
メシテロなコミックエッセイ、台湾発『台湾ごはん何食べる? 台湾人・阿米と日本人・美菜の食楽記』(AKRU著)、日本発『農家メシ!』(パウロタスク著)。台湾と岩手県と、遠く離れた場所に住む作者のおふたりがお互いの作品を読んでみたら、興味深い食文化の発見もあったようで!? そんなAKRU(アクル)さんとパウロタスクさんの質問交換によるインタビューをお届けします。
今回はAKRUさんの『台湾ごはん何食べる?』編。台湾人の阿米と日本人の美菜が台湾ごはんを巡っていく――そんな美食旅を、台北育ちの台湾人漫画家・AKRUさんが描きます。登場する料理やお店は、800名の台湾の方々へのアンケートで挙がったものばかり。台湾の生活に根づいたリアルな台湾ごはんの数々を見ているだけで、おうちで台湾旅行気分が味わえます。
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濃い味が恋しくなったら、大腸麵線、麻
パウロタスク(以下、パウロ) 僕はまだ台湾へ行ったことがないのですが、台湾旅行経験のある妻の話から、台湾ごはんって、屋台がたくさんあって雑多ななかで食べるジャンクなイメージがあったんです。でも『台湾ごはん何食べる?』を読んで、ジャンクということではなく、台湾全体が食への関心が高く、楽しみ方の多様性に富んでいるのだと感じました。
AKRU 本を読んだ台湾の友人たちは、台湾と日本の食文化の違いに興味を持っていました。私も取材を通して、食文化の違いを知りながら、今まであたり前だった台湾ごはんの奥深さを実感できたのは収穫でした。
パウロ『台湾ごはん何食べる?』では、小吃(手軽な料理)、レストラン、夜市、朝ごはんなどにわけて、各ジャンルでの代表的な料理がたくさん紹介されていますね。「水餃子」は酢醤油をつけなくても食べられる、というのにすごくそそられました。醤油ベースの味がついている餡なら、最後までタレなしで食べられそう!
AKRU お店の水餃子はしっかり味が多いですね。スーパーで売っている水餃子の餡も、味の濃さはそれぞれですが、たいてい醬油や塩が入っています。でも家でつくる場合には、特別な味つけをしないこともあります。
パウロ それから僕はごはんにおかずを乗っけて食べるのが好きなんで、甘じょっぱい豚そぼろをごはんにぶっかける「魯肉飯(ルーローファン)」はぜひ食べてみたいです! 台湾のおふくろの味なんですよね? ほかにはどんな家庭料理があるんですか?
AKRU 魯肉飯は庶民料理ですが、実は家庭料理とも言い切れないというか……。私の家ではつくらず、外で食べるものです。食卓の定番といえば「炒青菜(チャオチンツァイ)」。季節の野菜をニンニクやショウガで炒めます。台湾人は火を通した野菜が好きなんです。炒める以外には、茹でた「燙青菜(タンチンツァイ)」もあります。
パウロ 僕は農家生活を始めてから外食をしなくなって、以前は好きだったラーメンを食べる機会がほとんどなくなりました。こってり系ばかり食べてたんですけど。だから逆にあっさり系の「牛肉麵(ニョウロウミェン)」は気になります。
AKRU 店によってはしょっぱい場合もありますが、基本的にはラーメンのような濃厚感は牛肉麵にはないですね。スープはすっきりとしていて、薬膳の味わいが染みて滋味深いですよ。濃い味もお好きなパウロさんには、カツオ出汁が濃厚なモツ入りにゅうめんの「大腸麵線(ダーチャンミェンシェン)」や、辛いスープで野菜や肉を煮込んだ「麻辣燙(マーラータン)」もおススメです。魯肉飯の味を気に入られたら、「刈包(クァバオ)」もぜひ。甘じょっぱく煮込まれた豚バラをふかふかの饅頭で挟んで一緒に召しあがれ~。
外食が楽しすぎる台湾の、おうちごはん事情は?
