ラッパー・GASHIMAさんによる人気連載『先生、俺またバグってます。』。
今回は「才能と心の病」のお話。
時にアーティストは「病」から人の心を打つ傑作を生みだすことがあります。
GASHIMAさんも、良い曲は躁状態の時に生まれたことが多いと言います。
しかし、はたしてそれはなぜなのでしょうか?
* * *
画家のゴッホは双極性障害だった
可能性が高いと言われているし、
グランジ・ロックのカリスマ、
カート・コバーンも同じ病を
抱えていたと言われている。
ゴッホは自分の耳を切り落としたし、
カート・コバーンは自分の頭を撃ち抜いた。
双極性障害じゃなかったにしても、
何かしらの病を抱えていたことは
間違いないだろう。
存命のアーティストだと
ラッパーのカニエ・ウェストも双極性障害だ。
カニエは数々の問題発言もさることながら
突然、自分の名前を「イェ」に改名し、
世間を混乱させるような破天荒な男だ。
双極は天才ゆえの病だと言えば
ちょっとロマンがある気がするし、
イェにいたっては
「双極性障害は俺の超能力だ!!!」
なんて開き直っている。
俺自身、こんな面倒な病を患ってるんだから
「天才ゆえの病」だと思いたいところ。
でも、本当にそうなんだろうか?
たしかに躁状態に突っ込んだ時の俺はヤバい。
日が昇る前から目が覚めて、
曲を作りたいという衝動に突き動かされる。
音楽、映画、アート、会話、
あらゆるものにインスピレーションを受けて
「これは曲にするしかない!!!!!!!」
と何時間もぶっ続けで曲を作ったりする。
実際、自分の作品でも
力作だと呼べる楽曲は
躁状態で作ったモノが多い。
でも、躁状態の俺は天才なのかと
言われると、ちょっと疑わしい。
たしかに躁状態の時に書いた曲を
あとから振り返ってみると
「どうやって、こんなの思いついたんだ!」
と思うような曲もある一方で
「え……何、この落書き……?」
と思うような駄作も沢山ある。
作っている時には最高の名曲だと
思っていたにも関わらずだ。
じゃあ、躁状態の時に良い曲が
書ける気がするのは何故か?
それはシンプルに数を
打っているからだと思う。
我ながらガッカリする結論だけど、
多分、これが真実なんだろう。
躁状態でも、安定期でも
打率は特に変わらない。
ただ、普通の状態では100打席しか
立たないところを
躁状態では1,000打席立つ。
だから、確率論的にホームランの数が
増えるだけなんだろう。
その1,000打席立ててしまう力を
イェは超能力と
呼んでいるのかも知れないし、
人によっては天才的だと
言うのかも知れない。
ただ、躁状態に寝る間を惜しんで
創作に没頭すると、
そのしっぺ返しは
「鬱状態」として必ずやってくる。
そして、鬱状態は多くの場合、
躁状態よりもずっと長い。
0打席、0ヒット。
空振りさえできない日々が
延々と続くことになる。
だから、俺はこの病気を
天才の病だと思うことは辞めにした。
躁状態に突っ込んでもなるべく
オーバーヒートしないように努める。
そのつもりでも去年は攻めすぎた。
そして、その代償としてしっかり鬱になった。
半年間の鬱の末に今はやっと
安定期と呼べる「普通の時期」が
やってきている。
破滅的な芸術家は人の心を打つ。
でも、俺は自ら耳を
切り落とす天才画家にも
頭を撃ち抜く
ロックスターにもなれない。
GASHIMAから、いきなり名前を
「ガァ」に改名するぐらいなら
俺にもできるかも知れない。
だけど、俺は俺らしく。
少しでも、この平穏な日々が続くよう
時に空振り、時にヒット、
稀にホームランを打ちながら
1打席、1打席を大切に
日々を過ごしていきたい。
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先生、俺またバグってます。

3人組シンガーソングライター・グループ WHITE JAMのラッパーとして活躍するGASHIMA。
そんな彼はある日、「双極性障害」であると診断される。
思い返してみれば、昔から自分はちょっとバグってた。
日本とアメリカで経験した過去、生い立ちと音楽、メンタルヘルスの狭間で感じた「生きづらさ」をパーソナルかつリアルに綴るセルフドキュメンタリー連載。
目まぐるしく変わる環境に対するやり場のない怒り。
振り返ってみれば「若気の至り」だと思っていた破壊的衝動。
あれも、これも、もしかしたら躁状態だったのかも?
“ただの勢い”の裏にはちゃんと病理があった。
そう思えると、あの時の俺も少しだけ愛せるようになった。










