しました。しかも、遠藤周作の『沈黙』に描かれたような殉教となることが、あらかじめ予測できたにもかかわらず。

 

(第3回へ続く)

関連書籍

野口悠紀雄『だから古典は面白い』

「最近、本の質が落ちた」と感じる人が多いと聞く。無類の読書家であり経済学者の著者は、そんな人にこそ「古典を強くすすめる」という。「古典に新しい情報はない」と思うのは早計だ。組織のメカニズムを知りたければトルストイの『戦争と平和』、人を説得する術を知りたければシェイクスピアの『マクベス』。人が作った組織や人間の心理は昔から基本的に変わっておらず、トルストイやシェイクスピアといった洞察力を持った作家が書いたものは、現代人に多くのことを示唆するのだ。著者が推薦する本を読めば、そのめくるめく世界観に心浮き立つだけでなく、仕事で役立つ知識も身につくこと、請け合い!

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勉強って何のため?

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野口悠紀雄

一九四〇年東京生まれ。六三年東京大学工学部卒業、六四年大蔵省入省。七二年エール大学でPh.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、二〇一七年九月より早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問。一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。著書に『情報の経済理論』(東洋経済新報社、日経・経済図書文化賞)、『財政危機の構造』(東洋経済新報社、サントリー学芸賞)、『バブルの経済学』(日本経済新聞社、吉野作造賞)などがある。

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