パウロ AKRUさんは、取材で出合った美味しいものをおうちでつくってみたりしたそうですね。
AKRU 後記にも書いたのですが、私は実は外食よりも自炊派で。ふだんつくるのは簡単な物ばかりなんですが。でもこの本の執筆のために食べたことのなかった料理や、気にも留めていなかった料理に触れて、食材や味つけを意識するようになりました。自分の料理にも活かしたいなと思ったり。スーパーをぶらぶらしているときも、栄養とか成分に目が向くようになって、食材の見方も変わりましたね。
パウロ 食材はスーパーで売ってるんですか? 台湾には自宅にキッチンがないと聞いたことがあるんですが。
AKRU スーパーや伝統的な朝市で、生鮮食品はひととおり手に入ります。キッチンは、ひとり暮らし用の家賃の安い部屋だとなかったりしますけど、一般的な家庭ならありますよ。とはいえ、外食やテイクアウトのほうが手軽なので、キッチンがあっても簡単な煮炊きくらいか、なんなら料理をしない家庭も少なくないです。
パウロ 台湾の多くの方は外食&テイクアウト派なんですね。1カ月の食費はどれくらいになるのでしょうか? 個人差はあると思いますが……。屋台のほうがレストランより安いイメージがあります。
AKRU 外食費は住んでる場所によります。お惣菜を自由に選んで詰めていくブッフェスタイルの自助餐(ズジューツァン)やお弁当だと、台北では1食約70~100元(260~370円)。節約生活をするなら1日200元(740円)前後で抑えられるので、毎日外食して1カ月6000元(2万2200円)くらいでしょうか。贅沢するなら……上限はありません(笑)。屋台のほうがレストランより安いというのは、おっしゃるとおりです。屋台も自助餐と同じくらいの価格ですね。
パウロ 台風で外に出られないときはどうしてるんですか?
AKRU 日持ちのする食材や、インスタントラーメンを買って準備しておきます。台湾には台風休みがあるんですけど、そんな日は家にこもってふだん食べない備蓄食材を口にするので、特別なお祭り気分になります(笑)。
食いしん坊だらけの台湾に、ワクワクが止まらない!!
パウロ「台湾おかし図鑑」コーナーでスナック菓子も紹介されてましたが、AKRUさんもよく口にしますか? 僕は執筆の合間に、夜食としてスナック菓子を食べることはよくあります。ただ、道具などが汚れるのが嫌なので、食べるときは割り切って完全に執筆作業を止めます。
AKRU おせんべいは時々食べますね。軽い味のものが好きです。同じく汚れるのが嫌なので、私はお箸で食べてます。「鱈魚香絲(シュエユーシャンスー。チータラのチーズ抜き)」も噛み応えがあるうえに手も汚れないので、優秀なスナック菓子です(笑)。
パウロ 台湾ならではの執筆スタイルはあるんでしょうか?
AKRU たぶん日本の作家さんとそれほど違いはないと思います。私の場合は、ネーム(※)は必ず紙に描いています。原稿はCGですし、ネームも修正するときはPCを使ってるんですけど。ゼロからネタを考えはじめるときは、紙に向かったほうがアイデアがわいてきますし集中できます。
※下絵を描く前、簡単な絵でコマ割りを決める構成図
パウロ 80軒近くお店を取材されたそうですが、印象的なことはありましたか?
AKRU おまけ漫画でも描いたのですが、レストランでお隣の席の方に鶏と蛤のスープをおすそわけしていただいたことです。優しさに心温まったと同時に、お隣の料理をじろじろ見てはしたかなかったなと反省しました(笑)。
パウロ 僕は『台湾ごはん何食べる?』を読んで、台湾は老若男女問わず、食への関心の高さに驚きました。火鍋のつけダレの材料がたくさんあって各々で好みに合わせて配合したり、豆乳は世代によっておぼろ豆腐だったり甘いドリンクだったり捉え方が違うなど、「そうなんだ!」と思うことがたくさん。これからも台湾独自の食文化はさらに多様化し、発展していくんだろうなと感じ、すごくワクワクしています。
AKRU 旅行ができる日が戻ったら、パウロさんもぜひ多様性のある台湾ごはんを食べに、台湾へ遊びに来てくださいね。
台湾ごはん、何食べる?旅ができる、その日のために

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