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勉強って何のため?

2021.05.08 公開 ポスト

勉強の価値(最終回)

何ができるだろう?から考える愉しみ森博嗣

子供の頃は勉強嫌い、二十一歳の時に「勉強の価値」なるものを見つけたという人気作家の森博嗣さん。「勉強は楽しくないのは事実」、勉強は「人に勝つためでも、社会的な成功者になるためにするのでもない」。“では何のため?”と社会で聞かれることが多いのは、「勉強という行為の“抽象性”が理解されていないから」。自身の体験と勉強の根本を深く幅広く探究し話題の『勉強の価値』(幻冬舎新書)から、人生後半期のリアルな勉強との向き合い方をピックアップしてお届けします。

 

未来への予感

(写真:iStock.com/Miljan Živković)

人が勉強する時間は、その人にとって何の役に立つのか、またその効果はどれほどだろうか?

子供の頃の勉強は、成績に直結し、進路を決める要因となった。しかし、大人になり、仕事もリタイヤして老人になったとき、勉強はどんな役に立つだろうか?

その疑問に対する答は簡単だ。楽しいから勉強をするのである。

 

勉強するために時間も、また資金も消費する。これは「無駄遣い」だろうか?

大学や研究機関の活動を「税金の無駄遣いだ」と非難する社会は、未熟な社会だといえる。未熟な社会では、もっと切実な問題を解決することに税金を使った方が良いかもしれない。だが、成熟した社会であれば、どうだろうか?

人間は死んでしまえば、それで「リセット」である。けれど、社会は人間が入れ替わり、存続するものだ。平和が維持できれば、社会はいずれ成熟する。それは見方によっては、老いた社会といえるかもしれない。しかし、そんなときでも、大学や研究所に税金を使うことは、社会の豊かさの表れであり、人々の「未来の楽しみ」を垣間見せてくれるものになるだろう。それは、ただの夢かもしれないが、人間には夢が必要だ。

子供にも夢が必要なように、老人にも夢が必要である。いつかは死ぬことでは、子供も老人も同じ。ただ、時間が平均的に長いか短いかの違いでしかない。

「何をしようか」と選択するのも楽しいが、もっと楽しいのは「何ができるだろう?」という可能性をゼロから考えることである。今はできなくても、少し工夫をすればできそうな気がする。

そういった「予感」が、すべての「勉強」のモチベーションとなるのではないか。

あんなに勉強が嫌いだったのに、ふと、なんでも良いから、ちょっと勉強したいな、という気分になるときがあるはずだ。

勉強というのは、それほど悪いものでもない。

関連書籍

森博嗣『勉強の価値』

勉強が楽しいはずない。特に子供が勉強しないのは「勉強は楽しい」という大人の偽善を見透かしているからである。まず教育者は誤魔化さずこれを認識すべきだ。でなければ子供が教師の演技を馬鹿馬鹿しく思い両者の信頼関係が損なわれる。僕は子供の頃あまりに美化された「勉強」に人生の大事な時間を捧げる必要があるか疑った。が、現在(正確には21歳から)は人は基本的に勉強すべきだと考える。そう至ったのは何故か? 人に勝つため、社会的な成功者になるためではない。ただ一点「個人的な願望」からそう考える理由を、本書で開陳する。

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勉強って何のため?

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森博嗣

一九五七年、愛知県生まれ。作家、工学博士。国立N大学工学部建築学科で研究する傍ら九六年に『すべてがFになる』で第一回メフィスト賞を受賞し、作家デビュー。以後、次々と作品を発表、人気作家として不動の地位を築く。おもな新書判エッセィに『自由をつくる 自在に生きる』『創るセンス 工作の思考』『小説家という職業』『自分探しと楽しさについて』(すべて集英社新書)、『大学の話をしましょうか』『ミニチュア庭園鉄道』(ともに中公新書ラクレ)、『科学的とはどういう意味か』『孤独の価値』『作家の収支』『ジャイロモノレール』『悲観する力』(すべて幻冬舎新書)などがある。

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